「Apple Watch Series 4」を分解して分かった、「3」との違い:バラして見ずにはいられない
「Apple Watch Series 4 GPS + Cellular」、画面サイズ44mmの分解レポートをお届けする。ウォッチはAppleの実験場といわれているが、今回も見どころ満載。特に大きく変わったのが心拍センサーだ。
2018年9月にAppleが発売した「Apple Watch Series 4」は、通信機能の有無や画面寸法の違いで幾つかのバリエーションが存在する。今回は「Apple Watch Series 4 GPS + Cellular」、画面サイズ44mmの分解レポートをお届けする。ウォッチはAppleの実験場といわれているが、今回も見どころ満載で、考え方によってはiPhoneより興味深いデバイスといえる。
歴代Apple Watchの共通項目
毎年1回、新モデルが発売されるApple Watchは2018年が4年目を迎えた。現在まで引き継がれてきた部品や機能は多い。1つは「Sシリーズ」と呼ばれる独自のプロセッサ。Appleが設計し、韓国SamsungがIC製造を行っているといわれる。ディスプレイは同じく韓国LG Displayのフレキシブル有機EL(OLED)パネルが採用されている。
内部スペースの半分近くを占める振動モーター「Taptic Engine」のメーカーは不明だが、日本のアルプス電気、日本電産、中国の複数メーカーがこの分野のサプライヤーと知られている。
緩やかなカーブを描くデザインも初代から受け継がれている。ディスプレイの上には高級腕時計で採用されている人工サファイアの風防ガラスが採用されており、タッチパネルを使って画面上でさまざまな操作が可能だ。加えて、アナログ時計で時間を合わせる際に使用する竜頭も付いており、これをクルクル回すことでタッチパネルに触れなくても操作可能だ。
心拍センサーも初代から搭載されている。緑色のLEDで毛細血管に光を照射し、カメラのフィルムの役割を果たすフォトダイオードで検出し、心拍として認識する。心拍センサーで取得した情報はApple Watch本体で確認することもできるし、Wi-Fiとワンチップ化されたBluetooth無線を使って情報をiPhoneに転送し、スマートフォン側で確認することも可能だ。
少しずつ大きくなった本体
2017年まで、製品は38mmモデルと42mmモデルの2種類であったが、2018年は40mmと44mmと少し大きくなった。このためディスプレイも少し大きくなり、2017年の42mmモデルでは画面体格寸法が1.65型だったのが、2018年の44mmモデルは1.78型になった。
本体の大型化は、大きなバッテリーを積む上では朗報と思えるのが、なぜかSeries 4のバッテリー容量は291.8mAhで、Series 3の350mAhより減った。それでも、バッテリー稼働時間はSeries 3と同じ18時間なのは興味深い。さまざまな電子部品が省エネ化したのだろう。
電気式心拍センサーを搭載
アメリカ食品医薬品局(FDA)はSeries 4に対し、電気式心拍センサーの医療機器認証を与えた。Series 3まではLEDとフォトダイオードの組み合わせの光学式心拍センサーが装備されていたが、Series 4には電気式が加わった。電気式の方がより精密で不整脈検出などに向いているようだ。センサーは竜頭に触れると作動する。
これに伴ってか、センサーの外観も大きく変化した。初代からApple Watch Series 3までは2個のLEDと2個のフォトダイオードで構成されており、モジュール化は日本のロームが担当していたといわれる。一方、Series 4の心拍センサーは、2個だったLEDが4個になりモジュール中央部に集められた。また赤外線LEDと思われるものが中央に追加された。フォトダイオードは小型になって2個から8個に増え、LEDを囲むように配置された。モジュール化は日本の浜松ホトニクスが担当していると推定される。
心拍センサー機能を維持するだけであれば、これほど大きな改造は不要である。今回の大きな設計変更は、今後より多機能の光学式バイタルセンサーを目指したものと推測される。例えば、入院すると指に洗濯バサミのようなものを付けられることがある。これは光学式バイタルセンサーで、心拍、血圧、血中酸素濃度を測定するためだ。現在は心拍のみだが、将来のApple Watchは血圧なども測定できるようになるかもしれない。
Advanced 911という非常通報機能も加わった。Apple Watchを装着した状態で転倒したり脚立から落ちたりした場合、しばらくたってもユーザーが動かない場合、非常事態と認識して「911(日本では救急の119に相当)」へ自動通報してくれる。
QualcommからIntel製のチップに変更
2018年のApple新製品では、主要チップが米QualcommのICから米Intel製ICへ切り替わった。Apple Watchでも同様で、Siries 4のプロセッサはIntel製となった。注目は通信ICをはじめとする大部分のICが厚さわずか1.2mmの薄い樹脂モジュールに実装された点だ。
特に優れた実装技術として、メインのS4プロセッサは、その上に音楽などを保存するフラッシュメモリと、プロセッサと連動するDRAMを実装しており、3種類のチップが縦に積まれている。これを高さ1.2mmに抑えるのは大きな挑戦だったと思われる。また部品が大型化する傾向にあるといわれる電源ICも、その上に、やはり高さが大きくなりやすい大型の積層セラミックコンデンサーを多数搭載している。
「S4」と書かれているメインボードの外観はApple Watch Series 3とあまり変わらないが、内部では大きな変化が起きている。Apple Watch Series 4は実装技術の粋を集めたものといえる。
世界で最も出荷数の多い医療機器
血糖値計は、年間9000万台から1億台が出荷されており、世界で最も多く出荷されている医療機器である。現在は針を刺して血液を試薬に浸し、それを測定器に入れて血糖値を計っているので、痛みが伴う。しかし針を使わない測定手法が開発されており、これがモバイルに応用されれば、スマートウォッチの出荷数は大幅に増加するだろう。これこそ、Appleが目指すウェアラブル機器の将来像だと筆者は思う。
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