3キャリアが「解約金なし」期間を3カ月に その背景と業界に与える影響は?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、いわゆる“2年縛り”で解約金の必要なく解約できる期間を、従来の2カ月から3カ月に変更する。なぜ各社がそろって2年縛りの無料解除期間を2カ月から3カ月に延長したのか。背景には、総務省の方針がある。
解約率の増加を招く一方で、大きな変化は起きない可能性も
実際に、こうした提言をどのようなプランに落とし込んでいくのかは未知数だが、より2年契約は解除しやすい方向になることは間違いないだろう。同時に緊急提言では、料金プランのシンプル化や公平化も求めており、3社とも、抜本的に料金体系を改定せざるを得なくなる可能性もある。
その結果、少なくとも3社の解約率が今より下がることはないだろう。より縛りの少ないMVNOに近い水準まで上がる可能性もある。ただし、MVNOも音声プランに限ると解約率が1%を下回っている会社もある。例えば、LINEモバイルの嘉戸彩乃社長は、2018年3月に開催された「モバイルフォーラム」で、2017年の平均解約率が0.92%であることを明かしていた。ドコモと比べるとやや高い水準ではあるが、auやソフトバンクとは大きな差はない。
LINEモバイルの音声プランには、1年間の最低利用期間が設けられているが、それ以降はいつでも無料で解約できるため、2年間で自動更新のある大手キャリアよりも縛りは緩やかだ。料金プランやサービスに対して満足度を高められれば、2年契約が大幅に緩和されても、大きな影響はなさそうだ。
また、大手キャリアは端末を24回や48回の割賦で販売しているが、これもユーザーを拘束する方向に力が働く。SIMロックを解除すれば他社でも同じ端末を使えるとはいえ、残債を払ってまで他社に移るのは、それなりの負担になるからだ。緊急提言では、auの「アップグレードプログラム」や、ソフトバンクの「半額サポート」に対する見直しを迫っているが、割賦販売そのものが否定されたわけではない。
ただし、先に述べた通り、緊急提言ではいわゆる2年縛りだけでなく、分離プランの導入をはじめとした、包括的な料金体形の見直しをキャリアに求めている。ふたを開けてみれば、端末メーカーや販売代理店など、キャリアを取り巻くプレイヤーの方が受ける影響が大きくなる可能性もある。「4割」といわれていた料金値下げが実現すれば、“格安”を売りにしていたMVNOにとっても向かい風になりかねない。あくまで筆者の私見だが、分離プランの導入や料金体系の見直しの方が、期間拘束以上に業界に与える影響が大きくなりそうだ。
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