中国スマホの“サブブランド競争”が白熱 OPPOがHuawei対抗の新ブランド立ち上げ:山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)
世界のスマートフォン販売シェアは、Huawei、OPPO、Xiaomi、Vivoは上位の常連です。各社はハイエンドから低価格品までさまざまなモデルを展開していますが、今各社が力を入れているのはフラグシップモデルだけではなく、サブブランドの低価格ラインなのです。
日本で通信キャリアやMVNOと組んでP20シリーズを販売するHuawei、アジアでの勢いを受けて日本進出を果たしたOPPO。今や世界各国に中国メーカーが進出を図っています。世界のスマートフォンの販売シェアを見ても、Huawei、OPPO、Xiaomi、Vivoは上位グループの常連です。各社はハイエンドから低価格品までさまざまなモデルを展開していますが、今各社が力を入れているのはフラグシップモデルだけではなく、サブブランドの低価格ラインなのです。
OPPOやHuaweiの中国での売れ筋はミッドレンジモデル
カウンターポイントの調査によると、2017年、中国で一番売れたスマートフォンはiPhoneではなく、OPPOの「R9S」でした。その後に「iPhone 7 Plus」、Vivo「X9」とハイエンドモデルが続きますが、4位にはOPPOのミッドレンジモデル「A57」が入っています。さらにその下の順位を見ると、7位にVivoの「Y66」、8位に「honor 8 lite」、9位にXiaomi「RedMi Note 4X」と続きます。10位のHuawei「honor Enjoy 6X」を加えると、上位10モデルのうち半数の5モデルがメーカーのフラグシップモデルではなく、下位モデル、そしてサブブランドの製品だったのです。
通信事業者がハイエンド製品を中心に展開する日本市場は世界でも特殊な市場であり、中国やアジア各国ではSIMロックフリー端末をメーカーが自由に販売しています。安価な端末を使いたい場合は2年契約で端末の割引を受けるのではなく、毎月払いのプリペイドSIMを低価格なスマートフォンに入れて使えばいいわけです。各メーカーはハイエンドモデルだけではなくミッドレンジモデルやエントリーモデルにも力を入れており、Xiaomiのように売れ筋は高性能モデルの「Mi」シリーズではなく、低価格の「RedMi」シリーズというケースもありがちです。Huaweiも2017年のベスト10に入ったのは、サブブランドのhonorの2モデルでした。
サブブランドを明確に区別しているのはXiaomiとHuaweiで、メインラインの製品は高性能モデルに特化しています。それによりブランドを明確に分け、消費者の懐具合に合わせた製品展開を行っています。1000元を切るモデルもあるXiaomiのRedMiはサブブランド製品として最も成功した例といえます。しかし今、各メーカーはこのサブブランド製品を今まで以上に強化しようとしています。
Huaweiのhonorは中国では全く別のブランドとして展開されています。Huaweiの店舗にはhonorは展示されておらず、honorの店舗はブランドカラーであるライトブルーに統一された内装で、honorのみが並びます。HuaweiのP20 Proはhonorの店では購入できないのです。とはいえ、Huaweiのオンラインストア「Vmall」ではHuawei製品、honor製品どちらもが売られていますし、独立系の携帯電話販売店では併売しています。そのため、中国の消費者はhonorがHuaweiのサブブランドであることは知っています。
honorはもともとXiaomiのRedMi対抗として生まれました。そのため1000元(約1万6000円)前後の価格帯のモデルばかりを出していました。しかし年々ラインアップの幅を広げ、気が付けばHuaweiのメインラインの最上位モデルと同じプロセッサを搭載するモデルも出しています。例えば「honor 10」はKirin 970にメモリ最大8GB、ストレージ128GB、アウトカメラは1600万画素(カラー)+2400万画素(モノクロ)、5.84型ディスプレイと、スペックだけを見ると「P20」を上回っています。
とはいえ、honorの製品はディスプレイにGorilla Glassを採用していませんし、カメラもライカと共同開発したものではありません。そのあたりはうまく作り分けています。honorはブランドイメージを若年層向けの若々しいものとしており、honorの低価格モデルを買った若い消費者が徐々に上位モデルへと買い替え、20代も半ばを過ぎたあたりからHuaweiブランドへ買い換える、という流れを作ろうとしています。
価格勝負を捨てるXiaomi
honorが製品ラインアップを拡大しているのに対し、XiaomiのRedMiは低価格路線を守り、手ごろな値段の製品を次々と送り出しています。上位のMiシリーズは中核モデルの価格が2699元で、下は1399元から。一方、RedMiシリーズは最上位モデルでも1099元で、下位モデルは599元。つまりRedMiシリーズの上にMiシリーズが位置しています。
RedMiは低価格を売りに、中国だけではなくインドでも爆発的に売れています。しかし価格の安さだけを売りにしているのではありません。低価格=格安のイメージではなく、カジュアルな普段着感覚で買える、身近なスマートフォンとしてターゲット層を若年層に合わせています。RedMiの広告は価格よりも先に芸能人やインフルエンサーを使ったイメージ重視の展開を行っており、「ちょっと買ってみようかな」と思わせる戦略を進めています。安いけど持っているのはカッコ悪い、そんなイメージを払拭させているのです。
RedMiの製品はボディーカラーもピンクやブルーなど明るい感じのものを用意し、ブラックやシルバーといった定番カラーよりも一押しにしています。インカメラの性能はそれほど高くないモデルでも、広告ではセルフィーをしているシーンを見せることでSNSへの対応もアピールしているのです。
低価格なサブブランドのRedMiのイメージを高めることで、Xiaomiのスマートフォン全体の印象はここ数年で大きく変わりました。その結果、2014年に失速したXiaomiのスマートフォンビジネスは、2017年に入り復活を遂げています。2018年第1四半期のXiaomiのスマートフォン販売台数はSamsung、Apple、Huaweiに次ぐ4位となり、OPPOをわずかな差で抜いています(ガートナー調査)。
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