愚直に“便利とお得”を追求 ファミリーマートが「FamiPay」を始めた理由:モバイル決済の裏側を聞く(1/3 ページ)
「ファミペイ」アプリが、開始1カ月で300万ダウンロードを突破するなど好調だ。ファミリーマートは既に他社の決済サービスを提供しているが、なぜ自社で新たな決済サービスを提供することにしたのか。競合他社のキャンペーン施策にはどのように対抗していくのか。
2019年7月1日にスタートしたファミリーマートの決済機能「FamiPay」を利用できるアプリ「ファミペイ」が、開始1カ月で300万ダウンロードを突破するなど好調だ。
既に過当競争も指摘される中での参入となったが、相応の勝算と実績を掲げてその存在をアピールする。QRコードやバーコードなど、スマートフォン上のアプリでこれら仕組みを利用して決済を行う、いわゆる「コード決済」と呼ばれる分野での流通業界からの参入としては、FamiPayが実質的に最後といえる。
実際にどのような形で市場を考え、今後どのようにサービスを発展させようとしているのか。ファミリーマートのシニアオフィサーで経営企画本部デジタル戦略部長の植野大輔氏にうかがった。
“真のFamiPay”は11月にやってくる
FamiPayに対する最初の印象は「スモールスタート」だった。初期設定はSMSで端末認証を使い、入力する情報はポイントカード登録などで求められる必要最低限のもの。登録できるクレジットカードは「ファミマTカード」だけ。それでいて、決済やクーポン配信、収納代行などのコンビニで利用されるような基本的な機能は備えている。言い方を変えれば「非常にシンプルな作り」だ。
植野氏によれば、ファミペイの企画が立ち上がったのが2018年8月で、同氏が率いるデジタル戦略部が設立されてプロジェクトが本格スタートしたのが10月だったという。その最初期にファミペイアプリの基本デザインができたが、最新のものと比較して、その当時から驚くほどにユーザーインタフェースに違いがないという。
つまり、アプリの基本構想をしっかりとデザインし、さまざまな意見を通わせる中でブラッシュアップさせていったというわけだ。前述のようにFamiPayは○○Payとしては最後発になるが、逆にそれが他社サービスを研究する余地も与えている。コンビニ各社で最初にコード決済を採用したのはファミリーマートだが、オペレーション上の問題の洗い出しやスタッフ教育、他社がキャンペーンを実施した際の顧客の導線まで、全部分かった上で設計できたと同氏は説明する。
FamiPayは登場時点で荒削りな印象はなく、最初から「完成していた」という印象も抱いていたが、「7月のリリースはあくまでプレローンチ」だと植野氏はいう。本番は2019年11月にスタートする「dポイント」「楽天ポイント」との連携で、既に対応している「Tポイント」と合わせ、3つのポイントがカード提示から決済までワンストップで行えるようになる。
あらかじめアプリ内でどのポイントカードを利用するかを指定しておけば、後はFamiPayの決済用バーコードを出しておくだけで1回のスキャンで処理が完了する。ポイント連携する決済サービスは多いが、「1回のスキャンで複数のポイントを同時に扱える決済サービスはFamiPayが唯一だ」と植野氏は胸を張る。
実際に決済を受ける側であるリアル店舗を運営する事業者ならではの仕掛けだといえるが、ファミペイがそこまでポイントカードにこだわるのは理由がある。「多くの○○Payが出てきていますが、実際に店頭で利用される回数とポイントカード提示数は雲泥の差です。あくまで愚直に『(顧客にとって)便利だね』を追求したのがファミペイアプリ」という。
とはいえ、現状のファミペイはファミマTカード経由または店頭での現金チャージしか受け付けていない。ファミマTカード限定になったのは「セキュリティ上の問題」と「手数料」の2つの理由によるものらしいが、実際のところ、現状でTポイントのプリペイドチャージなど、カウンターでの現金チャージ業務を問題なくこなしているとのことで、オペレーション上の混乱は特にないという。
ただ、筆者も含めて他の競合サービスのように銀行口座連携やATM経由でのチャージ機能が欲しいと考えている人は多いだろう。これについて植野氏は「本来は11月のタイミングで銀行チャージの機能を追加して一緒にリリースしたかったが、技術的要件などの問題で今回は間に合わなかった。(親会社の伊藤忠などが出資している)pringの活用も含め、銀行チャージする方法をいろいろ検討中で、(ファミリーマートの会計年度末である)2020年2月末までに対応を進めたい」と述べている。
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