LINEモバイルは、なぜソフトバンク傘下になったのか 嘉戸社長に聞く:MVNOに聞く(2/2 ページ)
LINEモバイルがソフトバンクと業務・資本提携を結んだ。共同で端末やマーケティングを強化していくのが狙い。なぜ、提携先にソフトバンクを選んだのか。LINEモバイルの嘉戸彩乃社長に聞いた。
ARPUは1000円や1500円というレベルではない
―― LINEモバイルはARPUが高いというお話もうかがったことがあります。これについては、いかがですか。
嘉戸氏 高いというより、他のMVNOが低いのではないでしょうか。価格.comなどで、ユーザーがどのプランを使っているのかを見たとき、随分低いプランが選ばれていて、ビックリしたことを覚えています。LINEモバイルのARPUは1000円や1500円というレベルではありません。
―― LINEフリープランよりも上のプランを選ぶ人が多いということですね。
嘉戸氏 もっと上ですね。若い人は3GBでは収まらないので、5GB、7GBというプランが選ばれます。でも、(ソフトバンクのような)50GBまではいらないというところとの、バランスが取れているのだと思います。
―― といっても、Y!mobileはもっとARPUが高い。ソフトバンクにとっては、そこにもう一段安い選択肢が用意できることになります。
嘉戸氏 Y!mobileはもっと高いですね。データ容量の在り方や、サービス設計の仕方、音声通話をどう扱うかというところも、われわれと違います。音声通話についても、いらないというお客さんもそれなりにいますからね。高校生ぐらいだと、音声通話はほとんど使いません。
ソフトバンク回線でもカウントフリーはやる
―― データ容量の在り方が異なるという点では、LINEモバイルはカウントフリーを提供しています。ただ、ここには、MVNEのNTTコミュニケーションズのノウハウも入っていたとうかがっています。これは、ソフトバンク回線でも提供できるのでしょうか。
嘉戸氏 (NTTコミュニケーションズと)一緒にやっていたということは、ノウハウはどちらにもたまっているということです。カウントフリーは、技術的に大変というよりも、運用の方が大変です。アプリの動きをどう追っていくか、その検証をどうするかというところですね。最初のカウントフリーをどうやるかというところから、品質保証のところのフルチェックまで、一緒にやってきています。
―― カウントフリーについては、ソフトバンク側も理解を示しているのでしょうか。
嘉戸氏 理解というか、「いいね」という感じですね(笑)。ソフトバンクはSprintもあるので米国市場もよく見ていて、T-Mobileの施策や、(米規制当局の)FCCがどんなことを言っているのかというところまで含めて考えていると思います。
今の価格では収益を原価が超えてしまう
―― 他のMVNOを見ると、サブブランドの影響を大きく受けているところもあります。LINEモバイルはいかがですか。
嘉戸氏 サブブランドの影響は、多かれ少なかれ、みんな受けていると思います。特に、サブブランド対抗のようなブランディングをしたところは、一番つらいのではないでしょうか。逆に、うちのサービスは、あまりサブブランドの影響を受ける作りになっていません。これは事業者によるところも大きいのではないでしょうか。
サブブランドと同じ速度を出すにはどのくらいの帯域が必要なのかは、LINEモバイルでも計算しています。ただ、今の価格では収益を原価が超えてしまいます。MVNOも全て同じ条件にするというのが、やりづらくなっているのではないでしょうか。
―― とはいえ、御社もソフトバンクのサブブランドに位置付けられてしまうので、今後、他のMVNOからの風当たりも厳しくなりそうですが。
嘉戸氏 厳しくなるでしょうね。でも、やるだけです。
取材を終えて:LINEモバイルの色をどう打ち出すか
MVNO参入時は台風の目になると思われていたLINEモバイルだが、やはり後発だったこともあり、上位の事業者にキャッチアップするのは簡単ではなかったようだ。資本力を強化し、端末やマーケティングで協力できるという意味では、MNOであるソフトバンクとの資本・業務提携は理にかなった戦術といえるだろう。ソフトバンクの力を加えれば、成長にドライブをかけることができるはずだ。LINEモバイルが支持されている市場は、これまでソフトバンクが開拓できていなかったこともあり、シナジー効果が期待できそうだ。
とはいえ、資本比率のうえでは、LINE色が薄くなっているのも事実だ。単なるソフトバンクのサブブランドになってしまっては、LINEモバイルならではの魅力が失われてしまう。ソフトバンク側の論理に引きづられすぎると、ユーザーが離れてしまう恐れもありそうだ。LINEが手掛ける通信サービスとしての“色”をどう打ち出していくのかは、今後も注視しておきたいポイントといえるだろう。
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