PayPay中山社長インタビュー 「100億円祭り」と「クレカ不正利用問題」が残したもの:モバイル決済の裏側を聞く(1/3 ページ)
「100億円あげちゃうキャンペーン」が大きなインパクトを残した「PayPay」。わずか10日間でキャンペーンが終了したかと思ったら、クレジットカードの不正利用問題も勃発。キャンペーン終了直後に、PayPay中山社長にお話を聞く機会を得た。PayPayはどこに向かうのか?
2018年を振り返って「日本における(QR/コード決済を含む)モバイル決済元年」になったかと問われれば、恐らく「あのタイミングが転換点だった」と後に答える人は少なくないだろうと予想する。テレビをつければ多くのCMが流れ、ニュースでサービスが話題となり、少なくとも「モバイル決済」というキーワードが一般に認知されるきっかけとなったからだ。そう、いま話題の「PayPay」だ。【訂正あり】
今回は、PayPayの中山一郎社長にインタビューの機会を得ることができた。「100億円キャンペーンは『反省点がたくさんある』 PayPay中山社長を直撃」の記事でも触れた通り、インタビューを実施したのは12月14日の午前中。くしくも、世間を騒がせた「100億円あげちゃうキャンペーン」が終了した12月13日直後のタイミングだった。
「100億円あげちゃうキャンペーン」の余波は現在も進行中だが、「もしキャンペーン終了が14日にずれ込んでいたらインタビューの話そのものが流れていたかもしれない」(PayPay広報)ということで、非常に絶妙なタイミングで滑り込めた。
キャンペーンの成果と課題、そして現在進行中の問題から今後の展望まで、考察を交えてまとめていきたい。
PayPayの名前が広まったことが一番の成果
「皆さまにご利用いただいて、全然意図しない形で盛り上がったのが意外でした。SNSでの拡散やメディアの取り上げられ方もそうですが、実際に(わずか10日間で)これほど利用いただいたのが一番の驚きでした」と語るのは、キャンペーンの反響を聞かれての中山氏の回答だ。既にダイジェスト版の記事でも触れているが、想定以上の反響とともに、一般層にまである程度認知されたことに感触を得られたことが一番の成果だったと同氏は考えているようだ。
キャンペーンそのものの告知だけでなく、20%還元に加え、10万円を上限に全額キャッシュバックが一定確率で当たる仕掛けが用意され、その結果がすぐに決済画面に反映される。これを次々とユーザーがSNSにアップロードすることで、「自分もやってみたい」というユーザーが次々と飛びつく……という循環が生まれた。
中山氏は「意図してやったものではありません。仮にそうだとしても、ユーザーは賢いのでこちらの意図が読まれると盛り上がりません」と述べているが、ある意味でSNS時代のキャンペーン展開を知り尽くした仕掛けが、さらなる盛り上がりに拍車を掛けたといえる。
同氏はキャンペーン期間中に数度あったシステム障害を含め「いろいろ反省点がある」と述べ、キャンペーンそのもの成果よりも、むしろユーザーが使いやすく、安定したサービスを構築することが主眼にあると強調する。
「細かい点を挙げると、例えばアプリの字が非常に小さく、僕自身の目で見ても見づらい。こうした点も含め、いろいろ改善の余地があります。このように皆さんの声をしっかりと聞いて改善していきたいと思います。これがインターネットサービスのいいところでもあると考えています。サービス障害についても本当にご迷惑をおかけして申し訳なかったと思うし、これを改善していかないとサービスはよくならない。本当に真摯(しんし)に改善を進めています」と中山氏は言う。
実際、キャンペーン終了の13日夜もスタッフが集まって深夜2時までミーティングを開き、改善点の列挙を含めた反省会を行っていたという。この他、表に出てこなかった問題は諸処あり、これらを日々改善しながらサービスを継続することがPayPayの命題とする。
「準備不足」「見切り発車」の面も
中山氏を含め、PayPayに関わる人々にここ数カ月ほどヒアリングを続けて抱いたのは、短期間でサービスインにこぎ着けたという「驚き」と、つねに走りながら何かを考え実行する「疾走感」の2つだ。
PayPayが発表されたのは2018年7月末。実際には春頃からソフトバンクとヤフーの2社のスタッフが集まる形で「製品名が決まる前のサービスのようなもの」が存在する状態から加盟店開拓の営業がスタートし、9月のAlipayとの提携発表、10月5日のサービスイン、そして12月の100億円キャンペーンと、いくつかの波を経験してきている。
サービス開発期間も半年ほどで、やはり提携先であるインドのPaytm(ペイティーエム)の技術者が来日してノウハウをつぎ込むことで短期間で形が出来上がり、10月のサービス開始に間に合わせることができた。「加盟店は10月のサービス開始で参加してくれた方も含め、キャンペーンを通じてさらに認知が広がったと思う」(中山氏)ということで、サービスを作りながら営業を行い、それを使うユーザーが増えることで認知を広げて営業のツールとする……という流れで、ユーザーと加盟店の双方を同時に攻略する。
一方で資金や人的リソースは豊富なものの、システム障害なども含め対応が全然追い付いておらず、「準備不足」「見切り発車」という面が見られるのも確かだ。筆者がヒアリングしている範囲で、PayPayのアプリでは「この店舗で使える」という表示が出ているにもかかわらず、実際に来店してみると利用できないというケースが少なからず存在する。
PayPay側の説明によれば、加盟店契約に同意してQRキットを発送した段階でPayPayアプリの地図にはピンが表示されるが、実際に設置するかは店舗側の判断に委ねられるため、同社でも問題を把握しているという。
「全ては僕らの説明不足」と中山氏は言うが、PayPayでは営業部隊だけでなく、丁寧に説明とサポートを行う「開通専門部隊」も稼働。キットが発送されたにもかかわらず何日も利用がない店舗に対してプッシュを行い(オンラインで利用状況は把握できるため)、この「未開通」のタイムラグを今後は減らす意向だという。
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