2019年の中国スマホメーカーを月ごとに振り返る 「カメラ」と「5G」の競争が激化:山根康宏の中国携帯最新事情(2/2 ページ)
2019年も数々の新製品や話題を振りまいた中国のスマートフォンメーカー。その1年間の動きを月ごとに振り返ってみよう。前半は折りたたみスマホとカメラ強化が大きな話題だった。後半は各社から5Gスマホが相次いで登場した。
7月:Xiaomiがカメラフォン「CC9」を発表、5Gスマホの予約開始
カメラ性能で他社に一歩リードされていたXiaomiから、カメラを強化した「CC9」が登場。4800万画素を含むトリプルカメラを搭載し、さらにインカメラは3200万画素。20代前後をターゲットユーザーとし、本体の色合いも若々しいイメージとして従来のXiaomi製品のイメージを一新した。また2018年11月に買収したMeituブランドの「CC9 Meitu」はインカメラの美顔加工にMeituのAI技術を搭載し、美しいセルフィーを実現した。
またZTEの「AXON 10 Pro 5G」の予約受付が7月23日から開始。7月26日にはHuaweiが「Mate 20 X(5G)」を発表した。どちらも発売は8月だが、中国の5G開始がいよいよ目前に迫ったことを知らしめた。なお5Gの免許は6月6日にChina Mobile(中国移動)、China Telecom、China Unicom(中国聯通)の既存3社に加え、新規に中国広電(中国広播電視網絡)にも交付されている。
8月:HuaweiからHarmony OSが登場、Nubiaが2画面スマホ発表
2019年に入ってから米中貿易摩擦が深刻化し、Huaweiに対しての米国からの制裁が強まった。インフラ事業だけではなく、スマートフォンのCPUの開発やOSにも影響が及び、Android OSにGoogleモバイルサービス(GMS)が搭載できない恐れも出てきた。そこで新しいOSをHuaweiが開発していると臆測が流れたが、8月9日に開催されたHuawei Developer Conference, 2019(HDC)で発表されたのは、HonorブランドのスマートTVに搭載された「Harmony OS」だった。同OSはスマートフォンよりもIoT製品向けであり、ひとまずHuaweiは今後もAndroid OSを継続して利用するようだ。
スマートフォンはVivoが早くもiQOOブランド3製品目(2製品目は7月発表の「iQOO Neo」)となる「iQOO Pro」を発表。Snapdragon 855+に4800万画素カメラ、さらに5Gモデルも用意。5G版は(数は少ないものの)当時として最安値の3799元(約5万9000円)で話題となった。一方、Nubiaからは表も裏もカラーディスプレイの「Z20」が発表された。
9月:画面占有率180%のMi MIX Alpha発表、Huaweiは脱Googleへ?
Huaweiが発表した「Mate 30」シリーズは2019年最も注目を集めた製品だろう。中国版のみならず、グローバル版もGMSを非搭載。Huaweiのモバイルサービス「HMS」を搭載し、アプリケーションもGoogle PlayではなくHMS上の「App Gallery」から提供する。最新のプロセッサ「Kirin 990」の搭載や、円形に配置された4つのカメラといったハードウェアの性能はあらゆるスマートフォンの中でも最上位といえるほどハイスペックな製品だが、ソフトウェア・OSの面でグローバル市場のユーザーニーズにどこまで応えられるか、先行きが一気に不透明なものとなった。
Xiaomiはアグレッシブな5Gスマートフォンを発表。グローバル向けには2月に「Mi MIX 3 5G」を発表し欧州で発売済みだったが、中国市場向けの「Mi 9 Pro 5G」を新たに発表。iQOO Proを下回る3699元(約5万8000円)で発売された。さらに、ディスプレイが表から裏面までをカバーする、画面占有率180.6%というコンセプト端末「MI MIX Alpha」も発表。折りたたみディスプレイが話題の中、新しいコンセプトで次世代の5Gスマートフォンのあるべき姿を見せた。Mi MIX Alphaは1万9999元(約31万円)という価格が設定されたが、発売時期は未定だ。
10月:どとうの新製品ラッシュ
10月は多数の新製品が登場した。数年前なら秋の新型iPhoneの発表前、8月か9月に各社は新製品をぶつけてきたが、今やiPhoneの発売時期とは無関係に、中国国内のセール(例えば11月11日の独身の日)期間に合わせて競い合うように新製品が登場している。
Huaweiは2月に発表したのち発売を延期していた折りたたみスマートフォン、Mate Xを1万6999元(約26万円)で発売。OPPOは9月の「Reno2」に続き、12月は「Reno Ace」と「K3」の2機種を発表した。VivoはiQOO Neoを早くもアップデートしてSnapdragon 855を搭載した「iQOO Neo 855」も発表。他にも「Realme X2 Pro」「OnePlus 7T Pro」「Meizu 16T」などが発表されている。
マイナーメーカーでは高級スマートフォンの8848が2020年に5Gスマートフォン「M6」を投入すると発表。またSmartisan(スマーティザン)がバイトダンスの新体制になってから初の製品「堅果 Pro 3」を発表。家電メーカーのHisense(ハイセンス)は電子ペーパー採用の「A6L」「A5」も10月に発表している。
11月:世界初の1億画素カメラスマホがついに登場
11月は中国で正式に5Gサービスが開始された。しかし5Gスマートフォンの新製品はなく、Xiaomiは9月に発表したMi MIX Alphaと同じ、1億800万画素のカメラを搭載した「Mi CC9 Pro」を発表。製品としてはこれが世界初の1億画素カメラフォンとなる。なおグローバル向けには「Mi Note 10」「同Pro」の名前で販売される。
OPPOはReno Aceのガンダム10周年バージョンを発売。中国でも日本のコンテンツは人気があり、発売直後に完売になるほどの人気となった。なお10月に新製品が多数出てきたこともあり、11月は他にVivoがカメラをひし形の台座に並べた「S5」を発表したくらいにとどまった。
12月:「1000元台5Gスマホ」をXiaomiが発表、Huaweiは5G機を追加
12月は一転して5Gスマートフォンラッシュとなった。Xiaomiの「RedMi K30」は6400万画素カメラを含む4カメラ構成で、5G版の「RedMi K30 5G」はプロセッサがSnapdragon 765G搭載で1999元(約3万1000円)という「5G最安値スマートフォン」となる。発売は2020年1月の予定だ。Huaweiは「nova 6」を発表、こちらも5G対応の「nova 6 5G」が存在する。さらにはHonorの最上位モデル「V30」「V30 Pro」も発表、それぞれ5G対応だ。
OPPOはRenoの中国向け5G端末をようやく発表、「Reno3」はプロセッサにMediaTekのDimensity 1000Lを採用し、6400万画素カメラを搭載。「Reno3 Pro」はSnapdragon 765Gで4800万画素カメラを搭載する。Vivoの「X30」「X30 Pro」はどちらもSamsungのExynos 980を搭載。年末になり、Qualcomm以外の5Gソリューションを搭載したスマートフォンが相次いで登場した。
以上、2019年の主なトピックを月ごとに振り返ってみた。Huawei、Xiaomi、OPPO、Vivoの4社が激しい競争を繰り広げていたことが分かっただろうか。2020年もこの4社を中心に、中国市場の競争はさらに激化、さまざまな新製品が出てくることだろう。
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