MVNO市場は飽和しているのか? 「モバイルフォーラム2018」で語られたこと(2/3 ページ)
2018年3月23日に「モバイルフォーラム2018」が開催された。MVNO市場は飽和しているのか? これからMVNOが成長するためには何が必要なのか? キーパーソンが集結して考えを披露した。
IIJはフルMVNOで差別化を図る
インターネットイニシアティブ(IIJ) MVNO事業部長の矢吹重雄氏は「MVNOは格安スマホだけでなく、法人のリモートアクセス、働き方改革、外国人などの需要にも応えられる。ここでわれわれが活躍できるシーンはある」と述べる。IIJは折しも、加入者管理機能を持ち、自由にSIMカードを発行できる「フルMVNO」としてのサービスを3月に始めており、これが既存の格安スマホを超えたサービスにつながる、というわけだ。
LINEモバイルはシンプル路線で低解約率を維持
LINEモバイルの嘉戸彩乃社長は「お客さまのニーズはどんどん増えていて、プレーヤーの中身が変わってきているので、市場は飽和していない。モバイルネットワークと組み合わせていろいろなことができるようになる。それら全てをキャリアがやるわけではないと認識している」と話す。
嘉戸氏は、LINEモバイルのコンセプトは「SIMPLE」「FREE」「VALUE」の3つだと説明。SIMPLEはユーザーの利用動向に合わせた「シンプルなプラン」、FREEは特定アプリの通信料が無料になる「カウントフリー」、VALUEは「驚きの価格(安さ)」を意味する。
LINEモバイルのユーザー層は20代後半が最も多く、若いのが特徴。また、20代の9割以上は(LINE、Twitter、Facebook、Instagramが使い放題の)「コミュニケーションフリー」プランを選んでいるという。月額500円(税別)〜と最安の「LINEフリー」プランは、子どもやシニア向けに契約する人が多く、小学生ユーザーの9割がLINEフリーを使っているという。こうしたシンプルなプラン構成が受け、2017年の平均解約率は0.92%で、「音声SIMの解約期間が過ぎても同じレベルが続いている」(嘉戸氏)そうだ。
嘉戸氏は、MVNOの本質は「フレキシブルな料金体系」「独自のユーザー接点」「通信以外のサービスとの連携」にあると考える。ソフトバンク傘下になり、2018年夏にはソフトバンク回線のサービスも提供する予定だが、マルチキャリア化も、上記3つの延長線上にあるという。
「LINEモバイルユーザーはLINEポイントの使用率が高く、消費量も多い」(嘉戸氏)ことから、今後は「LINEにどう還元するか」も考えていく。
イオンモバイルは「お客さま第一」を貫く
イオンリテール モバイル事業部長の橋本昌一氏は「店頭に行くと、格安スマホについて、聞いたことがあるけど、どうなの? という声はまだ聞く。これからは、一般の方が格安スマホ市場に入っていく」と、ユーザー層が変わっていることを肌で感じている。その中でも「イオンモバイル」の基本理念である「お客さま第一」を貫いていく。
その一例として、橋本氏は「解約金なし」を掲げる。イオンモバイルではかねて、音声SIMでも解約金を設定していない。その理由について橋本氏は「通信を申し込んで解約するということは、サービスに満足いただけなかったということ。そこで代金を頂戴するという考え方はイオンにはない。返品する時に返品手数料を取るのと同じ。むしろご満足いただけなくて申し訳ございませんと謝る立場だ」と話す。
今後の施策について、まだ橋本氏のアイデアベースではあるが、テレビ電話を活用した遠隔診療のサービスを検討していることを明かした。イオンは「調剤薬局の数が日本一」(橋本氏)なので、処方箋が出た際は店舗でフォローしていく。「東日本大震災の時に、被災者を(イオンの)店舗で受け入れた。調剤薬局も24時間提供していたが、薬剤師の方は24時間対応できない。遠隔診療を活用すれば、もっといいサービスを提供できるのではと思う」(同氏)
イオンはランドセルのシェアもトップだそうで、「年間薬100万人の新入学生のうち、約25万人はイオンのランドセルを背負っている」(橋本氏)。将来的には、ランドセルに通信モジュールを埋め込み、学童の安心安全を担保するサービスも提供したいと橋本氏は語る。次も「夢ですけど」と前置きした上で、自転車にも通信モジュールを埋め込み、イオンで販売している自転車が盗難に遭ったら、購入価格の何%を保証するだけでなく、「取り戻すサービスも提供したい」という案も披露した。
mineoはユーザーと一緒にサービスを作っていく
「mineo」を運営する、ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの上田晃穂氏は「お客さまは神様というより、友達や家族のように見ている。言いにくいことも言える仲間、その人たちと一緒にサービスを作っていく」という考えを明かす。コミュニティーサイト「マイネ王」を起点に、ファンと一緒にサービスを作り上げていくことを差別化に掲げている。熊本地震が起きた際に、(パケット貯蔵庫の)フリータンクを「災害支援タンク」として解放したのは、ユーザーからの声が発端だったという。
「これから環境が変わっても、消費者は必ずいる。何を価値に思っているかを常に考えて、顧客価値に対して一生懸命応えていく」と上田氏は意気込みを語った。なお、mineoは2018年3月時点で約98万契約となり、100万契約が見えてきた。
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