2020年にはミッドレンジの5Gスマホも登場? Qualcommが5Gの技術動向を説明:The Future of 5G Workshop(2/2 ページ)
Qualcommは米サンディエゴにある同社の本社で「The Future of 5G Workshop」を開催。5Gの現状とユースケースを中心としたこれからの展望について説明した。カギを握るのがミリ波。同社はミリ波に対応したアンテナモジュールを開発し、スマホでミリ波を利用できる技術を確立した。
ミリ波の実用化が5G成功のカギ
5Gに対応したデバイスは既に150種類が製品化されている。スマートフォンもSamsung ElectronicsやHuaweiといったメジャーメーカーだけではなく、XiaomiやOPPO、OnePlusなど新興系メーカーからも登場している。また、屋内用ルーターともいえるCPEやホットスポット、組み込み用のモジュールも、4G登場時点と比べるとはるかに多い数の製品が出てきている。
Qualcommは、これらメーカー向けにX50 5Gモデムを提供し、現在市販されている同社プロセッサを採用する5G製品はこのモデムを搭載している。また、2019年に提供予定のX55 5GモデムではSA方式の採用、FDDサポート、(4Gと5Gを同一帯域で共存させる)Dynamic Spectrum Sharingなど新しい機能が加わる。
そして2020年上半期には5Gモデムをプロセッサに統合し、Snapdragon 8シリーズだけではなくSnapdragon 7、Snapdragon 6とミドルハイレンジクラスのモデルにも5G環境を提供する予定だ。これにより、5G端末の価格が引き下げられ、各国の5Gサービスの拡大と合わせることで5Gの普及を一気に広めようとQualcommは考えている。
今回のプレゼンテーションでは5Gモデムを「Modem-RF Solutions」として紹介。つまりモデムだけではなくアンテナ設計も重要であることが説明された。それは4Gまでの世代では利用されなかった高い周波数、ミリ波を5Gは使うからだ。Qualcommはミリ波に対応したアンテナモジュール「QTM525」を開発し、スマートフォンでミリ波を利用できる技術を確立した。
ミリ波はその特性から障害物に弱く、スマートフォンで利用する場合は建物の影やスマートフォンのアンテナ部分を手で覆うと感度が下がってしまう。そのため、基地局側では端末に向けて電波を飛ばすビームフォーミング技術が実用化される一方、端末側では感度の高いアンテナが求められる。プレゼンテーションの後にはこのQTM525を端末の3か所に搭載し、障害物からの影響を最小限に押さえるデモも行われた。
ところで、5Gの特性を生かすにはコアネットワークに4Gを使うNSAではなく、コアも5GネットワークとなるSAへのマイグレーションが必要となる。現時点ではまずは5Gを拡張するために、しばらくはNSAによる5Gエリアと、低い周波数帯を使った4Gエリアが混在する状況が続くだろう。Dynamic Spectrum SharingやFDD方式の導入により、徐々にSAへ移行されることになりそうだ。
5Gが目指すものは、あらゆるものがインテリジェントに接続するスマートな社会の構築だ。スマートフォンの進化だけではなく、IoTや交通、スマートシティーなど、5Gは4G時代までのネットワーク社会を大きく変えるものになるのである。
ミリ波体験など5Gの最新技術をデモ
Qualcomm本社では、イベントに合わせ、最新技術のデモンストレーションが行われた。その様子を写真で紹介する。
(取材協力:クアルコムジャパン)
関連記事
- Appleとの“和解”の効果は? 日本の5Gって遅れてない? Qualcommアモン社長の答え
スマートフォン向けのチップセットやモデムを手がける米Qualcomm(クアルコム)のクリスティアーノ・アモン社長が来日。日本の報道関係者に5G(第5世代移動体通信システム)における同社の役割を説明した。この記事では、説明会での質疑応答の模様を簡単にお伝えする。 - 5Gの「それって4Gで良くない?」問題 Qualcommの回答は?
国内外で商用サービス開始の動きが本格化し始めた「5G」だが、そのユースケースを見ていると「それって4G(LTE)でもできるよね?」ということも少なくない。5Gモデムなどを端末メーカーに供給する米Qualcommの「中の人」は、そのような疑問にどのように答えるのだろうか。 - 「5GはAndroidだけ」 MWC19で感じたQualcommの強いメッセージ
QualcommがMWC19 Barcelonaで、同社のプロセッサを用いた5Gデバイスの最新状況を紹介。5G対応の「Snapdragon 855」を搭載したデバイスは、既に30以上の製品で開発が進んでいる。同社は「5G Only on Android」のメッセージも強く打ち出していた。 - 5G初対応の「Snapdragon 855」発表、Qualcommは「ミリ波」対応の技術力をアピール
Qualcommがハワイで開催された「Snapdragon Tech Summit 2018」で、5Gに対応したプロセッサ「Snapdragon 855」を発表。第4世代のAIエンジンを搭載し、845との比較で3倍のパフォーマンスを実現するという。5Gで使われる「ミリ波」に対応するのもポイントだ。 - ドコモが「5Gプレサービス」対応端末を披露 スマホ3機種とルーター1機種
NTTドコモが、9月20日から開始する5Gプレサービス用のスマートフォンとルーターを披露した。一部を除き「Sub-6」「ミリ波」両方の通信に対応するが、あくまでもプレサービス用という位置付けで市販される予定はない。【追記】
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.