「Xperia Z1はOne Sonyの成果。これは第一章に過ぎない」――ソニーモバイル・鈴木国正CEOの囲みにツッコミ:石川温のスマホ業界新聞
ソニーモバイルが9月13日、新型スマートフォン「Xperia Z1」の発表会イベントを開催。同イベントに登壇したCEOの鈴木国正氏に囲み取材を行った。
9月13日、ソニーモバイルはIFA2013で発表した「Xperia Z1」の日本初披露イベントを14時から開催した。13日は各キャリアがiPhone関連の記者会見を行うと予想されたため、ソニー関係者は冷や冷やものだった。結局はKDDIが12時半から開催。他社は記者会見を行わず、リリースのみの発表だったため、ソニーの会見にも多くのメディア関係者が参加することができた。
イベント終了後に、鈴木国正社長兼CEOの囲みが行われた。
―― Xperia Z1の手応え、意気込みを聞かせて欲しい。
鈴木氏 「商品そのものは私自身、相当自信を持っている。マーケティング、コミュニケーションをどうしていくか、通信事業者さんとのやりとりをふくめてしっかりとやっていきたい。とにかく、商品は負けていない。サービスと商品が負けていないことがコアなので、ここだけはやりきっていく」
(★ ホント、触ってみると、Xperia Zに比べても質感が上がっている。自信があるというのもうなずける)
―― 夏商戦だとXpeira Aがドコモの後押しを受けて好調だったが、年末商戦はiPhoneを取り扱うドコモから『倍返し』を食らってしまうのではないか。
鈴木氏 「倍返し? 倍売ってくれますかね」
―― いやいや。iPhoneを扱い始めるドコモが、ちゃんと扱ってくれるのか不安もあると思うが。
鈴木氏 「Xperia Aというのはドコモさんの戦略によるわれわれの商品であって、それはそれ。我々は純粋にいい商品を売っていく中で、議論はしっかりと進んでいる。特にマーケティング、顧客目線が大切。いずれにせよ、何があっても、そういう意味ではその軸足をずらさなければいい」
(★ これ自分の質問。ドコモからの倍返しは相当堪えそう。Xpeira Aがバカ売れしただけに反動は多いだろう)
―― Xperia Zに比べて反応はどうか。
鈴木氏 「IFAのあと、ティーザーもあったが、非常にいいですね。パーセンテージでも一番反応の良さ、ネガティブなものが限りなくゼロに近い。内部的には意気込みが増しているところ」
―― 台数も増しそうですか。
鈴木氏 「台数は常に増したいですね。いくら売ってもいい」
―― Xperia Z以降、グローバル市場での変化はあったか。
鈴木氏 「ありましたよ。まず、感覚的に、我々がキープレイヤーとして、ほとんどの国で上位にきている。通信事業者、大手のところはほとんど付き合いがあるし、やっていなくても議論はしている。みなさんが我々をひとつのキープレイヤーとして扱ってくれている。こちらからの一方的なアプローチではなくて、議論がなりたつ。Xperia Zの前後で全然変わった」
(★ グローバルの反応だけでなく、ソニー社内でもXperia Zが売れたことで、モバイル部門の評価が上がったそうな)
―― アップルが国内3キャリア展開しているが、ソニーはどうか。
鈴木氏 「そのあたりは全く未定で、しっかりと最終的に、顧客につながれば良い。事業者とは継続的に話をしていきたい」
(★ ソニーはソフトバンク向けには興味を持っていないという話を聞きますが)
―― アメリカではXperiaブランドが弱いように思えるが。
鈴木氏 「アメリカと中国、両方弱いです。この二つが一番と二番の市場であるため、グローバルの平均を取ると小さくなってしまう。そこを除くとしっかりと落とし込めている。その2つに関しては、これから。皆さんに見えてくるのはこれから。我々のなかではいろいろと議論を進めている。簡単なマーケットではない。じっくりと成功する国をつくって、アメリカ、中国を攻めていきたい」
(★ プレミアムブランドとしてプレゼンスを上げるにはやっぱりアメリカは抑えておきたいところ)
―― iPhoneでも5cみたいな動きがあるが、北米や中国向けモデルのようなものがあり得るのか。
鈴木氏 「フラグシップ商品をしっかりと作り込む。このステップはみなさん、感じていただけたと思う。Xperia Z、Xperia Z1。他社と比較しても作り込みの良さは実感できる。まず、これをやる。それは中国、アメリカを含めて、ブランドを作ることだと思う。
一方で、時々、日本のかたにちゃんと説明しないと理解してもらえないのは、日本以外のマーケットは中級以下のマーケットを持っているということ。これを強化するのをやらないといけない。これから改めて中級、マスのところをつくるのではなくて、すでにあるものをもっとブラッシュアップして、フラッグシップを立たせたうえで戦っていく。グローバル全般でそう。中国、USもその考えのなかにある」
―― ちょっと落としたバージョンを欲しいと言う日本のユーザーもいる。5インチ以外の展開もあるのか。
鈴木氏 「そうですね。Xperia Aなんてのは5インチではない。幅広く、商品としては持っているので、その国に適した商品をどう入れていくのか。極めてユーザー目線で決めていきたい」
(★ ちっちゃいXperiaがあるなんて噂もありますが、どうなんでしょう)
―― ソニーの現場の人に話を聞くと、昔に比べてモバイル部隊はソニーグループの中でも中心で活躍できるようになってきたようだ。この先、まだまだモバイル中心でいけるのか。
鈴木氏 「今回、体制の話はあえてしなかったが、One Sonyがなぜできるかというと、別に瞬間的にXperia ZとXperia Z1のためにやったのではなくて、体制的にそうしている。
いくつかの例があります。例えば、平井(CEO)を含めたトップの少人数による会合を毎週やっている。それが商品に至るところまでの話をする。
もうひとつは、各事業ユニットのヘッド、私もモバイルのヘッドですけど、それぞれのヘッドが集まって、ソニー全体で何をやっていくかの会議も毎週やっている。それに加えて、現場のなかで、もともと一緒にやりたかった(という雰囲気がある)。
私個人でいえば、モバイルのヘッドのみならず、横串の商品開発としてUXも見ている。それが象徴的。組織化もされているし、文化も構築されてきた。
ここは最も伝えたいところでもある。これはまず第一章に過ぎない」
(★ これ自分の質問。ホント、いまのソニーには一体感があって頼もしい。残念ながら、ほかの日本メーカーにはそういった雰囲気が全くないんだよね)
―― VAIOもXperiaっぽくなってきたようだが、ソニー商品はあんな感じになっていくのか。
鈴木氏 「なるべく、ソニーといったら何だというランゲージ作りはしていきたい。前からそういう気持ちはあったのだが、ずれることが多かった。それを意識している。ネットワークサービス、アプリケーション、あそこには極めて同じトーン&マナーのクリエイティブなデザインランゲージを通している。PSNでさえ、コアゲーマーでユーザー層は違うが、ソニーエンターテイメントネットワークサービスもアプリケーションも全部、同じデザインにして、ようやく初めてこの世代で統一された。相当、統一されている」
―― Xperia Z Ultraの反響、日本での展開はどうか。
鈴木氏 「反応はいい。(ここでライターKさんがXperia Z Ultraを使っているのをみて、鈴木社長がサムアップ)。私も個人的にはこれ1台でいいかなと思っている。そういう顧客層は多い。このインチサイズで済ませる。1台目として使う。特にアジアに多いし、ヨーロッパでも。この商品は説明しているときには(反応は)そうでもない。実際にいくつかのキャリアが扱ってくれているが、扱いはじめると反応がいい。難しいインチサイズじゃないですか。出してみたら思った以上にいい。この分野はいろんところでそういうことが多い。勇気を持っていろんな提案をするというのがいまのソニーモバイル。この商品は象徴的だと思う。
(さらにライターKさんが持つレンズ型デジカメ DSC-QX10を見て)
これもそういうことだと思う。最初はなに?と思うが、使ってみるといろんな使い方が考えられる。そういうものだと思う。これから出てくるウェアラブル、スマートウォッチなんかも、使ってもらって、なるほどと。なるほどの次は何なんだというところから、次の広がりがある商品作り、サービス作りができる。
いま、そういう考えを組織全体が持ち始めているのではないかと思う」
―― イメージング部門から人材がモバイルに入っているというが、オーディオ分野からもモバイルに人材が来ているのか。
鈴木氏 「これまではカメラの作り込みが多かったので、デジタルイメージングから来ているが、エンジニアが何人いるかはしっかりとした数字は言っていない。
ディスプレイも同じように動いている。オーディオも、ハイレゾはこれからといっているが、実際には(事業部間で)コミュニケーションはしている。One Sonyとしての組織はできているし、商品戦略のそれぞれのレポートがこっち(現場)を向いている。こっち側にレポートしているので、いつから何をやるのか、UX商品戦略本部で議論されて、それぞれの事業本部のヘッドが理解している。こと音に対しても、いつも議論している。あとはタイミング次第」
―― Xperia Z Ultraは国内未定のままなのか。
鈴木氏 「(広報に向かって)未定だよね。言っていいことといけないことを確認しないと。出すものは使ってもらいたいので、努力はしていきたい」
(★ 国内投入されるとしても、しばらく先になりそうな雰囲気)
取材を終えて
鈴木CEOも言っていたが、開発者たちに話を聞くと、とにかく事業部間の壁がなくなり、人材交流によって、お互いのいいものが持ち寄られているという。これまでも「Cyber-Shotの技術が詰め込まれた」というXperiaはあったが、その比ではないほど、デジカメの技術が投入されているのだという。鈴木CEOによれば、まだ第一章に過ぎないようなので、これからが楽しみと言えるだろう。
ちなみに、平井ソニーCEOといい鈴木ソニーモバイルCEOといい、ソニーの幹部はみんな格好いい。社員としてもモチベーションがあがるだろうな。
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