リユースモバイル(中古スマホ)市場の活性化に向けて前進?――新品が売れなくなることで、中古スマホ市場は縮小しないのか:石川温のスマホ業界新聞
3月14日、「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第10回会合が開かれた。この回はリユースモバイル(中古携帯端末)関連のヒアリングが行われたが、総務省の政策によって中古端末の供給に不安が出る可能性がある。
3月14日、総務省で「モバイル市場の競争環境に関する研究会(第10回)」が開催された。そのなかで、「リユースモバイル関連ガイドライン検討会」について、中古スマホの業界団体であるリユースモバイル・ジャパンがプレゼンを行った。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年3月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
中古スマホ市場を活性化させようと、中古スマホを取り扱う企業群が業界団体を結成し、買取基準を設けたりなどのガイドラインを作成していくというのは理解できる。そもそも、使っていたスマホを買い取ってもらえる、あるいは中古のスマホが流通していることすら知らない人もいるほどだ。そうした人に向けて認知を広げ、普及活動していくのは当然のことだろう。
しかし、総務省がわざわざ有識者会議で取り上げ、中古スマホ市場の流通を促進させようとしていることが理解できない。
総務省としては、電気通信事業法の一部を改正し、端末販売において、完全分離プランを導入させようとしている。完全分離プランが導入されたら何が起こるか。
スマホが売れなくなり、撤退するスマホメーカーも出てくることだろう。2007年頃に販売奨励金にメスが入り、官製不況(通称、谷脇不況)となったが、まさに同じ事が起ころうとしている。
有識者会議でも、はっきりと「スマホの販売台数が2〜3割、落ちるのではないか」と指摘している。
ここで大きな矛盾が生じていることに、総務省は気がついているのだろうか。
そもそも、ユーザーが新品に買い換えた時に、下取りや買取業者に今使っているスマホを売りに出すことで、中古スマホが誕生する。
つまり、新品が売れないことには、中古スマホが世に出てこないというわけだ。
完全分離プランが導入され、スマホの販売台数が2〜3割、落ちるのであれば、結果として、中古スマホ市場も、いまから2〜3割、縮小することになる。
なぜ、新品が売れず、中古スマホ市場に端末が流入してこなくなるにも関わらず、中古スマホ市場が活性化できるのか理解できない。
中古スマホ市場に流通する端末の台数が減るということは、すなわち、端末価格は需要に見合わず、高騰化していくことになるだろう。本来ならば「新品が高いから、安い中古を買う」というはずなのに「新品は高い。でも中古もそれなりの値段がする」ということになるだろう。
中古スマホ市場を本気で盛り上げたいのならば、もっと手軽に、新品に買い変えられる環境でなくてはならない。
これまではキャッシュバックなどがあったからこそ、中古スマホ市場に端末が流れてきたわけで、なぜ、総務省はこうした矛盾から目を背けてばかりいるのだろうか。
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