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3キャリアが「解約金なし」期間を3カ月に その背景と業界に与える影響は?石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、いわゆる“2年縛り”で解約金の必要なく解約できる期間を、従来の2カ月から3カ月に変更する。なぜ各社がそろって2年縛りの無料解除期間を2カ月から3カ月に延長したのか。背景には、総務省の方針がある。

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緊急提言を受け、2年契約にはさらなる改定が入る可能性も

 一方で、2年契約については、さらなる見直しを余儀なくされる可能性もある。総務省が2018年11月に発表した「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」では、分離プランの導入が求められた他、2年契約などの期間拘束についても「多くの関係者及び構成員が共通して指摘した以下の期間拘束については、見直すことが適当である」とされている。

2年縛り
2年縛り
「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」では、期間拘束に対するさらなる改善を求められた

 緊急提言にある「以下の期間拘束」とは、次の3点を指す。

 1つ目が、期間拘束のないプランが、期間拘束のあるプランより「著しく劣り、実質的な選択肢となっておらず、それについての合理的な理由がない場合」の是正だ。2年契約なしのプランを新規契約時に選択すると、料金差が3社とも1500円になるが、これについては有識者の一部も問題視していた。

 2つ目が、違約金の水準だ。緊急提言では「違約金の水準が著しく高い場合には、スイッチングコストにより利用者を過度に拘束し、事業者間の公平な競争を阻害する」と記載されていることから、9500円という金額が妥当かどうかは焦点になりそうだ。9500円の解除料にどこまで拘束する力があるかの算出は難しいところだが、拘束性を低くするという点では、一部MVNOが最低利用期間の違約金として定めている、契約期間に応じて段階的に解除料が下がる仕組みなどが必要になるかもしれない。

 3点目が、自動更新の有無を契約当初から決められるようにするというもの。「変化の激しいモバイル分野で、拘束期間終了後の更新の要否を契約当初の段階で判断することは困難である一方で、更新手続きの手間の省略を求めるユーザーもいる」というのがその理由だ。

2年縛り
2年縛り
2年縛り
2年縛り
左が事業者、右が総務省の意見。3キャリアとも、パブリックコメントで期間拘束の見直しに対して参考意見や反対意見を述べているが、総務省も譲らない様子。これまで以上に、キャリアにとって厳しい対応が求められそうだ

 いったんは無料解約可能な期間を3カ月にすることを受け入れた総務省が、わずか数カ月、しかもキャリアが実際の料金プランに落とし込む前に追加で対応を迫るのは理解に苦しむが、緊急提言は官邸主導の色合いが濃いといわれる。そのため、総務省で積み重ねられてきた議論の流れを、必ずしも踏まえていないような印象も受ける。結果として政治に振り回される格好になったキャリア各社だが、監督官庁の打ち出した方針であるだけに従わざるを得ないだろう。

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