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“無制限ルーター”のトラブルはなぜ起きた? サービスの仕組みと障害の原因に迫る石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

データ通信を容量無制限で利用できる――そんなうたい文句のWi-Fiルーターサービスに、相次いでトラブルが起った。中国のuCloudlinkが提供する「クラウドSIM」が採用されているため、ここに原因があるのではとの見方も広がった。取材を進めていくと、トラブルの原因は別のところにあることが分かった。その仕組みを解説していきたい。

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容量無制限を継続している事業者も 今後の課題は透明性にあり

 SIMカードの供給が代理店経由だったことも、事態を複雑にしている。木野氏は「無制限と言われていたが、実際には80GBや100GBなどのキャップ(制限)があったのではないか」と推測する。事業者側とソフトバンクの認識が食い違っていたというわけだ。「無制限と言われつつも、『時限爆弾っぽい』とは思っていたので、他のキャリアのSIMカードも多めに入れていた」(同)ため、条件の変更だけで限界突破Wi-Fiのサービス自体は継続できているが、そうでない場合は、サービス提供を中断せざるをえなくなる。どんなときもWiFiが新規申し込みを停止しているのは、それが理由だとみられる。

 とはいえ、同じクラウドSIMを採用しながら、容量無制限を継続できているサービスもある。3月にサービスを開始したスマートモバイルコミュニケーションズの「THE WiFi」は、その1つだ。同社にITmedia Mobile編集部を通じてコメントを求めたが、「守秘義務があり、詳細は答えられない」との回答しか得られなかった。現時点でサービスを提供できている事実や、クラウドSIMの仕組みを踏まえると、複数キャリアの回線を組み合わせることで、無制限に近い状態を実現できているのかもしれないが、真相はやぶの中だ。

The WiFi
3月にサービスを開始したTHE WiFiは、現在も無制限プランを提供している

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークや遠隔学習が急増するなか、大容量のデータ通信サービスは、需要が急拡大している。トラブルが起こった限界突破Wi-Fiも、提供条件見直し後の販売は好調だという。エックスモバイルの木野氏は、「無制限と銘打って売っていた2月よりも、むしろ販売数は伸びている」と語る。ショップのサポートが功を奏したこともあり、「制限をかけた後は、1日の契約数が3倍ぐらいに伸びている」(同)という。

 4月になり、緊急事態宣言が発令され、テレワークがさらに進んだことに加え、木野氏は「サポートをちゃんとすることが伝わり、不信感を払拭(ふっしょく)できた」(同)ことが要因だと分析する。クラウドSIMは便利な技術ではあるものの、ユーザー側から見えない部分も多い。どのキャリアにつながるのかはもちろん、それぞれのスループットや無制限で利用できる仕組みなど、本来であれば知りたい情報がブラックボックスの中にある。

 無線は帯域が有限のため、大手キャリアも無制限プランの提供には慎重な姿勢を示している。そのような中、クラウドSIMを使ったWi-Fiルーターがデータ通信を使い放題にできる理由や実際の制約に関しては、もっと積極的かつ具体的に開示してほしい。高い透明性は、回りまわってユーザーの信頼を得ることにもつながるはずだ。

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