「契約自動更新」「4年縛り」「SIMロック」――公取委が考える携帯電話市場の課題(1/2 ページ)
公正取引委員会が「携帯電話市場における競争政策上の課題について」の2018年度調査報告をまとめた。約2年ぶりの報告では、何を問題視したのだろうか。
公正取引委員会(公取委)は6月28日、「携帯電話市場における競争政策上の課題について(平成30年度調査)」を公表した。
この報告書は、2016年度の報告書で指摘した事項のフォローアップをしつつ、大手キャリア(MNO)やMVNOに対する聞き取り調査、有識者による意見交換、ユーザーに対するアンケートなどを踏まえてまとめられたもの。
公取委といえば、独占禁止法(独禁法)を所管する官庁。携帯電話市場の“どこ”に課題があると考えているのだろうか。概要を見てみよう。
通信と端末のセット販売
一般的に、MNOは端末と回線契約を“ひも付けて”販売している。その際、端末購入に伴う月額料金の割り引き(「月々サポート」「毎月割」「月月割」など)を合わせて提供することがすることが多い。
公取委は料金・代金の値引きやキャッシュバック自体は競争上望ましいとしているが、MVNOを含む他事業者の事業活動を困難にするレベルの値引きやキャッシュバックは独禁法で規制している「私的独占」に当たる可能性があると警告している。
販売代理店が独自判断で行う値引きやキャッシュバックについても、一定の要件を満たした場合は独禁法上で規制される「不当廉売」に当たる可能性があるとしている。
通信契約(回線)と端末の関係の模式図。公取委は回線と端末のセット販売や割引・キャッシュバック自体は否定しておらず、あくまでも「過剰な割引の排除」と「購入方法の選択肢の充実」を目指しているようだ(公正取引委員会公表資料より)
「私的独占」「不当廉売」について
- 私的独占:企業が単独、あるいは他企業と組んで競合を排除したり新規参入を妨害したりすること
- 不当廉売:提供に必要な費用を著しく下回る対価(料金)で商品・サービスを提供すること
公取委は商品やサービスは、消費者の好みに合わせてに選べるようにするべきという考え方も示している。
その観点と消費者アンケートの結果を踏まえ、期間拘束する契約プランでは期間内に支払う通信料金と端末代金などの総額をユーザーに示し、契約更新時も同様に総額を示すことが望ましいと提案もしている。
契約の自動更新を伴う期間拘束(2年縛り)
MNOの料金プランは「定期契約なし」と「定期契約あり」に大別される。後者の多くはいわゆる「2年縛り」として契約期間が2年(24カ月)に設定され、自動更新されるようになっている。
独禁法上の観点から、公取委は定期契約なしのプランは2年縛りを正当化するためだけに名目上設定されたもので、実態のある価格とは認められないと指摘。その上で、合理的な目的がない、行きすぎた期間拘束や定期契約の自動更新は、独禁法上の「私的独占」や「取引妨害」になる恐れがあるとする。
「取引妨害」について
- 取引妨害:自社と競争関係にある企業と取り引きを行わないように、取引先(今回の事例ではユーザー)に対して不当な妨害を行うこと
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