学校のICT活用のハードルを下げる、ロイロノート・スクール(2):小寺信良「ケータイの力学」
簡単にインタラクティブな授業を展開できる「ロイロノート・スクール」。Windows 8タブレットとiPadを使って、授業を想定した使い方を試してみた。
前回に続いて、今回はロイロノート・スクールがどういう仕組みなのかを、実機で動かしながら見ていこう。
ロイロノート・スクールは、アプリ自体は無料で、現在はiOS版とWindows 8版が提供されている。先生バージョンと生徒バージョンに違いはなく、クラウドに対してどのアカウントでログインしたかによって、先生用と生徒用に機能が自動的に切り替わる。
つまり前回で見たような生徒と先生間のロイロノート連携は、ロイロが提供するクラウドサービスが実現しているわけだ。プランとしては、1ユーザーが保存できる容量で月額料金が決まり、あとは人数分のかけ算となる。ただ、利用料はかなり安い。1人2Gバイトのスタータープランでは1人月額100円(税別)なので、年間1人あたり1200円となる。これぐらいなら、教材費として保護者負担でも納得できる範囲である。
プラン | 月額利用料(税別)/ユーザー | 保存できる容量/ユーザー |
---|---|---|
共用タブレット向け | 40円 | 800Mバイト |
スターター | 100円 | 2Gバイト |
シルバー | 200円 | 4Gバイト |
ゴールド | 500円 | 15Gバイト |
プラチナ | 800円 | 30Gバイト |
容量は、1人に対して2Gバイトの壁があるわけではなく、かける人数分の容量を全員で分け合うというイメージだ。全生徒が大量に動画を撮影しなければ、1人2Gバイトでもどうにか足りるだろう。あとは生徒の習熟次第、あるいは授業への活用度次第で、上のプランに移行すればいい。
もちろん、タブレット本体をどう手配するかという問題はあるが、ロイロノート・スクールはアカウント情報をクラウド側で持っているので、少ないタブレットを生徒間で共有することもできる。タブレットはとりあえず1クラス分で、という運用も可能だ。ただし、アカウントだけは人数分必要である。またクラウド型であれば、どこからアクセスしてもいいので、生徒がタブレットを家に持って帰って、宿題を提出するといったこともできる。
一方クラウドを利用せず、学校内でサーバを用意して、そこにサーバーソフトをインストールするという運用もできる。ただ、メンテナンスやサーバ代金、外部のサービス利用などを考えると、学校内で閉じるよりクラウド版を利用したほうが、コスト的には押さえられるだろう。
簡単にインタラクティブな授業を展開できる
今回はクラウドサービスを利用しているという前提で、先生用はWindows 8タブレット、生徒用にiPadを1台用意した。先生はまず、何組でどの教科の授業をやるかを選択する。教科によって機能が変わるわけではないが、資料やノートがごっちゃにならないようにフォルダ分けするという意味合いである。
先生用アカウントでは、授業に必要な資料を保管できる「資料箱」や、教材を生徒全員に配るか、個人に配るかのリンクが表示される。また生徒間通信のロックや、生徒のタブレットのロック、参加者の確認といった機能が表示される。
また先生のPCからクラウドにログインすれば、資料箱への教材の流し込みや提出物の取り出しなども、ブラウザでスピーディに行なえる。
生徒側も最初に教科を選ぶ必要があるが、授業のスタート時にそんなところでグズグズしたくない。これは先生のアカウントに紐付けて、自動で授業が選ばれるようになっていたほうがいいだろう。生徒が別の授業を選んでしまった場合は、参加者一覧画面で先生側に通知される。
授業としては、先生が板書代わりにこれを使う方法もあるが、先生が質問を投げて生徒に回答を求める、生徒参加型のスタイルが効果的だろう。先生が質問を投げると生徒側のノートに表題として表示される。生徒はそれに回答して「先生」のところへドラッグ&ドロップすると、先生側へ送信される。複数の回答を選んで比較することも、質問から回答収集まで1つのユーザーインタフェース内でできるので、簡単だ。
Webへのアクセス機能は、デフォルトでは教科書会社やNHKなど、教材を提供しているサイトが表示される。検索にはGoogleセーフサーチがオンになっているので、原則的には怪しいサイトへは行けないが、学年ごとに細かくフィルタリングレベルを分けたいといった場合は、どこかのステップに専用のフィルタリングを導入する必要があるだろう。
実際の現場では先生からいろんな要望も出てくるだろうが、現時点では一番学校側に負担をかけず、手軽に導入できるインタラクティブシステムである事には違いない。あとはこのアプリをどう使って授業を展開していくのか、先生の腕次第ということになるだろう。
小寺信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。
関連記事
- 小寺信良「ケータイの力学」バックナンバー
- 学校のICT活用のハードルを下げる、ロイロノート・スクール(1)
教育現場で活用されるタブレット。ネットへ接続して資料を調べるだけでなく、電子黒板と連携した教室内の情報共有機能も求められる。それを簡単に実現できるのが、「ロイロノート・スクール」というアプリだ。 - 内閣府調査に見る青少年のスマートフォン利用(2)
青少年のスマホ利用で目立つのが「LINE」や「Twitter」に代表されるチャットやSNSなどのサービス。その一方で、従来のメールは頻度が減少している。またコミュニケーションの総量が増加しているのも特徴だ。 - 内閣府調査に見る青少年のスマートフォン利用(1)
内閣府が発表した平成25年度の青少年ネット利用実態調査。中高生のスマホ利用率が年々高くなっているが、小学生では子供向け端末の利用が広がり、その有用性が広がりつつあるようだ。 - 中学校の情報モラル教育(2)
学校での情報教育は過ちを犯さないような予防的な意味合いが強い。しかし起こってしまった問題をどう解決するかも重要だ。その後のネット利用にも影響が出てしまうからだ。 - 中学校の情報モラル教育(1)
小中高で行われている情報教育。その内容はモラルを重視しているが、カバー範囲は広く、複数の教科に渡って学習するのが実情だ。それは保護者が期待するようなものなのだろうか。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.