爆速で中止が決まったヤフーのイー・アクセス買収騒動――今後、ソフトバンクとイー・アクセスの一体化が実現するか?:石川温のスマホ業界新聞(1/2 ページ)
当初予定していたイー・アクセスの子会社化を中止すると発表したヤフー。協業ブランドとして展開する「Y! mobile」の今後を予測してみた。
すべては「茶番」だったのか。
5月19日、ソフトバンク、ヤフー、イー・アクセス、ウィルコムは6月2日に予定していたヤフーによるイー・アクセスの買収を中止するとあっさりと発表した。このリリースを受けて、ほとんどの業界関係者がずっこけた。
宮坂学ヤフー社長は「第4のキャリアにはならない。日本初のインターネットキャリアになる」と宣言。孫社長も決算会見でインターネットキャリアを「新成長戦略」と語っていたにも関わらず、3240億円の買収を撤回するとは、孫社長らしい潔い決断だった。
今回のヤフーへのイー・アクセス売却中止は「周波数割り当てが会社からグループ別になりそうだから」とか「株式を売却して現金を確保する必要がなくなった」など、様々な憶測が飛び交っている。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年5月24日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
理由はそれだけでなく、やはり現状では、他社との差別化が見つけられなかったというのもありそうだ。
料金もLCC的なものを考えていたようだが、昨今のMVNOやNTTドコモの新料金プランに立ち向かうのは困難となっていた。
ヤフーが低価格で攻めようと思っても、孫社長が「そんなの無理」と宮坂社長の提案を突っぱねれば、ヤフーとしてはぐうの音も出ない。
個性的な端末を用意しようと思っても、Androidベースとなると、グーグルのサービスを標準搭載しなくてはならず、ヤフーとしての存在感を出しにくい。
ネットワークもソフトバンク網に依存する現状では「エリアの広さ」や「速さ」での差別化は無理と言える。
そもそも、アメリカで「3キャリア体制が望ましい」(孫社長)として、T-Mobile US買収に動いているにも関わらず、日本で4キャリア体制にしようとしているソフトバンクの戦略はあまりに矛盾していると言わざるを得ない。
最初なら指摘していたように、同じグループが2つのキャリアを持つというのことが無理な話だったというわけだ。
リリースには「買収しなくても、目的は達成できることがわかった」と書いてあったが、そんなものは買収する前から充分に判断できるはずだ。
3月27日に行われた突然の新事業発表会から53日間、我々はとんだ茶番劇に付き合わされる羽目となった。
しかし、買収中止のリリースには「イー・アクセスとウィルコムは6月1日に合併し、新会社名はワイモバイル株式会社になる。ヤフーは新会社とY!Mobileブランドの商材を共同で展開する。またY!Mobileブランドはソフトバンクモバイルでも展開することを視野に入れる」と書いてある。
この文章を読むと、今後、場合によっては、彼らが面白い存在になる可能性を秘めているように感じた。
もはや、周波数割り当てのことを考えれば、別会社にしておく意味はない。いっそのこと、イー・アクセスはソフトバンクが吸収合併してしまえば、契約者数でKDDIを逆転し、日本で「真の2位キャリア」になることができる。
宮坂社長がやりたかったY!Mobileブランドでのサービス展開はソフトバンクモバイルでやればいいだろう。
ソフトバンクモバイルは、この夏商戦に新製品・新サービス発表会を行わないなど、もはや「腑抜け」の状態にある。孫社長がT-Mobile US買収に必至で、日本市場に興味がなくなっているのだから無理はない。
ヤフーがY!Mobileブランドをソフトバンクモバイルで展開すれば、ソフトバンクモバイルの弱点とも言えるサービス面での強化が期待できるかも知れない。現在、KDDIはau WALLETで勢いづいているが、彼らのポイント施策にも、ヤフーであればTポイント連携で対抗できる。
NTTドコモがdマーケットの拡大に熱心だが、こうしたコンテンツ展開もヤフーであれば、いくらでも対抗策を投入することが可能だ。
いままでソフトバンクモバイルになかったサービス面での強化がヤフーで期待できる。
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