行政からのメスで「料金」が焦点に/苦戦を強いられるMVNO――2018年のモバイル業界を振り返る:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
2018年は、モバイル業界に行政からのメスが入った1年だったと総括できる。2017年から徐々に勢いを落としていたMVNOについては、LINEモバイルがソフトバンク傘下に入るなど、合従連衡の動きがさらに強まった。端末を見ると、Huaweiの躍進やOPPOの新規参入に沸いた1年だった。
LINEモバイルがソフトバンク傘下に、MVNOは苦戦を強いられる
キャリアが分離プランを導入し、部分的にだが料金を下げている中、あおりを受けているのがMVNOだ。2017年はFREETELのMVNO部門を楽天が買収、その後、プラスワン・マーケティング社自体が破綻するなど、大きな動きがあったMVNO業界だが、実際、契約者の伸び率は徐々に落ちてきているようだ。調査会社MM総研が発表したデータによると、2019年9月末時点で、独自SIM型の契約者数は1202.7万回線にのぼったが、前年同期比で見ると、伸び率は1.6%から1.3%へと鈍化している。
また、上位の事業者を見渡すと、KDDIやソフトバンクの関連会社が目立ってきた。UQコミュニケーションズの展開するUQ mobileが大きくシェアを伸ばしている他、KDDI傘下になったBIGLOBEもシェア6位をキープ。シェア1位の楽天モバイルが2019年からMNOとして新規参入することを踏まえると、上位6社のうち、3社がMNOの関連会社という形になる。残った2社も、NTTグループのNTTコミュニケーションズとIIJで、ケイ・オプティコムも固定網で実績のある会社。結果として、餅は餅屋といえそうなシェアになりつつある。
さらに、3月からはLINEモバイルがソフトバンク傘下に入り、Y!mobileに次ぐもう1つのサブブランドと位置付けられた。ソフトバンク側は、Y!mobileよりもリアルな店舗が少ない半面、料金が安く、特定サービスの通信をカウントから除外する「データフリー」を実施しているなど、差別化が十分図れていると踏んだようだ。知名度の高いLINEのブランドを使い、ネットを通じてユーザーにリーチできているのも、ソフトバンクにとっては魅力的に見えたという。
ソフトバンク傘下に入ったLINEモバイルは、7月にソフトバンクから回線を借り、マルチキャリアMVNOとしてサービスを展開。「順調に伸び、スタートしたときの3倍ぐらいの伸びになった」(ソフトバンクの宮内謙社長)と、シナジー効果が出ていることがうかがえる。ソフトバンクとLINEモバイルの双方にとってメリットがあった提携といえそうだが、MVNO市場全体を見たときに、やはり淘汰(とうた)が進んでいる印象を強く与えた。サブブランド以外の独立系MVNOがどう生き残っていくのかは、今後の課題といえそうだ。
明るい兆しとしては、IIJが加入者管理機能(HLR/HSS)を持ち、フルMVNOとしてサービスを始めたことが挙げられる。現時点では法人向けの回線が中心だが、個人ユーザーへの提供も予定している。また、フルMVNOになったことで、eSIMのプラットフォームを運用できるようになった。GSMAの標準に準拠したeSIMは、「iPhone XS」「XS Max」「XR」にも採用され、世界各国で続々と対応キャリアも広がっている。ユーザーの契約スタイルが変わるだけに、注目しておきたい動きだ。
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