分離プランや改正法の影響は? ドコモとKDDIの決算を振り返る:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
NTTドコモとKDDIは、2019年度上期の決算説明会を開催した。ドコモは前年同期比で減収減益。KDDIは増収減益だが、2四半期単独の営業収益は増収に転じた。ドコモは分離プランを2019年6月に導入したのに対し、KDDIは先行して分離プランへのシフトを進めていたことで結果が分かれた。
改正・電気通信事業法の影響は、第3四半期にどう出る?
ドコモとKDDIの両社とも第2四半期は9月末までだが、10月1日には改正・電気通信事業法が施行されている。この影響は、第3四半期にどう出るのか。改正・電気通信事業法では、端末購入補助の上限が2万円までに制限された他、いわゆる2年縛りの違約金も1000円までに引き下げられた。政府や総務省の狙いは、ユーザー流動性を高め、結果として通信料金を引き下げることにある。反動として、端末販売台数が減少する懸念もあった。
こうした状況に対し、「MVNOとの競争環境は厳しくなる」との見通しを示したのは、KDDIの高橋氏だ。違約金が1000円に下がったことで、「詳しい人は、MVNOに行かれることもある。その数については、今までより若干増えている」と警戒感を示した。ただし、「10月を見る限り、MNO間の流動性は落ちている」そうで、ポートイン、ポートアウトともに、MNPの利用者が減少していることを明かした。「MNO間の(移行の)インセンティブが抑制された」ためだ。
対するドコモの吉澤氏は「解約金が1000円になってまだ1カ月たっていないので、どういう動きになるのかは、さらに状況を見る必要がある」と語った。一方で、10月からは「ポートインについては回復基調」としながら、「9月までとは様相が変わってきている」と語る。新料金プランの導入に合わせ、割引の抑制をしてきたドコモだが、一律で割引の上限が2万円に定まったことが、現時点ではプラスに働いているようだ。
端末の販売動向に関しては、2社とも大きな影響は出ていないという。「9月は駆け込みがあった」(吉澤氏)、「9月は非常に(販売台数が)多かった」(高橋氏)というものの、反動は小さいという。吉澤氏は「新料金プランと同時に端末の売り方を変え、スマホおかえしプログラムを入れている。仕組みそのものが変わったわけではない」と、その理由を説明。「量販店では、(改正・電気通信事業法の)影響で端末が高くなるのではないかということで、少し(販売数は)落ちているが、今はだんだん盛り返してきている」(同)という。
KDDIも状況は同じで、10月に入って「劇的に販売数量が減ったということにはなっていない」(高橋氏)。9月20日に発売されたiPhone 11シリーズも、「9月は予想以上の売れ行きだったが、10月も予想の範囲に収まっている」(同)という。
10月以降の状況をにらみながら、ミドルレンジモデルを充実させたことも功を奏したようだ。吉澤氏は「補助がなくても、お求めやすいものを出すことによって、お客さまにはしっかりご利用いただけると判断している」と語る。
一方で、2020年春には各社が5Gのサービスを始める。当初はハイエンドモデルが中心になるとみられるため、端末割引が大幅に抑制された環境では、移行が遅くなるおそれもある。事実上、参入を先送りした楽天モバイルも、春までには正式なサービスを開始する。分離プランの導入や改正・電気通信事業法の影響を正確に見定めるには、もう少し時間がかかりそうだ。
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