「まずはポイントを動かしてほしい」 KDDIに聞く、スマホ決済「au PAY」の狙い:モバイル決済の裏側を聞く(3/3 ページ)
KDDIのコード決済「au PAY」が4月9日にスタートした。コード決済は、「PayPay」「d払い」「LINE Pay」「楽天ペイ」など競合がひしめく中で、KDDIはどのような戦略で臨むのか。KDDI ライフデザイン事業本部 新規ビジネス推進本部 副本部長の中井武志氏に話を聞いた。
手数料での収益は考えていない
―― キャンペーンでそれなりの投資をしていますが、ビジネスモデルはどうなるのでしょうか。
中井氏 今回のキャンペーンによる事業影響は織り込んでいます。まずは使っていただける環境をしっかり作っていくことをベースに考えています。auフィナンシャルホールディングスも設立しましたが、弊社の特徴は、別の金融サービスにつながりを持てるところが大きいと思っています。Walletアプリからの連携も簡単にできます。
―― 収益はローンや資産運用のサービスも含めてということですね。手数料で収益を上げることは……。
中井氏 今は考えていないですね。
―― キャッシュレス推進協議会を中心に、コード決済の仕様を統一化する動きも出ていますが、このあたりにはどう関わっていきますか?
中井氏 当社も参加しているので、ユーザーが提示する形のものは、決まった仕様に準拠しています。ユーザーの操作が複雑、煩雑になるのはよくないことは、基本思想として持っています。
―― 決済サービスが乱立している中で、ユーザーと加盟店がau PAYを使うメリットをあらためて教えてください。
中井氏 たまったWalletポイントを見て、お得にチャージをする経験をしていただけるとうれしい。今回はキャンペーンもあるので、コード決済を使っていただけるとありがたいですが、それ以外の手法もあるので、これを機にスマホ決済が便利だと思っていただけるとうれしい。
お店側にとっては手数料の話もありますし、使っていただいて、お客さまが来ていただける部分が重要だと思います。三太郎の日に20%増量するという話が強調されていますが、それ以外の日でも、スマートパスのクーポンとの合わせ技で送客することもできます。こうした会員基盤の重ね合わせは、加盟店様にとってもメリットがあると思います。
取材を終えて:継続して使える仕組み作りが重要
中井氏が強調していたのは「まずは1回使ってみてほしい」「ポイントを動かしてほしい」という点。4月4日の発表会では、auユーザーが1000億円以上のau WALLET ポイントをため込んでいることが明かされ、1000ポイント以上をためている人は1400万人超、1万ポイント以上をためている人は約100万人いるという。
ただ、1000ポイントや1万ポイントは、日常的に買い物をすれば、すぐに使い切ってしまう額だ。今持っているポイントを使い切った後でも継続して使ってもらえる仕組み作りが重要だ。auかんたん決済を活用したオートチャージはその1つの手法だが、それだけなら、よりお得な大型キャンペーンを展開している「PayPay」や「LINE Pay」の方がいい、と思う人も多そうだ。
筆者は「auピタットプラン」に契約しているライトユーザーだが、au STARロイヤル 長期優待ポイントは毎月40ポイントしかたまらず、(しばらくポイントを使った記憶がないが)現在も460ポイントしかたまっていない。このように、ライトユーザーに対してどう訴求するかも課題といえる。
KDDIでは、Apple Payを介したau WALLETの決済と、au PAYを介した同決済をまとめて「スマホ決済」と呼んでいるが、アプリからワンタップで支払えるau PAYは、Apple Payよりも圧倒的に利用ハードルが低いことは確かだ。ここに昨今のスマホ決済ブームとの相乗効果で、au PAYが一気に使われる可能性はある。まずはauユーザーの動向やKDDIのかじ取りを注視したい。
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