菅官房長官「4割値下げ」と「ショップの混雑を解消せよ」――ショップの淘汰で、混雑がさらに悪化するのは時間の問題か:石川温のスマホ業界新聞
菅義偉官房長官が「携帯電話料金は4割値下げできる」という発言に加えて、「ショップの混雑を解消すべき」という旨の発言をしている。ショップの混雑を緩和するには、ショップにやって来るユーザーの“意識”を変え、サポートの有償化も視野に検討しないといけないだろう。
先日、週刊誌の記者から取材を受けた。
「格安スマホの電話サポートがまったくつながらない。こんなことが許されていいのか」というものだった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年11月24日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
これに対して「サポートが手薄だから、格安スマホは安い。格安スマホにサポートを求める、あなたが間違っている」という趣旨を、丁寧な言葉を使って答えたのだが、相手の記者は納得している感は全くなかった。
また、同じ記者から「菅官房長官は4割値下げとともに、ショップの混雑解消をすべきと語っている。どう思うか」という質問があったので「4割値下げすれば、全国からショップが消え、さらにショップが混雑するのではないか」と返答したが、これまた納得している様子はなかった。
ショップが混在している背景には、契約する際に説明事項が増えており、どうしても説明に時間が取られるというだけでなく、一方で、ユーザーの勉強不足というのも少なからずあると思う。ユーザーがもっとしっかりスマホに対して「自分で使いこなす」という意識を持つだけでも、だいぶ変わるのではないか。ショップも仕方なく、客に対して手取り足取り教えざるを得ない状況にある。客の「サービスは無料である」という意識を変えさせないことには、いつまで経ってもキャリアショップは混雑し続けるのではないか。
菅官房長官が「4割下げる余地がある」と語っている携帯電話料金には、ショップを運営していくためのコストも含まれている。4割下げれば、ショップは淘汰されていくことは間違いないだろう。結果として、残ったショップはさらに混雑が予想される。
いっそのこと、規制改革推進会議の答申書に「キャリアショップのサポート対応は有償にすべし」と記載してはどうか。スマホやアプリの設定などは有償にする一方、客が納得するまでサポートを受けられるようにすればいい。お金を払うのが嫌ならば、アプリの設定などは自分でやればいいだろう。
有償にすればサポートのクオリティも上がるだろうし、無料で設定してもらおうという厄介な客が店からいなくなるのではないか。
総務省が、販売代理店に対して、スマホの安売りや広告に規制をかける気ならば「無償でサポートしたところには罰則」ぐらいできるはずだ。
ショップでのサポートを有償にすべきと思ったのは、ショップでサポートを全く受けていない人は、実は不公平なのではないかと感じたからだ。
誰もが同じ通信料金を支払っているにも関わらず、ショップで何時間も店員を拘束し、サポートを受けている人もいれば、一方で、手続きはすべてオンライン、設定は自分で済ませている人もいる。明らかにオンラインで済ませている人は、サポート受けている人のコストを負担させられており、ここに不公平が生じている。
総務省では「端末割引は、端末を頻繁に買い換える人にはメリットがあるが、端末を長く使う人は損をしている。この不公平を解消すべき」として、分離プランの導入を推進している。この理論でいくならば、サポートを受けている人と受けていない人の不公平感も解消するよう議論を進めるべきだ。
通信料金を本当に下げたいのであれば、サポートの有償化もひとつの策ではないだろうか。
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