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“無制限ルーター”のトラブルはなぜ起きた? サービスの仕組みと障害の原因に迫る石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

データ通信を容量無制限で利用できる――そんなうたい文句のWi-Fiルーターサービスに、相次いでトラブルが起った。中国のuCloudlinkが提供する「クラウドSIM」が採用されているため、ここに原因があるのではとの見方も広がった。取材を進めていくと、トラブルの原因は別のところにあることが分かった。その仕組みを解説していきたい。

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各社に供給を停止したソフトバンク、事業者には是正を依頼

 では、なぜ容量無制限を打ち出していたWi-Fiルーターの通信速度が突如低下し、サービスの提供中止や変更を余儀なくされたのか。どんなときもWiFiを運営するグッド・ラックは、ITmedia Mobileの取材に対し、3月に発生した障害は「SIMカードの提供がストップしたことなどにより、(通信サービスの提供に必要な)SIMカードが不足したことが原因」と回答している。

 エックスモバイルの木野氏も「突然、SIMカードの仕入れ先からこのままだといつ停止されるか分からないと言われ、通信制限をかけざるを得なかった」と打ち明ける。詳細は異なるものの、2社とも、あてにしていたSIMカードが予定通り調達できなくなってしまった点は一致している。

クラウドSIM
SIMカードが突如供給されなくなったことが原因だったようだ。写真はイメージ

 複数の関係者の話を総合すると、そのSIMカードとは、ソフトバンクのものだという。ソフトバンクは、法人向けのビジネスとして、MVNOに対して再販可能なSIMカードを販売している。設備を相互に接続して、帯域単位で課金する「L2接続」とは異なり、このケースでは、ソフトバンクが用意したSIMカードを、MVNOがほぼそのままの形でユーザーに提供する。例えば、TAKUMI JAPANが展開していた「KAZUNA 神SIM」がそれだ。Wi-Fiルーターに大容量プランのSIMカードを組み込んでユーザーに販売している事業者も、複数存在する。

クラウドSIM
TAKUMI JAPANが提供する神SIMも、ソフトバンクSIMの再販だった。写真は発表時のもので、現在は販売を一時停止中

 ただし、ソフトバンクが提供しているのは、あくまで大容量プランであり、無制限にデータ通信ができるものではない点には注意が必要だ。同社の広報部は「ソフトバンクとして再販事業者向けに容量無制限での卸売は行っていない」と語る。「再販事業者が、無制限などのソフトバンクが承認できないサービス提供を行っていることを知得した場合、都度是正を依頼している」(同)といい、先に引用した木野氏の話とも整合性が取れる。

 クラウドSIMの仕組み上、ソフトバンク以外のMNO、MVNOからもSIMカードの供給を受け、それらを組み合わせることで無制限にすることはできる。木野氏も「逆ザヤにはなるが、SIMカードの調達はできる」といい、不足していた分の容量は、他社のSIMカードで補っていたことを認める。一方で、条件のいいソフトバンクのSIMカードに頼っていたのも事実。「仕入れ先がソフトバンクのSIMカードを調達できなくなった」(同)ことが、トラブルの引き金になった。

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