Appleとの“和解”の効果は? 日本の5Gって遅れてない? Qualcommアモン社長の答え
スマートフォン向けのチップセットやモデムを手がける米Qualcomm(クアルコム)のクリスティアーノ・アモン社長が来日。日本の報道関係者に5G(第5世代移動体通信システム)における同社の役割を説明した。この記事では、説明会での質疑応答の模様を簡単にお伝えする。
LTE(Long Term Evolution)に次ぐ新たな通信規格である「5G」。韓国や欧米では商用サービスが始まり、日本でもその前段階である「プレサービス」が順次始まっている。特にNTTドコモが9月20日から開始するものは、商用サービス時と同様の環境で提供されることから注目を集めている。
- →フジロックでソフトバンクの「5Gプレサービス」を体験 XperiaとAQUOSの5Gスマホもチェック
- →ドコモが「5Gプレサービス」対応端末を披露 スマホ3機種とルーター1機種
- →プレサービスだけど“本格的な5G”を開始 ドコモ吉澤社長が語る5G戦略
そんな中、スマートフォンやタブレット向けのプロセッサやモデム(通信チップ)を提供する米Qualcommのクリスティアーノ・アモン社長が来日。日本の報道関係者に5Gの近況を説明した。
この記事では、説明会における質疑応答の中から、興味深いやりとりをご紹介する。
米国におけるAppleとの訴訟で和解に至った件について
Qualcommは、スマートフォン向けのモデムやチップセットにおいて大きなシェアを持つ。その顧客には米Appleも含まれており、iPhoneのモデル(仕向け先)によってはQualcommのモデムを採用していた。
ところが2017年1月、特許ライセンス料を巡りAppleはQualcommを提訴し、Qualcommも同年3月にAppleを反訴。ある意味での「訴訟合戦」となった。
しかし2019年4月16日、両社は和解に至り、6年間のライセンス契約を結ぶことになった。この和解は、iPhoneやiPadの5G対応を進める上で不可避だったという見方が強い。
今回の説明会では、Appleとの関係について質疑があった。
―― 少し前にAppleと「仲直り」しました。少し話しにくいかもしれませんが、どのような経緯があり、これがモバイル通信業界に与える影響を与えるのか教えてください。
アモン社長 良い質問ですね。
Appleとの和解については、Qualcommが提供する価値やビジネスを理解して頂いた結果、このような合意に至ったものと考えています。業界全体にとっても、良いことだと思います。
モバイル通信業界におけるリーダーである両社が仕事をすることは自然なことだと思います。Appleとは複数年のライセンス契約も合意しましたし、私たちのチップを使って、Appleから5G製品が出てくるのを楽しみにしています。
間もなく登場する2019年のiPhoneは5Gに対応していないが、2020年のiPhoneではQualcommのモデムによって5G対応が行われる可能性がありそうだ。
日本における5G商用サービス展開が遅いとされる件
先述の通り、5Gの商用サービスは既に欧米や韓国で始まっている。9月20日からドコモが始めるプレサービスは商用サービスと同じシステムで行うものだが、あくまでも“プレ”サービスであり、一般ユーザーが契約できるサービスではない。
このことから「日本は5Gで出遅れているのでは?」という指摘が多くなされており、それを懸念する声がさまざまな場面で聞かれる。
今回の説明会でも、日本における5Gへの歩みについて質問があった。
―― 5Gのグローバルにおけるローンチ(規格策定作業や商用化への過程)を1年程度前倒したという話がありました。日本では明日(9月20日)からドコモが商用システムベースでプレサービスを開始しますが、(本格的な)商用サービスは2020年春からで、世界から見ると遅れている状態ともいえます。このことについて、アモン社長はどのように考えているか、見解を聞かせてください。
アモン社長 日本においてプレサービスが始まることは大変喜ばしいことです。
日本を見てみると、(商用サービスに向けた)5G用周波数帯域の割り当てが既に明確な形で行われています(参考記事)。一方で、ヨーロッパの一部ではまだ(5G用帯域の)割り当てが完了していませんし、(すでに商用サービスが始まっている)米国でも一部にそのような状況があります。
私は(日本での)プレサービス開始に興奮していますし。2020年のオリンピック(夏)を待たずに試していただくことで、市場が(おのずと)5Gを求めるようになると思います。
アモン社長としては、5Gで使う周波数帯域が明確に決まっている点が日本のアドバンテージであると考えているようだ。
関連記事
- 5Gの「それって4Gで良くない?」問題 Qualcommの回答は?
国内外で商用サービス開始の動きが本格化し始めた「5G」だが、そのユースケースを見ていると「それって4G(LTE)でもできるよね?」ということも少なくない。5Gモデムなどを端末メーカーに供給する米Qualcommの「中の人」は、そのような疑問にどのように答えるのだろうか。 - ドコモが「5Gプレサービス」対応端末を披露 スマホ3機種とルーター1機種
NTTドコモが、9月20日から開始する5Gプレサービス用のスマートフォンとルーターを披露した。一部を除き「Sub-6」「ミリ波」両方の通信に対応するが、あくまでもプレサービス用という位置付けで市販される予定はない。【追記】 - プレサービスだけど“本格的な5G”を開始 ドコモ吉澤社長が語る5G戦略
NTTドコモが9月20日に「5Gプレサービス」を開始する。商用サービスと同じネットワーク環境でサービスを提供するのが特徴。同社は9月18日に発表会を開催し、吉澤和弘社長が、あらためて5Gに対する取り組みの意気込みを語った。 - フジロックでソフトバンクの「5Gプレサービス」を体験 XperiaとAQUOSの5Gスマホもチェック
ソフトバンクが、フジロックで5Gのプレサービスを実施した。商用サービスとは周波数帯が異なり、コアネットワークもプレサービス専用のものだったが、来場者は5Gを通して配信された映像やVRコンテンツを楽しむことができた。5G電波の送受信に使うスマートフォンも披露された。 - 「日本は5Gで遅れている」という指摘 実際はどう? IDCの予測から考える
日本における5Gは、主要な国・地域と比べて遅れているという指摘を少なからず耳にする。それは果たしてどこまで真実なのだろうか。海外に広いネットワークを持つ調査会社の調査レポートを交えつつ解説する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.