「2年縛り」「4年縛り」の見直し 何が変わる? どう影響する?
総務省からの行政指導や公正取引委員会からの指摘を受けて、大手キャリアがいわゆる「2年縛り」「4年縛り」の見直しを表明している。一体何が変わり、どのような影響が出るのだろうか。
現在、大手キャリアの携帯電話の回線契約は、契約期間の定めのある「定期契約」が一般的だ。その多くは期間を2年間(24カ月間)として設定しているため、「2年縛り」と呼ばれることが多い。
一方、au(KDDI・沖縄セルラー電話)とソフトバンクは「端末代金の48回払い」と「端末の下取り」を組み合わせた買い換え支援プログラムを導入している。このプログラム自体は回線契約とは別個のものであるものの、端末の買い換え(機種変更)時にプログラムに再加入しないと適用できないことから、端末の分割払い期間と絡めて「4年縛り」と呼ばれることがある。
これらの「縛り」を巡って、総務省は6月3日に大手キャリアに対して行政指導と要請を実施。公正取引委員会も同月28日に定期契約や買い換えプログラムが、場合によっては独占禁止法上の問題になりうるという報告を行った。
総務省や公取委の動きを受けて、大手キャリアは「2年縛り」「4年縛り」の見直しに着手することを相次いで表明。これよって、携帯電話の「契約」はどう変わるのだろうか。そしてどのような影響を私たちにもたらすのだろうか。
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2年縛り:「24カ月目」も更新月に 「自動更新」デフォルトは変わらず
大手キャリアの携帯電話の回線契約は、先述の通り2年間の定期契約が主流となっている。しかも契約期間満了後は申し出のない限り「契約更新期間(定期契約の無料解約期間)」を経て自動で更新される。
定期契約プランの登場当初、各キャリアは契約更新期間を「契約満了月の翌月」としていたが、2015年12月の総務大臣要請を受けて、2016年6月から順次、現行の「契約満了月の翌月と翌々月」に改められた。
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しかし、この改定では契約更新月が“後ろ伸ばし”されただけで、契約満了月に解約すると契約解除料(解約金)がかかるという問題は解決しなかった。そこで総務省は2018年6月の行政指導で契約満了月で解約しても解約金を不要とする措置を2018年度内に取るように求めた。
結果、各キャリアともに2018年度内には定期契約の満了月に解約しても解約金がかからないようになる見通しだ。新規契約時に2年契約を結んだとすると、その満了月となる「24カ月目」に解約(定期契約の解除)を行っても解約金がかからなくなる。
「2年ピッタリ、ギリギリまで使い切って解約」がやりやすくなる、ということだ。
ただし、定期契約の自動更新については継続する方向だ。
定期契約とその自動更新については、一部のMVNOが「ユーザーの選択肢を狭めている」と指摘している。また公取委は、これらが行きすぎた場合、独占禁止法に定める「私的独占」や「取引妨害」に当たると指摘している。
しかし、各キャリアは定期更新の自動更新は「ユーザー(契約者)の手続きの手間を省き、不要な月額料金値上げを避けるための措置」であると考えている(参考記事)。公取委が報告書をまとめる過程で行った大手キャリアユーザーに対するアンケートの結果(PDF形式)を見てみると、その主張も一理あると分かる。
定期契約の自動更新を撤廃するには、契約者のリテラシーを高める措置を合わせて検討する必要がありそうだ。
4年縛り:プログラム適用条件から「再加入」を外す
大手キャリアが販売するハイエンドスマートフォンの価格は、ここのところ上昇傾向にある。現行のiPhoneなら、機種変更で買おうとすると「iPhone 8」の64GBモデル以外は軒並み10万円超(税込)の価格設定だ。Androidスマートフォンでも、最新ハイエンド機種だと10万円超(税込)の価格設定も珍しくなくなった。
このようなこともあり、auでは「アップグレードプログラムEX」、ソフトバンクでは「半額サポート」(iPhone向け/Android向け)を提供している。先述の通り、いずれも「端末の48回払い」と「端末の下取り」を組み合わせた機種変更支援プログラムだ。
2年(24カ月)おきに機種変更する前提で考えると、これらのプログラムを活用すれば端末代金が半額で済むことになるため、負担感を大幅に軽減できる。自動車の「残価設定型ローン」のようなものだ。
しかし、これらのプログラムを適用するには機種変更後にプログラムに再加入しなくてはならない。一部のMVNOは、この条項が回線契約とは“別に”契約拘束効果を結果的に生じさせるため是正すべきと訴えてきた(参考記事)。
公取委はこれらのプログラムが消費者の選択権を事実上奪っていると判断できる場合は、独占禁止法に定める「私的独占」や「取引妨害」に相当しうるとした上で、説明の仕方によっては景品表示法に定める「ぎまん的顧客誘引」に当たる可能性を示唆した。
そこでauとソフトバンクでは、プログラム適用条件から「プログラムへの再加入」を除外する。auが「料金計算システムの準備が整い次第」対応する予定で、ソフトバンクは詳細を「追って、きちんと発表」する予定となっている。少しではあるが、プログラムによる「縛り」効果が薄れる見通しだ。
ただ、先に触れた通りこれらのプログラムは自動車の残価設定型ローンと発想はは同じで、価格の高いハイエンドスマホをより買やすくするために用意された選択肢だ。
ハイエンドスマホには、より新しい技術が用いられる傾向にある。それが普及することで、ミドルレンジやローエンド端末のスペックや技術の底上げ効果も期待できる。
そう考えると、これらのプログラムに対していたずらに規制をかけてしまうと、新しい技術の広がりを阻害してしまうことも考えられる。ユーザーの「買いやすさ」と「流動性(事業者の乗り換えやすさ)」のバランスをうまく取るためにはどうしたら良いのか、関係各位がより一段と知恵を出し合う頃合いが来ているのかもしれない。
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