XS/XS Maxと比べてどうなのか? 「iPhone XR」のデザイン、パフォーマンス、カメラを徹底検証する(3/3 ページ)
「iPhone XR」が10月26日に発売される。シングルカメラながら機械学習を用いてポートレートモードを実現するなど、iPhone XS、XS Maxにはない特徴も備える。そんな本機のファーストインプレッションをお届けする。
「デュアルカメラは本当に必要?」と思わされたポートレートモード
背面を見れば分かるように、iPhone XRのカメラはシングルカメラである。そのため、デュアルカメラを搭載したiPhoneとは異なり、2つのカメラの焦点距離の違いを使って背景をボカすことはできない。過去のモデルでいえば、シングルカメラだったiPhone 6、7、8のような端末がポートレートモードに対応していなかったのはそのためだ。
一方でiPhone XRは、このポートレートモードを機械学習によって実現している。シャッターを押した際に人物を認識して、背景と分離することでボカしをかけているというのが簡単な仕組みだ。その際に、被写界深度もしっかり記録されているため、あとからボケ具合を変更することもできる。ただし、機械学習をしていない被写体、具体的にいえば人物以外では、ポートレートモードが効かなくなる。人物を検知できないと、画面上には「誰も検出されませんでした。」と表示されるのは、デュアルカメラを搭載したiPhoneとの違いだ。
では、機械学習によるポートレートモードの実力とはどんなものか。早速、何枚か撮った写真を見ていこう。まずは明暗差の大きな屋内での写真。窓から光が差し込んでいるため、iPhone XまでのiPhoneだと人物が黒つぶれしてしまっていたが、スマートHDRが効いていることもあって、iPhone XRではキレイに撮れている。ボケ具合も自然。ボタンで留めた襟の部分や腕と体の間などもきっちり識別されており、ボケ具合も自然だ。
被写体後ろを向いていたり、急に動いたりするとポートレートモードが効かなくなってしまうことはあったが、寝ているところのように、ポートレートとしては少々イレギュラーなポーズをしていても、背景はボカすことができた。明るい屋外でもご覧の通り。肌や黄色い滑り台の発色がよく、奥だけがきれいにボケている。
仕上がりは以上の通りだが、撮影時に気付いたのは、やはり広角カメラでのポートレートモードは、使い勝手がいいということだ。これまでのiPhoneは、ポートレートモードだと望遠側で撮影しており、モードを切り替えた後に被写体から離れなければならず、動き回る子どもは少々撮りづらかった。また、望遠側はレンズが暗いのも難点で、室内で撮ったときに感度が上がり、塗り絵感が強くなっていた。
被写体が人物に限定されてしまうとはいえ、iPhone XRのポートレートモードには、こうした問題がない。画質差や画角差がなく、あとから被写界深度も変更できるため、取りあえず人を撮影するときはポートレートモードにしておいてもいいというわけだ。
正直、ここまで撮れればデュアルカメラを無理に搭載する必要もないのではないかと感じた。2倍ズーム程度であればデジタルズームでも十分なうえに、ポートレートモードのクオリティーや使い勝手はiPhone XRの方が上のこともある。もちろん、撮れる被写体は限定されてしまうが、機械学習のデータを充実させれば、料理や植物などにシチュエーションを広げていくことはできそうだ。この点は今後のアップデートに期待したい。
カメラと同様、iPhone XRは、やや過剰とも思える機能を非搭載にしたり、別のものに置き換えたりすることでコストダウンしている節がある。有機ELを液晶に、ステンレススチールをアルミにしたのは分かりやす部分だが、3D Touchがなくなり、Haptic Touchになっているのもその一例だ。
例えば、アプリのアイコンを押し込んでメニューを表示させる機能はなくなっているが、キーボードのスペースをロングタップしてカーソルを移動したり、通知の消去をロングタップして全消去メニューを表示させたりといったことは可能だ。3D Touchの中から本当に必要な機能だけを取捨選択し、触覚へのフィードバックを残したのがHaptic Touchといえる。3D Touchで最も使うのが文字入力時のカーソル移動だった筆者にとっては、これで十分だと感じた。
また、iPhone XSやXS Maxとは異なり、512GBモデルがない代わりに、128GBモデルという選択肢があるのも選びやすい。冒頭で挙げたように価格はApple直販で8万8400円から。1つ容量を上げて、128GBにしてもSIMフリーモデルなら10万円を下回る。確かに廉価ではないが、機能の高さを考えるとむしろ割安に思えるのではないか。その意味でiPhone XRは、過剰を排した“ちょうどいいiPhone”といえる。
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