モバイルブロードバンドの本命はLTE――Ericssonのノードマーク氏
LTEは、ドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルに続いて、KDDIも採用を表明した3.9Gの高速通信規格。LTEソリューションを手がけるEricssonのノードマーク氏に世界市場の動向と標準化のロードマップを聞いた。
HSDPAが普及に向かう中、通信業界ではすでに3.9GのLTE(Long Term Evolution)や4Gをにらんだ開発競争が始まっている。
日本では、NTTドコモが2010年にもスーパー3Gという名称でLTEサービスを開始する予定で、ソフトバンクモバイルやイー・モバイルもLTEの実証実験を開始している。11月7日には、KDDIで副社長を務める伊藤泰彦氏がLTEの採用を明言するなど、日本の3.9Gは“LTEで足並みがそろった”格好だ。
モバイル向けの大手通信機器ベンダーとして知られ、標準化でも大きな役割を果たしているEricssonは、次世代のモバイルブロードバンド市場をどのようにとらえ、どんな戦略でシェア拡大を目指そうとしているのか。3.9Gの市場動向と戦略について、LTE RAN製品設計部門担当副社長のイングリッド・ノードマーク氏に聞いた。
LTEが“世界統一標準”の夢を現実に
LTEは下り最大100Mbps以上の通信速度を実現する無線通信技術。現在、W-CDMA(3G)やHSPA(3.5G)の進化系として、標準化団体の3GPPが仕様の策定を進めている。
LTEが大きな注目を集めているのは、HSPAの次の規格という理由からだけではなく、グローバルに統一された標準になる可能性があるからだ。
Ericssonは2007年1月にLTEの製品設計部門を設立。600人の部隊を統括し、組織の設立と製品ラインの立ち上げを指揮してきたノードマーク氏は、3.9Gの市場動向について「LTEがメインの標準になるという強いメッセージを感じる」と話す。それは、これまでCDMAやTD-SCDMAなどの異なる技術を採用していた通信キャリアが、相次いで次の技術としてLTEを採用すると発表していることからもうかがえる。
その一例が、2007年末にLTEネットワークの構築を発表し、CDMA2000からの転向を決めた米Verizon Wirelessだ。TD-SCDMAを採用するChina Mobileも、この2月にVerizonのLTE試験運用への参加を表明し、11月7日にはKDDIがLTEの採用を正式に発表している。
これまで覇権争いを続けてきたCDMA陣営について、エクウッデン氏は「CDMA2000は、世界シェア30%をピークに減少している。GSM、W-CDMAが優勢なのは明らか」という見方を示す。「現在、CDMA2000を採用するオペレーターは、次のステップの選択を迫られている。CDMAオペレーター各社はEV-DOで高速データ通信サービスを提供しているが、次の技術がない。3GPP2がEV-DOの次とするUMBの仕様を固めるのを待つか、LTEを使うかしかない」(エクウッデン氏)。そして、「UMBの採用を発表したオペレーターは、これまでのところない」とも付け加えた。
こうした市場のトレンドは、GSMからW-CDMA、HSPA、LTEという一貫した流れで製品を投入したきたEricssonにとって、新規顧客獲得の大きなチャンスといえる。「CDMAオペレーターを理解しようと取り組んでいる。何が強みで、コアなのか、何を必要としているのかを理解し、提案していく」(ノードマーク氏)
ノードマーク氏は、LTEのすべての仕様が固まる時期を2009年3月ごろと見ており、仕様に大きな変更が加わった場合に備え、ターミナルベンダー数社とスムーズに検証を進められる環境作りについて検討を進めているとした。
LTEの商用サービス開始時期については2009年後半と予測。W-CDMA、HSDPAなど、常に世界で最初のサービスインを目指してきたNTTドコモはもちろん、CDMA陣営からの転向組となるVerizon、スウェーデンのTeliaSonera、米AT&Tらが、最初のLTEサービス事業者の座を狙って競い合っているという。
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