総務省の研究会を傍聴して抱く「時代遅れ感」――5GやIoT時代を見据えた議論は期待できないのか:石川温のスマホ業界新聞
総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の議論が進んでいる。有識者の中には「こんな議論でいいのか」という声を挙げる人もいるのだが、それがスルーされる所が厄介。これからIoTや5Gの時代だというのに、本当に「これでいいのだろうか」。
総務省の研究会を傍聴していると「これから5G時代になろうとしているのに、なんて時代遅れの議論をしているのか」とつくづく呆れてしまう。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年1月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
ただ、有識者の中には「5GやIoT時代に向けて、こんな議論でいいのか」という意見を投げかけて人もいる。だが、そうした視点の発言が深掘りして議論されることなく、スルーされてしまうのが、この検討会の厄介なところなのだ。
例えば、ある有識者は「接続料はこのまま10Mbps単位でいいのかわからない。5Gは接続形態自体が変わっていく。そうした視点を持つべき」と発言していた。
高速大容量になることで、接続料の単位などの見直しが必要なるのは間違いない。また、5G時代にはMEC(モバイルエッジコンピューティング)により、キャリアのネットワークに直接、接続したりしなかったりという接続形態が出てくる可能性もある。
来年から5Gが始まるというのに、5G時代を懸念する発言は出ても、議論が展開することはない。
また、総務省ではセルラーLPWAでも接続料をきっちりと決めようという議論をしようとしているが、キャリアからは「そんなの意味がない」という反発の声が出ている。
確かに、IoT向け通信において、そもそも通信料金で稼ぐというビジネスは存在しないに等しい。IoT通信は、格安スマホと同じように「MVNOはMNOより、安い通信料金」というビジネスモデルはありえないのではないか。そもそも、IoT向け通信料金は安いのだから、MVNOが安価な料金でMNOに戦いを挑むのは無理がある。
いかにソリューションを考え、システム全体で稼いでいくかが、IoTビジネスの肝であるにも関わらず、総務省では環境を整備しようと「接続料」という視点でしか、業界を捉えていないのがあまりにナンセンスだ。
有識者からは「端末の数で契約シェアを考えるのは無理がある。iPhoneのようにカードを差し替えれば様々な電波に対応する端末がある。また、eSIMによって、ひとつの端末で複数の契約を書き込めるものもある。4Gと5Gが両方使える端末はどうカウントすべきか。様々な問題を包含している」と指摘する声もあった。
総務省は契約者数などでシェアを算出し、二種指定などをしようとしていたりする。しかし、5GやIoT時代においては、もはや端末の台数や契約数なども意味をなさない数字になるだろう。
スピードの速い通信業界に、総務省の議論は全く追いつけていない。先の読めない総務省に、通信業界の未来を委ねてしまっていいのだろうか。本当に心配でならない。
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