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インタビュー

元FREETELの増田氏とタッグ Blacksharkが日本のSIMフリー市場に参入する狙いSIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/2 ページ)

Xiaomiが出資するBlacksharkのスマートフォン「Black Shark2」が日本で発売。メモリ6GB、ストレージ128GB版は、4万9800円(税別)という価格を打ち出した。ハイエンド機の割合が少ない日本のSIMフリー市場に、なぜBlacksharkは参入したのか?

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 デザインやパフォーマンスをゲームに特化させたゲーミングスマートフォンが、徐々に広がりを見せている。Xiaomi(シャオミ)が出資するBlacksharkも、その1社だ。同社は2世代目になる「Black Shark2」を引っ提げ、日本に上陸。このモデルを取り扱っているのが、FREETEL破綻後に増田薫氏が立ち上げたTAKUMI JAPANであることも、話題を集めた。

 Black Shark2は、プロセッサにSnapdragon 855を採用した6.39型の端末。液体冷却機構を備えたり、タッチのスキャンレートを240Hzに向上させたりと、ゲームを利用するのに最適な機能を搭載した。拡張性の高さも特徴で、専用ケースやコントローラーとHDMIケーブルが販売されている。一般的なハイエンドモデル以上のスペックながら、メモリ(RAM)6GB、ストレージ(ROM)128GB版は、4万9800円(税別)と、5万円を下回る価格を打ち出したのも印象的だ。

Blackshark
Snapdragon 855、6GBメモリ、128GBストレージを搭載しながら、4万9800円(税別)という価格を実現した「Black Shark2」

 一方で、日本のSIMフリースマートフォン市場はまだ規模が限定的で、特にハイエンドモデルの占める割合は非常に低い。ゲーミングスマートフォンだと、さらにその比率は小さくなる。そんな日本市場に、Blacksharkはなぜ参入したのか。来日中だった共同創業者の1人でシニアバイスプレジデントを務めるハリソン・ルオ氏とグローバルセールス&マーケティングのデビッド・リー氏、日本での販売を手掛けるTAKUMI JAPANの大仲泰弘氏にお話を伺った。

特定に国向けにカスタマイズしたのは日本だけ

―― 最初に、日本市場に参入した理由を教えてください。Blacksharkの拠点の中国に比べれば全体の市場規模も小さいと思いますが、なぜあえて日本に進出したのでしょうか。

ルオ氏 日本のマーケットは、ゲーミングスマートフォンの発展する余地がまだあるからです。日本にはアニメもあり、それを世界に発信して、さまざまな国に影響を与えています。そうしたコンテンツを支えるデバイスで、何かお役に立てないかということで、進出することを決めました。日本には、ソニーや任天堂などがあり、いいゲームもたくさんありますが、ゲーミングスマートフォンの市場はまだこれからです。ここは海外に比べると一歩遅れているところで、まだまだチャンスはあると思っています。

Blackshark
Blacksharkのシニアバイスプレジデント、ハリスン・ルオ氏

大仲氏 確かにマーケットパワーでは(中国などに)かないません。人口だけで言えば、中国の15分の1ぐらいですからね。ただ、日本にはエコシステムがあります。日本のコンテンツを持っている方々とリレーションを取れば、ハードウェアとソフトウェアが一体となり、マーケットを築いていくことができると思っています。

―― Black Shark2は日本向けの周波数対応など、カスタマイズもしています。

ルオ氏 積極的に取り組んでいます。日本市場のプライオリティー(優先度)はトップに置いているからです。中国はもちろん、米国、韓国、東南アジアをメインにしていますが、その中でも、です。日本は国民性もあり、今までなかったブランドや新しいものを受け入れるのに時間がかかることも分かっています。ですから、(Black Sharkシリーズは)赤ちゃんのように、じっくり育てていきたいですね。有名なゲーム会社と一緒にやっていけることも目指しています。

―― 日本市場の特徴は、よく分析されていますね(笑)。確かに、浸透させるのには、時間がかかるかもしれません。

ルオ氏 これも、日本を重視して本気で取り組んでいる姿勢だとご理解いただければと思います。

大仲氏 補足すると、特定の国向けに仕様をカスタマイズしているのは、日本だけです。他の国では、グローバル版から一切カスタマイズはしていません。

FREETEL時代の手腕を認めていただけた

―― 大仲さんがいる隣でお答えしづらいかもしれませんが(笑)、販売パートナーとしてTAKUMI JAPANを選んだ理由を教えてください。

リー氏 日本に進出するにあたり、どこと組むべきかはいろいろと検討しました。開発メンバーにはもともとHuaweiから来た人間も多いため、マーケットに関しては熟知していましたが、なぜTAKUMI JAPANにしたかというと、増田さんがFREETEL(プラスワン・マーケティング)の創業者だったからです。増田さんは、短期間でFREETELのブランドを拡大した実力がある。(経営破綻などの)谷もありましたが、そういった経緯があったからこそ、任せることにしました。

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Black Sharkのデビッド・リー氏(左)と、TAKUMI JAPANの増田薫社長(右)。Black Shark 2の発表会にて

大仲氏 FREETELのときの手腕を認めていただけた、ということだと思います。短期間でSIMフリースマートフォンを成長させ、一時はHuaweiよりも台数を売っていました。中国本土の人からすると、Huaweiより売るというのは、あまり聞いたことがない事例だと思います。増田が話をした結果、日本のマーケットはTAKUMI JAPANに任せるという判断をしていただけました。

競合ゲーミングスマホとの違いは?

―― ASUSのROG Phoneは競合になると思います。グローバルでは競合も増えてきましたが、今の状況はどう見てらっしゃいますか。

ルオ氏 ゲーミングスマートフォンは、Blacksharkが世界で最初に専用のものを作りました。確かにASUSのROG Phoneなどの参入もありましたが、このマーケットにはいろいろなところが入ってきた方がいいと思っています。お客さまには選択肢があった方がいいからで、競合他社の参入に関しては、歓迎の姿勢でいます。とはいえ、弊社は600人の社員のうち400人が開発陣で、(技術では)他社に負けない自信もあります。

―― ゲーミングスマートフォンではないハイエンドモデルも、ゲームの性能を売りにすることが増えてきました。こういった端末の差別化は、どうお考えでしょうか。

ルオ氏 2点あります。ゲームに特化したスマートフォンは、パフォーマンスを重視しています。パワーがないと、ゲーミングスマートフォンとはいえないからで、これはタッチパネルの操作性にも及びます。また、ゲームをするとき、映像の鮮明さがないと、ガッカリすることになると思います。本来の映像の美しさを、どう引き出すかが重要になります。確かに他社もゲームに適した端末という宣伝をするようになりましたが、(ゲーミングスマートフォンは)普通のスマートフォンとは異なることまで考えなければいけません。

 もう1つ、普通のスマートフォンとはデザインで差別化できています。人それぞれ、考え方も違えば、好きなものも違います。そのため、差別化できるID(インダストリアルデザイン)は、継続してやっていきます。

Blackshark
ゲーミングスマホらしい派手さが際立つ

大仲氏 Black Shark2は、光るところがぶっ飛んでいますよね(笑)。賛否両論あるのは分かっていますが、これを気に入って買ってくださる方もいます。ただ、シャークモードもあってゲームに特化してはいますが、僕らのプレスリリースでもあまり「ゲーミング」とは言っていません。

 ゲームをする人より、それ以外も含めて使う方が数としては当然多いからです。ゲーム以外がまったくダメかというとそんなことはなく、カメラの性能もよく、SNSでは「Black Shark2はカメラもいい」というご評価をいただいています。通信も入りやすいですし、普通のスマートフォンと同じように使える。その中でも、さらにゲームに特化したという考え方をしています。

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