“メッセージング”が重要な決済インフラに 「RCS」もカギを握る:鈴木淳也のモバイル決済業界地図(2/3 ページ)
海外では、SMSやMMSがいまだ広く利用されている。これらが近い将来、オンラインコマースや決済の中心になりつつある。やがてはスマートフォンで花開いた“アプリ”文化も飲み込み、B2Cの世界を大きく変えることになるだろう。
RCSがモバイルアプリ文化に与える影響
汎用(はんよう)性の高いSMSだが、送受信がテキストのみという弱点の他、そもそも既読情報の共有やUI(ユーザーインタフェース)の補助という面で昨今のモダンなメッセージングサービスに比べて貧弱だ。マルチメディア情報を扱えるMMSでも基本的な部分は一緒だ。そこで最近注目を集めているのが「RCS(Rich Communication Services)」で、携帯電話(スマートフォン共通)のインタフェースで相互接続も容易という特徴を持つ。
これは2018年2月にスペインのバルセロナで開催された「Mobile World Congress 2018(MWC)」でも大々的にアピールされ、世界各地の携帯キャリアやGoogleを中心にそのメリットが説明されている。欧米の携帯キャリアや端末メーカーらが対応をすでに表明している他、日本でも近々携帯キャリア大手3社らがRCSに対する取り組みを発表する見込みだ。ただ、日本のRCSはGoogleが買収したJibe Mobileのものとは異なる技術を採用しているという話も聞こえてきており、改めて説明されるだろう。
では、RCSの導入で何が可能になるのか。簡単にいえば、市場に数多くあるメッセージングサービスとほぼ同じことが可能になる。画像や動画の扱いが可能になる他、送信者情報や専用アイコン、既読情報、項目からの選択など、メッセージを一方的に送信するだけだったSMSやMMSから大きく進化している。
日本で携帯キャリア3社がRCSを共同導入するというニュースが流れたとき「LINE対抗で一致」のような表現が見られたが、既存のメッセージングサービスを代替可能な機能が含まれていると考えていい。違いは、専用のアプリを導入したり、専用アカウントを作成したりしなくてもスマートフォン標準の機能として利用できることにある。
RCSの推進母体が携帯キャリア(+Google)であり、他のサービス事業者の影響を受けずに利用できることを目指しているからだ。この仕組みを利用して、オンラインショッピングの他、旅行での予約やチケット取り寄せ、モバイルバンキング、携帯電話サービスの利用状況確認やオプション変更などが可能になるとGoogleでは説明している。
2017年にMWCで開催されたセミナーでは、英Virgin Trainsと米Walgreensが活用例を紹介していた。英国に限らず諸外国では列車到着直前まで駅の発着番線が不明なケースがほとんどで、旅行者は移動で右往左往するのが常だが、こうしたリアルタイムの遅延状況や発着番線などの案内がRCS経由で通知される他、乗車に必要なQRコード付きチケットの取り寄せ、駅の構内案内、シート情報なども画像付きで示される。
Walgreensはドラッグストアチェーンだが、写真プリントなど幅広いサービスも展開しており、RCSのデモでも同インタフェース経由で送信した写真のサイズを指定し、ピックアップ場所を選んでおくことで受け取れるという流れになっている。
現在はあくまでデモ用のサンプルのため、できることは単純だ。だが今後、RCSに対応するキャリアや端末が増え、開発体制がこなれてくると、より洗練されて便利なサービスが登場してくるだろう。このとき、一部の定番アプリやゲームなどを除けば、従来まではモバイルアプリが中心だった顧客との接点が、今後はRCSのようなメッセージングのインタフェースへと移ってくるのではないかと予想する。
メッセージングのサービスはいくつかあっても、バックエンドは共通なので出口が変わるだけだ。まだ数年先の話だと思うが、このトレンドに合わせて決済の世界もこの「メッセージング」を意識する時代が近づいているように思う。
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