公取委、アップルに対する独禁法違反の疑いを解消――NTTドコモはdocomo withでiPhoneを扱うようになるのか:石川温のスマホ業界新聞
公正取引委員会(公取委)がApple JapanとAppleに対する独禁法違反審査をしていたことを明らかにした。Appleが大手キャリアに対して「契約」でいろいろ「縛り」をかけていたことが明らかになったものの、契約内容の見直しなどもあり、従来と変わらない販売体制に落ち着きそうだ。
iPhone日本上陸10周年を迎えた2018年7月11日、公正取引委員会は、アップルのiPhone販売に対する独占禁止法違反の容疑が解消されたとして、審査を終了したと発表した。
アップルと3キャリアには「iPhone Agreement」という契約書が存在するのだが、アップルは3キャリアに対して、iPhoneの販売台数や料金プラン、下取り、端末補助金などで様々な圧力があるのではないかという疑いがかけられていたのだった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年7月14日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
業界内ではその存在がまことしやかにささやかれていたが、まさかアップルとキャリアの契約関係が、今回、公取委の手によって、公にされた事自体に驚きを隠せない。
ソフトバンクがiPhoneを扱い始めて10年が経過するが、おそらく契約当初には存在した条項もあったのだろう。しかし、iPhoneが3キャリアで取り扱われるようになってきたことで、契約内容も何度も変更され、今の形になったのだと思われる。公取委の審査を受け、アップルと3キャリアが契約を見直したことで、お咎め無しとなった格好だ。
7月11日の朝、朝日新聞がすっぱ抜いた形となっていたが、実は、筆者は今週、アップルと公取委に動きがあるというのはなんとなく知っていた。
ちなみに11日には、14時半から、NTTドコモ・吉澤和弘社長のインタビューが入っていた。ぜひとも吉澤社長に「iPhone Agreement」について聞いてみようと意気込んでいたのだった。
11日に朝日新聞がすっぱ抜いたことで、昼過ぎに「公取委が15時から会見を開くこと」が明らかになった。この段階でインタビューと会見がかぶることになり、会見にはいけないのが確定した。しかも、14時半から15時のインタビュー取材ということで、公取委が世間的に何をいうか、明らかにならないまま、インタビューを始めなくてはいけなくなった。
ただ、事前の関係者への取材で、アップルはキャリアに対して、iPhoneを販売する際は端末補助金をつけた形のプランで売るようにと指示をしていたことが明らかになった。つまり、アップルは端末補助金のつかないプランは認めていなかったようだ。だが、これも去年9月の段階でKDDIが「ピタットプラン」を導入したことで、状況は変わっている。
残る2キャリアは確かにiPhoneは端末補助金があるかたちでしか販売していない。
ひょっとすると、NTTドコモは、「docomo with」でiPhone SEを扱わないのは、アップルとの契約があるからなのではないか、という疑問が湧いたのだった。
そこで、14時半からのインタビュー取材で「今回のiPhone Agreementを変更したことで、docomo withでiPhoneを扱えるようになるのか」と、開口一番、吉澤社長に尋ねてみた。
すると「朝日新聞は読んだが、これから公取委がどんな内容を発表するか、見てもいないのでわからない」という回答。広報からは「仮に公取委が発表した内容を読んだとしても社長としてコメントは出せない。メーカーとは守秘義務契約があるので、それがアップルであろうとなかろうと、詳細は明かせない」というけんもほろろな回答であった。
docomo withでiPhoneを取り扱う可能性についても「iPhoneは高額であるため、端末補助金を出したほうがユーザーのためになる」とのことで、いまのところは従来通りの方針で行くようだ。
新聞報道などでは「iPhoneが安く使えるようになる」といった論調があったりするが、実際は、「補助金あり」と「補助金なし」の2つの買い方が選べるようになるが、使い方によって、どちらが得かはユーザーによるところが大きく、あまり今まで変わりない結果に落ち着きそうな感がある。
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