4年たっても色あせない、高級スマホ「VERTU」:山根康宏の海外モバイル探訪記
7月に倒産した、高級端末を扱う「VERTU」。2013年からはAndroidスマートフォンを市場に投入していました。4年前に発売されたモデルを今見ても、VERTUの魅力を堪能できます。
Nokiaから分離して1000万円の高級端末などを手掛けているVERTU(ヴァーチュ)の倒産のニュースが2017年7月に流れました。高級端末の需要がなかったのか、あるいはコストが高すぎたのか。今後の事業の動きは予断を許しません。しかし一度VERTUの端末を使い出すと、もう他には戻れないほど、本物の素材を使った質感は最高のものと感じられます。
もともとはフィーチャーフォンだけを手掛けていたVERTUですが、2013年からはAndroidスマートフォンを市場に投入しています。今から4年前に発売されたVERTU Constellationの2013年モデルを見ても、VERTUの魅力を堪能できます。どんな製品なのか、写真で見ていきましょう。
Constellationの本体形状は下部がVの字になった五角形。このデザインはもちろんVERTUの「V」を模したもの。歴代のVERTUモデルのほとんどが本体のどこかにVの字のデザインを取り入れています。その本体下部には背面からつながる革の素材で覆われていますが、これは本革。合皮ではありません。またディスプレイはサファイアグラスでスクラッチ知らず。保護フィルムは不要です。
背面は全体がその本革で覆われており、持ってみると手のひらにぴったりと本体が収まります。革の風合いはとてもよく、いつまでも握り続けていたくなるほど。VERTUの価値はここにあります。「スマートフォンはスペックが高ければいい」という人は、スペックを追い求めればよし。一方、「スマートフォンであろうとも、モノとして本物を求める」という人に、VERTUは製品を送り続けてきたのです。
スペックはプロセッサがSnapdragon S4の2コア1.7GHz、ディスプレイが4.3型HD(720×1280ピクセル)、カメラは1300万画素。通信方式は3G。4年前の機種なので、さすがにスペックは見劣りしますが、この質感の本体の心地よさを考えると、SNS用途程度なら今でも使えないことはありません。何年たっても本革は本革。ビンテージ的な良さも感じられます。そして本体側面を見ると、赤いボタンが見えますね。これはルビーだそうで、VERTUの他のスマートフォンにも採用されています。
SIMトレイの素材もセラミック。プラスチックでは破損の恐れもありますから納得です。またアルミなどでは削れや折れの心配もあります。そこまでしなくてもいいのかもしれませんが、そこまでこだわる、それがVERTUというわけ。SIMトレイを抜くピンもロゴ入りのこだわったものになっています。
スピーカーの音質も良く、オーケストラの演奏によるVERTUオリジナルの着信音は、テキストでお届けできないのが残念なほど。VERTUは「金やダイヤを使った高級品」と思われがちですが、スピーカーやマイクも高性能なものを搭載しているのです。見た目だけが高級ではないのですよ。筆者が初めてVERTU端末を手にしたとき、その音の良さには驚いたのですが、メディアプレーヤーとして使うのもいいのかもしれません。
本体とおそろいの素材を使った本革のケースもあります。ケースだけでも普通のスマートフォンが買える値段ですが、素材を考えると当然でしょう。なおこのConstellation本体の価格は発売当時4900ユーロ、約63万2000円。VERTUとしては“格安”な部類に入りますが、ユーザー層拡大を狙っての値付けだったのでしょう。
本物素材の製品を欲しいと思う富裕層をターゲットにしたものの、数年でスペックが古くなってしまうスマートフォンは、まだまだ発展途上の製品なのでしょう。それでも一度VERTUの実機に触れてみると、いつかは欲しいと思わせるだけの質感を感じられます。いつの日か復活することを期待したいものです。
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