Web広告を非表示にできるiOS 9の「コンテンツブロッカー」 Appleの狙いはなにか?:佐野正弘のスマホビジネス文化論(1/2 ページ)
iOS 9のSafariに搭載された「コンテンツブロッカー」。対応アプリを追加すると広告もブロックできるため大きな議論となった。Appleは何を狙っているのか、考察した。
iOS 9の新機能として、大きな注目を集めているのが「コンテンツブロッカー」だ。この機能を使えば、SafariでアクセスしたWebサイト上の広告を消すこともでき、さまざまな議論を呼んでいる。なぜAppleはこのような機能を搭載したのだろうか。
専用のアプリを使えばSafariの広告もブロック可能に
「iPhone 6s」「iPhone 6s Plus」が発売され、タッチパネルを強く押して各種操作ができる「3D Touch」などの新機能が注目を集めた。またiPhone 6s/6s Plusが搭載する新OSの「iOS 9」も、ほぼ時期を同じくして従来モデル向けに配信が始まった。
ユーザーが増加しているiOS 9だが、搭載されている「コンテンツブロッカー」という機能が大きな物議を醸している。これは、iOS標準のWebブラウザ「Safari」で表示されるWebコンテンツの一部表示を制限できるというものだ。
といっても実際はSafariの機能拡張であり、Safari単体では動作しない。コンテンツをブロックするためには、別の専用アプリをインストールする必要がある。またブロックする内容も、特定の画像や動画など、インストールしたアプリによって変わってくる。
このコンテンツブロッカーが論議を巻き起こしているのは、簡単に言ってしまえばこれで広告をブロックできる、つまりWebサイト上の広告を一切表示しないことが可能になるからだ。実際、iOS 9にコンテンツブロッカーが搭載されて以降、App Storeにはこの機能を活用して広告をブロックするためのアプリが次々登場している。そのため、コンテンツブロッカーを「広告ブロック」機能と呼ぶ人も少なくない。
ではなぜ、Safari上の広告をブロックすることが問題になるのかというと、そこにはWebサービスのビジネスモデルが大きく影響している。
ユーザーの利便性を高める一方、ビジネス面で多くの論議を巻き起こす
多くのWebサービスは広告で収益を上げ、ユーザーが無料で利用できる仕組みを採っている。だが広告がブロックされてしまうと、得られるはずの広告収入がなくなってしまい、ビジネス上大きな問題になる。
またWebサービスの多くは、Webサイトにアクセスしたユーザーの行動をトラッキング(追跡)することで、ユーザー動向の分析を進め、ユーザーに適した広告を表示したり、コンテンツを改善したりしている。Webサイトへのアクセス数を計測し、その動向を知ることができる「Googleアナリスティクス」なども、そうしたトラッキングツールの1つだ。だがコンテンツブロッカーによって行動追跡が拒否されれば、トラッキング情報をベースとしたサイト内容の改善も難しくなってしまう。
一方、Webサイトを利用するユーザーの視点に立つと、コンテンツ閲覧と同時に広告が目に入ることや、その分のパケット通信料もかかることなど、これをストレスと感じる人は多い。
またWeb上での行動を勝手にトラッキングされることへの抵抗感もある。広告やトラッキング自体が“不快なもの”と感じる人が多いからこそ、広告をブロックしたいというニーズも根強く存在する。Appleはコンテンツブロッカーでそれに応えたとして注目されているのだ。
実際、コンテンツブロッカーを使った広告ブロックアプリは有料のものが多いが、新機能が登場してから間もないこともあり、執筆時点(10月14日)では人気を博しているようだ。
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