総務省、改正電気通信事業法の評価方法を検討――有識者「MNP件数を見るべきではない」の仰天発言:石川温のスマホ業界新聞
総務省で「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第21回会合が行われた。その議論で聞き捨てならなかったのが、MNP(携帯電話・PHS番号ポータビリティー)に関する有識者の発言だった。
12月2日、総務省で「モバイル市場の競争環境に関する研究会(第21回)が行われた。
いくつかの議題があったが「これまでの議論を踏まえた検討の方向性」という議論が本当にひどかった。あまりの茶番ぶりに、改めて今後の通信行政に不安を感じてしまった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年12月7日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額500円・税別)の申し込みはこちらから。
10月より改正電気通信事業法が施行されている。この有識者会議で、改正法がきちんと機能しているか、これから評価するものだと思っていた。とはいえ、そもそも自分たちが作ったルールが正しいかどうかの評価を自分たちでできるものか、かなり疑問ではあった。
競争など起きず、市場が低迷すれば、それは改正法が間違っていたということになる。しかし、有識者会議で「改正法が間違っていた」となれば、自分たちの首を絞めることになる。有識者の先生方が自分たちの考えが間違っていたと会議で認めるというのはプライドが許さないのではないか。
そんななか、改正法を評価する上において、有識者のなかから「MNPの数字で評価すべきではない」という驚きの発言が出てきた。
そもそも、モバイル市場の競争環境を促進させるために有識者会議を行い、法改正に着手したのではないか。
さらに有識者会議の議論が物足りないと、総務省は議論を全く無視し、ゴリ押しでネットアンケートを実施。結論ありきで「解除料1000円」「2年縛りの見直し」を導入し、契約を解除しやすく環境を整備したはずだ。
それもこれも「キャリア間でのユーザーの流動性を高めるため」が目的ではなかったのか。
その指標となるはずのMNPの件数を評価の対象とせず、何を持って、改正法が機能しているかどうかのチェックできるというのか。
「MNPの件数を評価軸としない」というのは責任放棄でしかないように感じた。
さらに別の有識者からは「評価は難しい」とさじを投げた発言も聞き捨てならなかった。
来春から5Gが始まるが、当然、キャリアは値下げするどころか現状維持、もしくは値上げ方向の料金プランを設定してくるだろう。
結局、キャリア間の流動性は落ち、通信料金は値上がりし、端末の割引も受けられない状態になる。
総務省と有識者の愚策により、キャリアが儲かり、ユーザーが損をする。誰のための法改正だったのか、という振り返りもないまま、まもなく5G時代に突入しようとしている。
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