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なぜNFC決済を導入? マクドナルドがモバイル戦略で目指すものモバイル決済の裏側を聞く(2/2 ページ)

読者の皆さんで、これまでマクドナルドを利用したことがないという人は少ないのではないか。そんなマクドナルドが、Type-A/B方式のNFCを活用した決済サービスを導入した。その狙いは? マクドナルドのモバイル戦略を聞いた。

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事前注文やデリバリー、モバイルアプリのサービスにも注力

 モバイルアプリを使った戦略にも注目したい。日本では公式アプリを使ったクーポンによる来店誘導戦略が好評で、昼時のラッシュ時などには行列で待っている間にスマートフォンを操作してクーポン画面を開いている客の姿をよく見かける。日本マクドナルド広報によれば、2017年12月末現在で公式アプリのダウンロード数は約4200万件で、クーポンを通じた商品選択の他、2017年10月以降に対応した「dポイントカード」「楽天ポイントカード」との連動で、よりお得感の高いものとなったという。

 なお、公式アプリのクーポンには「かざすクーポン」と「見せるクーポン」の2種類があるが、前者はおサイフケータイ搭載機種のみの対応となる。かざすクーポンでは事前に利用したクーポンを登録しておくことで、店頭のリーダー端末に“かざす”だけで注文ができる仕組みだ。見せるクーポンは画面を見せた後、飲み物を改めて注文する仕組みとなっている。

 いずれにせよ、端末で公式アプリを操作した時点で来店客は注文内容を決めており、並んでからメニューを見て悩むことはないだろう。これにより、来店客の待ち時間が縮小されるだけでなく、店舗全体の回転率も改善する。特にかざすクーポンの場合はカウンターでのクルーの作業がほとんどなくなるため、注文作業にかかる時間が非常に短くなる効果がある。

マクドナルド
iPhoneで公式アプリを操作して「見せるクーポン」を選ぶ

 この公式アプリは来店誘導と店頭での注文時間短縮の役割が大きいが、2017年春に米国での広域展開がスタートした「Mobile Ordering」サービスの場合、注文と決済をモバイルアプリ上で済ませてしまい、後はピックアップ方法(「“カーブサイド”と呼ばれる店舗横の駐車場」「ドライブスルー」「店舗カウンター」の3つのいずれか)を指定するだけだ。

 同時期には似たようなモバイル注文サービスをStarbucks Coffeeが開始しており、「モバイルアプリ内で決済」「店舗は商品受け取りのための窓口」という取り組みが小売業界やレストラン業界で大きな話題となった。日本マクドナルドによれば、国内では2018年内にもこのモバイル注文サービスのテストが始まるとのことで、マクドナルドを含むファストフード店舗の利用スタイルが近い将来変化するかもしれない。せっかく便利で高機能なモバイル端末が手元にあるのだから、誰もが嫌な待ち行列を事前注文で回避したいと考えるのは自然な流れだ。

マクドナルド
米国で2017年春にスタートした「Mobile Ordering」

 店舗での体験だけでなく、オンラインでの注文を経由したデリバリーサービスの利用も広がっている。日本マクドナルドでは2018年2月の決算発表で、今後の成長戦略の1つに「デリバリーへの注力」を挙げている。マックデリバリー(McDelivery)による特定エリアでの店舗からの配達の他、Uber Eatsとの提携による委託配達と、モバイルアプリを通じた注文配達サービスが利用できる。

 アプリからの注文は、ハンバーガー1個単位でも可能なので、1人でも比較的気軽に頼めるだろう。モバイルとデリバリーを組み合わせたサービスは特にアジア地域で急成長中だが、前述の最新テクノロジーを活用した店舗体験と合わせ、モバイルの仕組みを通じて、マクドナルドという店舗をさまざまな形で利用できるようになりつつあることが分かるはずだ。

マクドナルド
マックデリバリーまたはUber Eatsを使って特定エリアでの配達をアプリから依頼できる

顧客との対話にソーシャルネットワークも活用

 近年、FacebookやTwitterなどソーシャルネットワーク系サービス利用の増加に伴い、顧客対応窓口としてこれらサービスのインタフェースを活用する企業が増えている。例えば、ユーザーの何気ない公開ツイートに対して反応してきたり、あるいはトラブル時などにチャットのインタフェースを開いて個別に対応したりといった具合だ。マーケティングとサポートの両面があり、手動とチャットボットを駆使して顧客満足度を高める狙いがある。

 Deloitteの調査報告によれば、ミレニアル世代、つまり若年層ほどソーシャルネットワーク系サービスの滞留時間が長い傾向があり、モバイル利用時間の3分の2程度をこうしたサービスの利用に費やしているという。つまり、効果的なキャンペーンの適用や顧客意見の適切な吸い上げにはソーシャルネットワークの仕組みの活用が必須となる。

 日本マクドナルド広報によれば、現在同社では顧客から直接意見を聞く場として「KODO」というアプリを、マーケティングツールとしてTwitterを活用しているという。また、[今年3月に実施されたハイアリングキャンペーンでは、LINEで公式アカウントを通じてアルバイトに応募できる仕組みを導入している。情報が拡散しやすく日本国内のユーザーが多いTwitter、それに若年層の利用人口の多いLINEをうまく活用することで、こうした業界トレンドを取り込んでいる。

 中でも興味深いのは「KODO」で、AndroidまたはiOS向けアプリをダウンロードして2分ほどのアンケートに答えることで、ポテトSやドリンクSなどの商品がもらえる無料券が利用できる仕組みになっている。2015年の導入以降、2018年3月までに約900万件の意見が寄せられていると同社では説明する。この声は店舗側で確認でき、単純な感想から店舗改善につながるものまでさまざまで、顧客との対話の場として大いに役立っているようだ。デジタル化と効率化が進むことで、店と顧客の接点が少なくなって関係が希薄になる印象もあるが、ツールも使い方次第で逆に密な関係を実現するものとなるのかもしれない。

マクドナルド
店舗改善にもアプリとソーシャルの仕組みを活用
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