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「世界にすぐに追いつける」が「盛り上がるまで数年かかる」――日本における5Gの展望新経済サミット TOKYO 2019(2/2 ページ)

楽天の三木谷浩史社長が代表理事を務める新経済連盟が、6月20日に「新経済サミット(NEST) TOKYO 2019」を開催。ITジャーナリストの石川温氏と楽天モバイルのタレック・アミンCTOが登壇し、日本における5Gの展開について語った。

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日本はシリコンバレーになる可能性がある

アミン氏
楽天モバイルのアミンCTO

 楽天モバイルのアミンCTOは、同社の取り組みを紹介した。アミン氏は米国やインドの先進的な通信会社で働いてきたが、同社での経験はそれ以上に「心躍る体験」だと語る。

 アミン氏いわく、親会社の楽天はテレコム(通信)の会社ではないことがアドバンテージだという。MNO(自ら設備を持つモバイル通信事業者)となるべく準備を進めている楽天モバイルは、従来の通信キャリアとは異なり、完全に仮想化と自動化がなされたネットワークで顧客中心のサービスを提供するとしている(参考記事)。

 根本的に異なるのはクラウドネイティブであること。失敗を恐れず「小さく失敗して速く学んでいく」という企業文化の違いも大きいと述べた。

 アミン氏は、5Gによって世界の電気通信業界に新しい変化が起こる可能性があるとも語る。そのためには「根本的な変革」と「基礎となるアーキテクチャ」が必要になる。従来型のネットワークアーキテクチャは非常に複雑だが、楽天モバイルはそれをシンプルにし、ハードウェアとソフトウェアを分け、ソフトウェア中心の考えのもと仮想化しているという。

 「クラウドネイティブなネットワークでないと真の意味で5Gではない」との立場だ。5Gにおいて高速大容量よりも重要なのは「低遅延」と、各企業やさまざまなセグメントへサービスを提供する「ネットワークスライシング」だとも語った。

楽天モバイルのオペレーティングモデル
楽天モバイルのクラウドネイティブなオペレーティングモデル

 また、アミン氏は日本はシリコンバレーになる可能性があると断言し、5Gで遅れを取っていることを心配する必要はないとアドバイスする。また楽天モバイルは日本のユーザーに、クラウドネイティブネットワークによる、より良い価格設定、より良いサービス、破壊的なイノベーションを提供したいと意気込みを語った。

セゲブ氏
TexelのセゲブCEO

 Texelのアミール・セゲブCEOは、膨大なデータ量を必要とするVRとAR(拡張現実)で、5Gを活用して自然なやり取りが可能な次世代のコミュニケーションを提供すると語り、楽天の新しいアーキテクチャでユニークなサービスを提供できると期待を語った。

5Gが盛り上がるには「数年かかる」

 トークセッションでは、5Gに期待することが話し合われた。

 セゲブ氏はVRやARが浸透するために、5Gでは接続性が重要と指摘。屋内、屋外どこでもARやVRが利用可能になることはモバイルサービスの民主化につながり、データの消費の仕方が変わると述べた。また、5Gが成功するために、カバレッジとエッジコンピューティングに期待していると語った。

 アミン氏もエッジコンピューティングは「儲かるビジネスにできる」と期待。没入できることが大事なVR/ARサービスや、リアルタイムなレスポンスが必須のゲームにエッジコンピューティングが必要なのはもちろん、未開拓な分野もあり、エッジコンピューティングを活用する革新的なスタートアップが登場してくると思うと語った。

 その一方で、「5Gのビジネスが盛り上がる時期はいつか」という石川氏の質問に対し、アミン氏は「3Gや4Gのときと同様、数年かかる」と返答。「日本で5Gは2020年にノンスタンドアローン(NSA)で提供されるが、イノベーションは恐らく緩慢になる。5Gのフル機能を提供するには、端末もインフラもスタンドアローン(SA)をサポートする必要がある。高品質なカバレッジも必要で、魔法のような進化はない。高速通信も重要だが、それだけでなく、ベンダーが5Gの特徴を生かした新しいアプリケーションを開発することで5Gのビジネスが盛り上がる可能性がある」と語った。

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