5Gに向けて“協創”――ドコモがパートナー企業との取り組みを紹介:DOCOMO Open House 2020(2/2 ページ)
1月23日と24日に開催された「DOCOMO Open House 2020」では、5G商用サービス開始を視野に入れた展示や講演が複数行われた。この記事では、同社の5G・IoTソリューション推進室長を務める船越健志氏の講演の概要をまとめる。
5Gを活用したさまざまなソリューションを紹介
2020年春に商用サービスが始まる予定の5Gについて、周囲からの期待は非常に高まっている。しかし船越氏は「5Gの特徴である3要素(超高速大容量、超低遅延、超多接続)が導入当初から全て実現できるというわけではなく、段階的に達成していくことになる」と前置きする。
ただ、5Gによって通信の性能が上がること自体は間違いなく、ドコモもパートナーと共に新しいサービスを作り上げるべく取り組んでいる。
その取り組みの1つが、2018年2月に立ち上げられた「5Gオープンパートナープログラム」だ。5G関連の情報の他、全国に11箇所で検証環境(ドコモ5Gオープンラボ)を用意していることに加えて、パートナー同士のビジネスマッチングの場も提供している。参加企業・団体は2019年末時点で3200以上あり、自治体を含めて幅広い業態から参画している。
5Gプレサービスの開始に合わせて、クラウドサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」の提供も開始した。低遅延かつセキュアなドコモのネットワークと、クラウド生かしたソリューションも紹介された。
BodySharing(H2L)
ユニークさで目を引いたのが、H2Lの「BodySharing」技術だ。この技術は、筋変位センサーを活用し、手や腕、顔などの身体情報をコンピュータと相互に伝達し、人やロボット、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)のキャラクターに動きを伝えるというものだ。
展示会場では「FaceSharing」が紹介され、多くの来場者が足を止めて見入っていた。
AceReal(サン電子)
5Gでは、高精細な映像が生きるVR/ARの利用シーンが広まると予想されている。その1つとして、サン電子のAR対応スマートグラスを使った業務支援ソリューション「AceReal」が取り上げられた。
このソリューションは、ARスマートグラス「AceReal One」と業務支援アプリ「AceReal Apps」を組み合わせたもので、情報の伝送に5G通信とドコモオープンイノベーションクラウドを活用している。
今回のデモでは、遠隔地のオフィスからマニュアル類を現場の作業員に送り、作業員がAceReal Oneに表示する、というシナリオが展開された。未熟な作業員でも、1人で点検や修理などの作業が可能となるというシナリオだ。AceReal Oneに搭載されたカメラで撮影した映像は、オフィスに随時送信されるので、ベテラン社員が様子を見ながら指示を出すこともできる。
AceRealを使った取り組みとしては、ドローンと組み合わせたビル外壁点検の実証実験も行われた。
現場のドローン操縦者がかけたAceReal Oneには、ドローンに搭載したカメラの映像や各種飛行データ、遠隔地のオフィスから送られてきたマニュアルなどが映し出される。一方、AceReal Oneに搭載されたカメラでは操縦者目線の映像が撮影されており、その映像が管制センターに送られ、それを見た熟練者が指示を送ることも可能だという。
その他の取り組み
その他、船越氏は5Gを使った協創事例を複数紹介した。
同氏は「3200を超えるパートナーの輪は宝。パートナー同士のマッチングをドコモが提供することで新たなビジネスモデルを生み出し、5G時代の新しい価値を協創していく」と今後もパートナーとの協創に積極的に取り組む姿勢を見せた。
TBSテレビが5Gプレサービスの環境下で、地上波の生放送用の映像伝送を初めて実現した事例。高速大容量を生かして安定した映像伝送を行いつつ、低遅延を生かしたカメラ制御システムを併用することで、中継車抜きでの生中継を実現した
リコーが開発した屋外点検ロボットを使った点検業務効率化の実証実験。5Gの高速大容量と低遅延によってロボットに搭載されたカメラで高精細な映像を送信でき、遠隔点検業務の信頼性が向上。遠隔制御の高精度化も期待できる
遠隔監視による「無人ロボットトラクター」の自動走行(レベル3)の実証実験。5Gを用いることによって、レベル3での自動走行に必要な高精細カメラ映像をリアルタイムで伝送することに成功した。今後は5Gに加え、数cmの精度を持つといわれる「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」、NTTグループの持つAI、IoTの最新技術を用いて世界トップレベルのスマート農業の実現を目指すという
広島大学との実証実験であるスマート治療室「SCOT」は、5Gを適用した遠隔医療支援。広島大学の中にあるSCOTと、NTTドコモ中国支社内に設置した「戦略デスク」間を5Gで接続。SCOTで脳外科手術を行う執刀医に対し、戦略デスク側の熟練医がリアルタイムで手術の支援を行うという想定で行われた。なお今回のOpen Houseでは、治療室を大型トラック上に構築し、移動できるようにした「Mobile SCOT」も展示された
大画面のミラーディスプレイ上に、3D映像でバーチャル警備員が表示されるセコムの「バーチャル警備システム」。マイクや音声認識機能、顔認証機能を活用し、「監視」「受付」といった業務を代替できるという。カメラやマイク、モーションセンサーで取得した情報は、5G通信によって遠隔監視センターに送られる。緊急事態が発生した場合は、監視先の警備員がすぐに駆けつけて対応することも可能だ
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