楽天の完全仮想化ネットワークは「あと2カ月でできると証明する」 三木谷氏が見せる自信:Rakuten Optimism
7月31日に開幕した楽天のイベント「Rakuten Optimism」で、三木谷浩史会長兼社長がオープニングキーノートに登壇。2019年10月に参入するキャリア事業や5Gについて、楽天の展望を語った。ネットワークの仮想化や、MECを活用するメリットが主なトピック。
7月31日に開幕した楽天のイベント「Rakuten Optimism」で、三木谷浩史会長兼社長がオープニングキーノートに登壇。2019年10月に参入するキャリア事業や5Gについての展望を語った。
三木谷氏は、楽天が創業した当時、1997年のインターネットは28.8kbpsが最大通信速度だった。それが5Gで1Gbpsを超える速度を出せることで、約20年で一気に100万倍の高速化を果たした。「人力車から新幹線、ジェット機になるかのように、情報通信網が大きく進化した」と同氏。超高速通信だけでなく、進化した多様なデバイスや人工知能なども取り込むことで、「社会構造が抜本的に変化する」「言葉の壁も、人工知能によって飛び越えてしまうかもしれない」「国の定義も大きく変わるかもしれない」と期待を寄せる。
中でも直近で注目を集めているのが、2019年10月に参入予定の携帯キャリア事業だ。通信事業を手掛ける楽天モバイルは、現在はMVNOとしてサービスを提供しているが、「自分たちの技術的なブレークスルーを反映できない」と三木谷氏は課題を話す。また日本の携帯料金は高く、サービスの進化はほとんどないとも指摘し、「大きな殴り込みを掛ける」と同氏。「われわれがやろうとしている根本的な発想は、モバイルネットワークの民主化。安価にして速度を上げたい」と意気込む。
既に多くの場で語られているが、楽天が開発しているのが、完全仮想化のネットワークだ。「仮想化をすれば、ハードウェアは変えず、ソフトウェアを変えるだけで新しいことができる。ネットワークやサービスの柔軟性が増し、投資金額を抑制し、メンテナンス費を大幅に下げられる」と三木谷氏はメリットを話す。
完全仮想化ネットワークについては、海外キャリアから懐疑的な目を向けられていたが、最近は見る目が変わり、世界最大手キャリアのCEOから「ちょっと話がしたい。実現したらすごいことになる」と興味を持たれていることも明かす。「iPhoneがデバイス上の革命なら、楽天は車(デバイス)ではなく道路自体(ネットワーク)に革命を起こす。あと2カ月でできることを世の中に証明する」と三木谷氏は自信を見せる。
5Gについては「モバイルエッジコンピューティング(MEC)」にも着目する。MECでは、端末の近く(基地局側)にエッジサーバを置くことで、従来のクラウドサーバやインターネットを介さずに、より低遅延な通信が可能になる。「楽天モバイルでは、4000以上のエッジサーバを置いている。2〜5キロぐらい(ごと)に、大規模なコンピュータがあると思っていい」と三木谷氏は話す。
MECのメリットとして、音声認識がより高速になることを一例に挙げる。この他、これまではスマホが担っていた高負荷の処理をエッジサーバが担うことで、より快適に、リッチなコンテンツを楽しめるようになる。10年以内には実現するといわれている自動運転の世界でも、エッジコンピューティングは大きなカギを握ると三木谷氏はみる。
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