「ハイエンドに集中する方針は間違っていない」 ASUSに聞く「ROG Phone II」の秘密とSIMフリー戦略:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(3/3 ページ)
2019年から、ハイエンドモデルに注力する戦略にシフトしたASUS。ミドルレンジ以下のモデルを大幅に減らしつつも、フリップカメラを搭載した「ZenFone 6」や「ROG Phone II」は、“ASUSらしさ”がいかんなく発揮された端末だ。ROG Phone IIの特徴を中心に、ASUS JAPANの端末戦略を聞いた。
ミドルレンジやローエンドだけでは経営が成り立たない
―― 日本では、他のハイエンドモデルを出すメーカーも、ゲーミングを売りにし始めています。Black Sharkも参入しましたが、そういったところとはどう差別化していくのでしょうか。
リー氏 先ほど申し上げたように、昨年からゲーミングスマホの黎明期で、われわれはそこに合わせてROG Phoneを投入しました。各社がそういった商品を投入してくるのも想定内です。競合のスマホも、この市場を一緒に盛り上げてくれるので、それはそれでいいことだと思っています。ROG Phoneは競合にはない個性もあるので、差別化もできていると思います。
阿部氏 われわれはPCメーカーなので、そのノウハウを生かしながらスマホに展開できるのが、他社との大きな違いです。先ほどお話ししたソフトウェアのカスタマイズもそうで、PC側からのフィードバックを受けてできるようになったこともあります。
―― 今年はZenFone 6、ROG Phone IIと出してきましたが、本社側の方針転換もあり、ミドルレンジモデルが手薄だった印象もあります。1年を振り返ってみて、いかがでしたでしょうか。
リー氏 昨年のこの時期に方針転換が発表されましたが、この1年はまさにその方針にのっとってやってきました。まだ結果がどうとは言える段階ではありませんが、方向性は間違っていないと思っています。むしろ、スマホメーカー各社が同じように、単価の安いゾーンから抜け出そうとしているようにも見えます。ハイエンドはハイエンドで新たな競争もありますが、いい方向に進んでいると思います。
―― 一方で、日本のSIMフリー市場ではシェアが高かっただけに、少々もったいない印象もあります。
リー氏 ハイエンドに集中するという方針が決まったときから、シェアだけでなく、収益性や生産性とのバランスを取る方針です。
阿部氏 結局のところ、利益率の低いミドルレンジやローエンドだけを売っていても、会社としては成り立ちません。赤字を出さずに健全な経営をするには、ハイエンドの数をある程度出していかなければなりません。シェアは大事ですが、そればかりを追って利益を確保できなければ意味がないですからね。
リー氏 価格もそうですが、フリップカメラやROG Phoneのような個性のある製品を出せているのも大きいですね。こういったことは、われわれが得意とするところです。
取材を終えて:“逆張り”の戦略でどこまで戦えるか
ハイエンドモデルの性能が上がり、スマートフォン各社が“ゲーミング”を売りにする一方で、ROG Phone IIのように突き抜けた個性は出せていない。もともとゲーミングPCを展開してきたASUSは、この分野でブランド力も高く、差別化は十分図れているように見える。日本にはゲームメーカーも多いため、プロモーションなどで協力できれば、さらに存在感を高めることができそうだ。
ただ、キャリアも含めてミドルレンジモデルを拡充している中、ハイエンドに注力するASUSの戦略は、ある意味“逆張り”といえる。SIMロックフリースマートフォンのボリュームゾーンがミドルレンジであることを踏まえると、今までのようなシェアを維持するのは難しくなりそうだ。ASUSとは状況が異なるが、トップシェアのHuaweiも、米国の制裁が解除されず、新規の端末を出しづらい状況が続いている。結果として、SIMロックフリースマートフォン市場での競争の構図が、大きく変わってしまうことになるかもしれない。
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