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なぜモノクロセンサー廃止に? NMカードの狙いは? 「HUAWEI Mate 20」シリーズの秘密を聞く(2/2 ページ)

Huaweiの最新フラグシップスマホ「Mate 20」シリーズが発表された。カメラ、バッテリー、外部メモリなどで気になる部分が多い。そんなMate 20シリーズについて、Huawei本社でキーパーソンにインタビューする機会を得た。

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AIでスマホはどう変わるのか

 Huaweiのスマートフォンを始め、最近はカメラ機能を中心にAIを推すメーカーが増えているが、HuaweiのAIはどこに優位性があると考えているのか。Li氏はAIの利点は「1.ユーザーがより簡単にきれいな写真が撮れること」「2.撮影機材や技術を使ってもできないような効果を作り出せること」「3.実際よりもキレイに見せてくれること」の3つだと説明する。

 1については「(AIによって)さまざまな撮影シーンと被写体を識別できます。例えば花を撮るとき。AIは数億枚の花の写真を学習しています。どういった写真がいいかが知識として備わっているので、実際の撮影環境、光の加減などに照らし合わせてうまく調整することで、誰が見てもきれいな花の写真だという効果を出せます」とコメント。

 2については「例えばMate 20 Proには、AIを使って、被写体だけに(自動で)色を付けて、背景をモノクロにする動画を撮れます。従来のカメラだと、撮った後に処理をしないとこのような効果を出せず、イマジネーションが求められました」とコメント。

 3については「実際にMate 20 Proのカメラで、肌のきめや毛穴、しみ、しわなどを細かく見せてくれます。これを識別することで、どういったケアが必要かを教えてくれます。単にフィルターを使って肌をよく見せるだけでなく、美肌に対する建設的な意見もできます」と、人物をより美しく撮れることに言及。

 カメラ以外の分野については、「仕事の効率、生活のクオリティーを上げること」が目的だとLi氏。例えば、欲しいものを写真で撮り、その写真からECサイトにアクセスする、異なる言語をリアルタイムで翻訳する――などだ。Mate 20の発表時に、リチャード・ユーCEOが、英語、中国語、フランス語を話す人に、同時に翻訳をするというデモを披露したが、これはMate 20のデュアルNPUのなせる業だという。一方、スマートフォンのAIは「スタートしたばかり。まだ初歩的な応用しかできていないという認識」なので、さらなる進化が期待できそうだ。

あえてNMカードを採用した理由は?

 この他、Mate 20シリーズの特徴的な機能の狙いについてもLi氏は説明した。

 ディスプレイ内蔵の指紋センサーは、光学式のものを使っている。保護フィルムを貼った際の挙動が気になるが、「ディスプレイやフィルムに傷が付くと、指紋認証(の精度)に影響は出るが、弊社がこれから出す純正フィルムを貼ればそういった影響は受けない」(Li氏)とのこと。

 指紋データをスマートフォンに取り込む際の安全性も、「これまでと同じようにしかるべき基準にのっとって保護されます。利便性のために安全性を犠牲にすることは決してありません」とLi氏は説明する。

 Mate 20シリーズから他のスマートフォンを充電できる「リバースチャージ」機能は、スマホというよりも、ワイヤレス充電に対応した周辺機器(イヤフォンなど)への充電を想定している。他のデバイスばかりを充電して自ら(Mate 20)のバッテリーがなくならないように、一定の残量まで下がったら自動で充電を中止する機能も備えた。

Li Changzhu
Mate 20 Proから、他のワイヤレス充電対応機器を充電できる

 Huawei独自のNMカードに対応したことも気になるが、スマートフォンの外部メモリといえばmicroSDが主流。過去(フィーチャーフォン時代)にはソニーが開発した「メモリースティックDuo」もあったが、普及には至らなかった。なぜ、このタイミングで新たな規格の外部メモリを導入したのか。

Li Changzhu
新規格のNMカードを外部メモリに採用。トレイのスペース節約がメリットだ

 「スマートフォンは内蔵メモリが十分あるにかかわらず、2つ目のメモリが欲しいという声があります。このニーズは無視できません」とLi氏。であれば、従来のmicroSDでもよさそうだが、NMカードの面積はmicroSDよりも45%小さく、nanoSIMと同じサイズを実現した。「1mm平方メートルは、スマートフォンでは貴重。メモリカードをSIMカードと同じようなサイズにできないかという発想があったので、MNカードを作りました」と説明する。

 Mate 20シリーズでは、1つのトレイの表と裏にnanoSIMを装着でき、裏側にはNMカードを装着することもできる。つまり1つのトレイでデュアルSIMを実現するだけでなく、必要に応じて外部メモリも併用できるというわけだ(nanoSIMと排他使用になるが)。これによって「面積を節約できるのがメリット」とLi氏は言う。

 「(メモリカードの)中身は従来(microSD)と一緒で、パッケージングが違うだけ」(Li氏)とのことなので、NMカードは「より小さなmicroSD」と捉えてよさそうだ。また採用メーカーがHuaweiだけに終わらぬよう、「より多くのメモリメーカーにも声を掛けて、エコシステムの中に入ってもらうようにしている」そうだ。

 Mate 20シリーズでは、より大きな7.2型の有機ELを搭載したMate 20 Xも発表した。その狙いについてLi氏は「Mateユーザーにリサーチをしたところ、大画面を求めるユーザーが多いと分かったため」と説明する。「大画面のスマートフォンを使ってすることは、メールの閲覧や返信、動画の視聴、ブラウジングやゲーム。こういった人たちに期待に応えようと考えました」(同氏)

Li Changzhu
HUAWEI M-Penを使ったペン入力にも対応した「HUAWEI Mate 20 X」

 Samsungが発表して話題を集めている、ディスプレイを折り曲げられるスマートフォンの開発についてLi氏は「弊社はイノベーションを起こすべく研究を進めており、折りたたみスマホもその範ちゅうに含まれます」とコメント。「新しいイノベーションを導入し、実際に使ってもらうときの基準は、大きく体験が向上するかどうか。デザインや設計に関してはいろいろな可能性がありますが、安全性や製品の重量も考えないといけない。最も重要なのはUX(ユーザー体験)とUI(ユーザーインタフェース)。しっかりと新しい要素を盛り込まないといけないと考えています」(同氏)

(取材協力:ファーウェイ・ジャパン

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