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改正法の影響は? ビッグローブ有泉健社長に聞く「BIGLOBEモバイル」の今後MVNOに聞く(1/3 ページ)

ビッグローブがMVNOサービスを「BIGLOBEモバイル」に一新し、“SIM替え”を打ち出してから2年がたった。一方で同社は100万契約未満のMVNOながら、10月1日に施行した改正・電気通信事業法の影響を受け、端末割引や長期契約の違約金などの制限が適用される。この状況に対し、同社はどのような手を打っていくのか。

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 KDDI傘下として、2017年9月に再スタートを切ったビッグローブ。ブランドを「BIGLOBEモバイル」に一新し、“SIM替え”を打ち出してから2年がたった。その間、同社は徐々に回線数を伸ばし、2019年3月時点ではシェア6位(MM総研調べ)をキープしている。その間、同社は「エンタメフリー」と呼ばれるゼロレーティングのサービスを拡充。ユーザー層も拡大してきたという。

 一方でビッグローブは100万契約未満のMVNOながら、10月1日に施行した改正・電気通信事業法の影響を受け、端末割引や長期契約の違約金などの制限が適用される。KDDI傘下のサブブランドと見なされるからだ。この状況に対し、同社はどのような手を打っていくのか。ビッグローブの代表取締役社長を務める有泉健氏にお話を聞いた。

BIGLOBEモバイル
ビッグローブの有泉健社長

改正法の規制は想定外だった

―― 10月に改正・電気通信事業法が施行されました。その影響も踏まえつつ、最新の取り組みを教えてください。

有泉氏 直近では電気通信事業法の改正がありましたが、それより前に、楽天のMNO参入が明確になっていました。期初には、社員には「われわれは選ばれるBIGLOBE」になるとげきを飛ばしています。商品の差別化もそうですが、信頼、品質など、ベースになる部分を磨いた上で、さらに差別化する。今まで以上に選んでいただくポジションになるため、楽天が参入する10月は厳しいことになるという前提で作戦を練ってきました。

 そこに、電気通信事業法の改正がありました。MNOだけかと思ったらわれわれまで対象になってしまったのは想定外でしたが、いずれにせよ、何が起こっても、やらなければいけないことは変わりません。固定系ではau光を中心に光コラボがありますから、これを右肩上がりで伸ばす。MVNOにはついては当初から変わらず、ID数を増やしていく。そのためには、信頼と品質が必要です。

 MVNOを選ぶとき、最初の決め手になるはやはり価格ですが、ご存じの通り、通信速度もハイライトされるようになってきました。ここでは、コスパ感を追求しなければいけないと思っています。ゼロレーティングについても、われわれは老舗だと思っていますが、お客さまに喜んでいただける対象となるサービスを広げてきました。直近では、ドコモのd系コンテンツを取り入れていますし、その前にはLINE MUSICも対象にしています。オープン化しているサービスについては、ニュートラルな立場で中身を充実させていく予定です。

 価格と速度とゼロレーティングに加え、さらには他社にない特徴として光があります。BIGLOBEモバイルと光回線をバンドルすると、さらにお客さまにお得感が出るようにしていますが、この辺で差別化を図っていこうとしています。

BIGLOBEモバイル
対象サービスの通信量がカウントされない「エンタメフリー・オプション」。解約率の低下にもつながっているという

 もう1つ忘れてはいけないのが、お客さま接点です。コールセンターのクオリティーはこの2年間で格段に上がっています。Help Desk Instituteというサポートのメンバーシップがありますが、私たちは格安SIMの問い合わせ窓口として、三ツ星という栄誉あるレーティングをいただくこともできました。バックヤードの品質も上っているのです。AIチャットbotも手掛け、フロントラインもバックヤードも選ばれるBIGLOBEということを進めてきました。

 プロモーションでは、Abema TVで単独スポンサーの番組を持ち、そこで収録したインフォマーシャルを交通広告やネット媒体で広く拡散させる取り組みをしています。料金がベンチマークだったため、そこをハイライトしていましたが、それに加えてゼロレーティングや光とセットの世界を訴求するようにしました。そのおかげもあり、ゼロレーティングはお客さまに受け入れられてきた実感があります。MVNOとしての契約者数の伸びも、マクロ以上に伸びています。

 キャンペーンを打っていることもありますが、ゼロレーティングは若い方にも関心を持っていただけたため、結果として音声SIMにゼロレーティングをつけてご契約いただけることが顕著に増えてきました。

BIGLOBEモバイル
BIGLOBEモバイルのトップページでは初月無料や手数料無料などのキャンペーンを訴求している

―― やはり、改正法が適用されるのは想定外だったんですね。

有泉氏 ここは意外ではありましたが、逆にチャンスだとも思っています。端末の利用が長期化し、SIMフリーや中古端末が活況を呈する一方で、解約手数料(違約金)が下がってユーザーは流動化します。その反面、長期利用特典には制限がついてしまうため、特典以外のところが重要になってきます。

 私たちは、攻めと守りの両方を固めようとしています。まず攻めについてですが、われわれはSIM単体の需要に応えてきましたが、SIMフリー端末や中古端末とのセット販売も既に量販店や中古店で始めています。ここは拡大を狙っていく動きをしています。

 守りについては、ゼロレーティングや光のセットの販売で、解約率が顕著に抑えられることがデータでも証明できました。ここは、引き続き磨いていこうとしています。

―― いわゆる違約金はどうされたのでしょうか。

有泉氏 10月1日以降、特に料金プランの変更は行っていませんし、翌月を起点とした1年の最低利用期間も変えていません。ただし、解約手数料については8000円から1000円に変更しました。MNPの手数料も、これまでは利用開始から3カ月以内は6000円、それ以降は3000円でしたが、こちらも一律で3000円にしています。

エンタメフリーで解約率が下がる効果も

―― エンタメフリーはニュートラルに拡充するというお話でしたが、新サービスを追加する際に、何か基準のようなものはあるのでしょうか。加入目標もあれば教えてください。

有泉氏 数値目標としてどのぐらいの加入数に持っていくかということは、特にベンチマークにはしていません。ただ、これからはしていかなければいけないと思っています。帯域を広く使うサービスですし、いい意味でも悪い意味でも、収益にフィードバックがかかりますからね。一方で、BIGLOBEモバイルの看板になりつつあるサービスなので、方針として数値目標はしっかり持っていきたいと考えています。

 コンテンツの数は、方針として、広くあまねくお客さまに喜んでいただけるものを投入していくべく、拡大路線を考えています。一定の料金を頂戴しているため、結果としてARPUは上がりますし、解約率が下がる効果もあります。この辺をにらみつつ、経営指標にしていきたいと思います。

―― ARPUが上がるのは分かりますが、解約率も下がるというのは意外でした。

有泉氏 データを見ると、明確に下がることが分かります。そういう目的があって始めたサービスではありませんが……。

―― 半分ぐらいになるといったところでしょうか。

有泉氏 そこまでは下がりませんが、微々たる数値というわけではないといったところです。

―― 半分より下の数割といったところですね。ユーザー層も変化したというお話でしたが、これもエンタメフリーの成果でしょうか。

有泉氏 若い層を増やしたかったというのはあります。BIGLOBEは老舗なので、やはり40代、50代、60代の男性が中心でしたが、これからの世代として20代を厚くしたいと考えていました。エンタメフリーがかなり認知されたおかげで、それが若い人の加入にかなり効いています。

―― ただ、料金だけを見ると、UQ mobileが値下げした結果、サブブランド同士の差が少し埋まってきた印象もあります。ここについてはどうお考えでしょうか。

有泉氏 MVNOの宿命ですが、やはりお客さまにとっては料金が一番のプレゼンスになっています。UQ mobileはサブブランドと位置付けられてきましたが、今はMVNOの料金もダウントレンドです。(UQ mobileの値下げは)そこよりさらに下げないと、プレゼンスがなくなるという判断があったと推測しています。おっしゃる通り、確かに近づいてきてはいますが、料金はどこかに収束していきます。ですから、最後は色をどう出せるかの勝負になってくるのではないでしょうか。法改正の話だけでなく、いずれのステージでも、差別化が生き残りのコアな要素になります。

 そこに力を注ぎ、どう色を付けていくのか。モバイルだけでは限界があるところに、固定の色を付けつつ、個人から家庭に単位を上げることも考えなければなりません。そのため、2つのメディア(固定とモバイル)で浸透させていく、差別化のシナリオメークに注力しています。

BIGLOBEモバイル
BIGLOBEモバイルの料金プラン。1GBから30GBまで幅広いプランをそろえている
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