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菅官房長官の「日本の携帯電話料金は高い」は説得力ゼロ――総務省の調査後に各社が料金改定。日本は「中位レベル」に石川温のスマホ業界新聞

菅官房長官の「日本の携帯電話料金は高い」発言の「波紋」が収まらない。一般誌はそれを受けて「割高」という論調が目立つが、実際によく調べてみるとそうではないことが分かる。

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「石川温のスマホ業界新聞」

 「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある」という菅官房長官の発言を受けて、様々なメディアの人から「やっぱり、日本の携帯電話料金は高いのですか」という質問を受ける。

 一般紙などは、思いっきり「日本の携帯電話料金は割高だ」と書いているのだが、実際、彼らはちゃんと調査しているのか疑問が残る。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年9月1日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 先週のメルマガでも書いたが、国内外における携帯電話料金の比較で、最も信頼できるのは総務省が調査、発表している「電気通信サービスに係る内外価格差調査」だろう。平成28年度調査の結果が平成29年7月に発表されている。日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国の6カ国で比較されているものだ。

 それを見ると、確かに20GBではドイツに次いで日本は2番めだが、2GB、5GBでは中位に位置づけられている。菅官房長官は20GBのデータを引き合いに出し「日本は高い」と言い切っているようだが、かなり無理があるのではないか。

 しかも、この調査は昨年3月に実施されたものだ。総務省の調査データ、20GBプランは当時のNTTドコモ、ウルトラデータLパックが使われている。

 2017年といえば、夏以降、iPhoneの発売にかけて、各社で新料金プランが発表されている。

 例えば、auは従量制プランを投入し、さらに定額制プランも料金改定を行っている。総務省の調査データを、auの「フラットプラン」で適用してみると、日本の通信料金は下がり、世界で3番目となってしまう。6カ国中3番目ということで、「高すぎる」という指摘は当たらないのだ。

 菅官房長官は総務省のデータでは説得力がないと判断したのか、その後、OECDのデータを持ち出し始めた。しかし、それも他国はプリペイドプランだったり、そもそも引用しているデータ容量がバラバラだったりと、比較に値しないものとなっている。

 一部報道では「菅官房長官が提示したデータは内閣府が用意した」と書かれていたが、ひょっとすると内閣府の人たちは、海外の携帯電話プランを全く理解できていないのではないか。

 ちなみに、総務省の電気通信サービスに係る内外価格差調査は、例年、6月もしくは7月に発表されているのだが、なぜか今年はいまだに発表されていない。

 発表してしまうと、なにかまずいことでもあったりするのか。ひょっとして、「日本は世界と比べても割高ではない」ということが改めて証明されてしまったりするのか。

 数字は嘘をつかないだけに、総務省には一刻も早く調査データを公開してもらいたいものだ。

© DWANGO Co., Ltd.

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