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分離プランや改正法の影響は? ドコモとKDDIの決算を振り返る石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

NTTドコモとKDDIは、2019年度上期の決算説明会を開催した。ドコモは前年同期比で減収減益。KDDIは増収減益だが、2四半期単独の営業収益は増収に転じた。ドコモは分離プランを2019年6月に導入したのに対し、KDDIは先行して分離プランへのシフトを進めていたことで結果が分かれた。

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 NTTドコモとKDDIは、2019年度上期の決算説明会を開催した。ドコモは、売上高、営業利益が前年同期比で減収減益に。対するKDDIは、上期で見ると増収減益だった一方で、第2四半期単独で見ると、営業収益は増収に転じた。ドコモは分離プランにあたる新料金プランを2019年6月に導入したのに対し、KDDIは先行して分離プランへのシフトを進めていたこともあり、結果が分かれた格好だ。

分離プランの導入で減収減益に転じたドコモ、見通しはまさかの上方修正

 ドコモの上期は、新料金プランの導入などが重しとなり、減収減益の決算となった。月々サポートをなくする代わりに料金自体を下げているためで、新料金プラン導入前にスタートしていたベーシックパックの影響も、3分の1ほどあるという。売上高は2兆3300億円、営業利益は5403億円で、前年同期で595億円の減収、703億円の減益となった。一方で、減収減益は新料金プラン導入時に想定していた通りだという。ドコモの吉澤和弘社長は「ほぼ計画通りと見ていただいていい」と語る。

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分離プラン導入に伴う料金値下げで、上期は減収減益で終わった
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分離プラン導入の影響は、ほぼ想定通りとした吉澤社長

 営業利益の増減要因を見ていくと、例年までと傾向が変わっていることも分かる。減益に大きく響いているのが「販売関連収入」だ。新料金プランの導入で端末自体が売れなくなったわけではなく、中身に変化があったのが、その理由になる。取締役常務執行役員 財務部長の廣門治氏によると、「販売減もあるが、重荷になっているのは、粗利を下げたところにある」という。

 ドコモは、分離プランの導入に合わせ、端末の返却で代金の3分の1を免除する「スマホおかえしプログラム」をハイエンドスマートフォンに導入した。一方で、auは11月に仕組みを変えたものの、当時は4年割賦のうち、2分の1を免除していた。ソフトバンクは現在もこの仕組みを継続している。一般的に言えば、免除される額の大きいauやソフトバンクが有利になるが、ドコモはここに粗利を削ることで対抗。もともとの端末価格を抑え、他社に迫る実質価格を実現した。こうした見直しが、大きな減収要因になったというわけだ。

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営業利益の減少要因として大きいのは、端末の販売関連収入だった

 質的な変化では、分離プラン導入後、「以前より、ハイエンドモデルの比率が減った」(同)といい、ミドルレンジモデルへのシフトが進んでいることがうかがえる。廣角氏によると、「結果として販売平均価格も下がっている」という。

 減収減益となったドコモだが、通期の業績予想は、売上高を上方修正している。モバイル通信料収入は、「導入当初、新料金プランへの移行が少し緩やかだったため、(減収影響が)下期に効いてくる」(吉澤氏)にもかかわらずだ。修正額は600億円に上る。吉澤氏によると、理由の1つは純増数にあるという。「純増についてはいい方向で、計画に対して好調を保っている」と、通信モジュールなどを含め、想定よりもユーザーを獲得できていることを明かした。

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新料金プランの申し込み件数は800万を突破したが、当初の移行ペースは想定をやや下回っていたという
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通期の見通しは、売上高を上方修正した

 また、分離プラン導入以降も端末販売は好調だという。特にドコモとして手応えを感じているのが、3Gから4Gへの移行だ。「マイグレーションもかなり強化していて、販売が好調。結果として端末機器販売の収入増が見込める」(同)という。

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4Gへの移行を加速させていく。結果として、端末販売も好調になっているという

 とはいえ、2019年度は減収減益になることに変わりはない。ドコモは、新料金プランで事業基盤を固めつつ、「スマートライフ領域の着実な成長と、18年年度を上回るコスト効率化に取り組んでいく」(吉澤氏)方針。通信料収入の減収分を上位レイヤーのサービスやソリューションを伸ばして補いつつ、反転攻勢を目指すのが戦略の基本といえる。

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スマートライフ領域や、コスト効率化でモバイル通信料収入の減少をカバーしていく
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