ハード、ソフト、AIの三位一体で攻める「Pixel 4」 “我が道を行く”ゆえの課題も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
10月24日にGoogleの最新スマートフォン「Pixel 4」「Pixel 4 XL」が発売される。ハードウェアとしては、デュアルカメラ化したことや、電波を使ってジェスチャーを検知する「モーションセンス」に対応した。比較されがちなiPhoneとは開発思想が異なるが、他社比較から見える課題もある。
ハードウェアメーカーが原点ではないゆえの課題も
GAFAの1社であるGoogleが開発したスマートフォンであるだけに、Pixel 4、4 XLはどうしても、もう1社のAppleが開発したiPhoneと対比されがちだ。ただ、ここまで見てきたように、その開発思想や狙いは、ハードウェアメーカーが原点であるAppleとは大きく異なる。むしろアプローチは真逆で、ソフトウェアやAIから逆算して設計されたハードウェアにも見える。当然ながら、ビジネスの規模感も文字通り桁が違うため、直接的な比較はあまり適切ではないだろう。ただ、カメラに注力しているところや、端末の2サイズ展開、価格設定などに関しては、Appleを強く意識していることもうかがえる。
それゆえに、発売時点で非対応の機能が多いのは、残念なところだ。後からアップデートし、完成度を高めていくという発想は、ソフトウェアを主軸にしたGoogleらしい発想だが、あまりにそれが多いと、「対応してから買えばいい」となってしまいかねず、スタートダッシュに悪影響を与えそうだ。電波法の規制が絡むモーションセンスは仕方がないとしても、ハードウェアとソフトウェア、AIの三位一体で力を発揮する端末であるだけに、せめてボイスレコーダーの文字起こしは、英語以外の言語でも発売時に対応していてほしかった。
ハードウェアメーカーとは真逆ゆえにPixel 4、4 XLには斬新さもある一方で、同時にそこが課題として浮かび上がってくる。ハードウェアは、確かに上質な仕上がりの一方で、分かりやすい高級感がない。Appleであればステンレススチールをフレームに採用して光沢感を出したり、すりガラスを使って金属のような表情を出したりと、一目で分かる“価格相応感”がある。対するPixel 4、4 XLは、シンプルゆえにじっくり見ないと質感が伝わりづらいと感じた。他のAndroidスマートフォンと比較しても、これは同じだ。
ハードウェア起点の発想をしていないためか、機能面で、スマートフォンのトレンドを追っていないところもある。iPhoneに搭載され、一気に火が付いた超広角カメラはその1つだが、指紋センサーがないのも、高価格帯のAndroidでは珍しい。よく言えば我が道を行くGoogleらしさではあるものの、近い価格帯のハイエンドモデル同士で比較したとき、どうしても見た目や機能以上の値段に見えてしまう。
販路の開拓も課題といえる。冒頭で述べたように、Pixel 4、4 XLは、Googleストアとソフトバンクのみの扱いになり、ドコモは発売を見送ってしまった。Pixel 3、3 XL、3aの販売実績がいまひとつだったことを考えると、5Gの開始を控えた今、積極的に導入するのは難しかったのだろう。現時点でリアル店舗での販売はソフトバンクのみで、MVNOの取り扱いもない。
海外に目を移すと、例えば米国では主要キャリア全てに販路を拡大するなど、徐々に成長はしているものの、その他の国でどう拡大していくかの戦略があまり見えてこない。端的に言えば、メーカーとしての営業力が弱い印象を受ける。一方で、カメラを筆頭に、ソフトウェアやAIに強みを持つGoogleだからこそ実現できた機能は魅力的で、インパクトもある。こうした特徴を、ユーザーに対して丁寧に伝えていけるかが、成否を分ける鍵になりそうだ。
関連記事
- 「Pixel 4」は何が新しい? 3/3aと比較、ネックは価格か
Googleの最新スマートフォン「Pixel 4」「Pixel 4 XL」が10月24日に発売される。カメラが進化し、2020年春からは新機能の「モーションセンス」が利用可能になる予定。Pixel 3や3aとの違いをまとめつつ、Pixel 4は買いなのかどうかを考えたい。 - 人や環境に優しい存在へ――Googleデザイン担当者が語る「Pixel 4」「Nest Mini」のデザイン
Googleが10月15日(米国東部夏時間)に発表した新製品群。それらのデザインを担当した「中の人」が来日し、デザインの背景を日本のメディア関係者に説明した。 - 「Pixel 4/4 XL」が10月24日に発売 税込みで約9万円から ソフトバンクも取り扱い
Googleが10月16日、新型スマートフォン「Pixel 4」「Pixel 4 XL」の日本発売を発表した。16日からGoogleストアで予約を受け付け、24日から購入できる。Googleの他、ソフトバンクも取り扱う。 - 「Pixel 4」は日本版もeSIMに対応 ソフトバンクはSIMロック解除が必要
Googleの最新スマートフォン「Pixel 4」と「Pixel 4 XL」が発表された。日本モデルで初めて「eSIM」に対応したことも大きなトピックだ。ソフトバンクが販売するモデルもeSIM自体は利用できるが、SIMロック解除が必要になる。 - Googleの「Pixel 3/3 XL」はiPhoneの対抗馬になるか? カギは「AI」にあり
Googleが、Pixelシリーズの最新モデル「Pixel 3」と「Pixel 3 XL」を11月1日に発売する。満を持して導入されるPixelだが、その特徴やGoogleの狙いはどこにあるのか。過去、Googleが手掛けてきたデバイスとの違いなども含め、本連載で解説したい。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.