減収減益のドコモに立ちはだかる新型コロナウイルス iPhone SEや5Gにも影響:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
減収減益のドコモに追い打ちをかけるのが、3月以降急速に拡大している新型コロナウイルスだ。端末販売や5Gのネットワーク整備に対する影響も大きく、予断を許さない状況だ。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行ペースも鈍っている。
減収減益からの脱却を目指すドコモに立ちはだかる新型コロナウイルス
減収減益からの脱却を目指すドコモだが、新型コロナウイルスの感染拡大は、ドコモの事業にも大きな影響を与えている。インフラ事業で、ユーザーから毎月の通信料収入は得られるため、活動自粛を余儀なくされている他業種のような致命的な影響はないが、「業績そのものに、不確定なところがたくさんある」(吉澤氏)という。
理由の1つが、ドコモショップへの来店が減少していることだ。「3月後半から4月にかけ、ドコモショップに業務制限、時間制限をかけたが、来客数はかなり落ちている。これが半年続くのか、1年続くのかが分からない。来客数の減少に伴い、端末販売数の収支がどう動くのかは大きい」(同)。吉澤氏によると、4月の第2週は、全国で来店数が7割減少したという。
吉澤氏が「特に60代、70代の方の来店が少なくなっている」と語るように、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行ペースも鈍っているようだ。こうしたユーザーが、フィーチャーフォンに止まってしまうと、端末販売収益だけでなく、APURにも影響を及ぼす。「本来であれば、そういった方がスマートフォンに移行することでのAPRU増がもっと考えられる」というわけだ。
決算発表では挙げられなかったが、「iPhone SE」や「LG V60 ThinQ 5G」などの発売も、軒並み5月に延期されている。総務省の要請もあったためとみられるが、こうした措置も、端末販売台数の落ち込みに拍車を掛ける可能性がある。実際、「3月後半についても販売数の減、販売手数料のインセンティブの減という影響は出ている。4月にも、そういう影響がある」といい、端末の販売には急ブレーキがかかってしまっているようだ。
トラフィックについては、音声通話が増加、データ通信が微増になった一方で、海外からの渡航者が激減した結果、国際ローミングのトラフィックも大幅に減少した。外出自粛が拡大することで、d払いやdカードでの決済も落ち込んでいるという。これらに加えて、5Gのネットワーク構築を中心とした設備投資も、減少してしまう可能性がある。ネットワーク機器の調達や工事に遅れが出てしまうからだ。
吉澤氏によると、「2020年度末の500都市は絶対にやっていきたいが、この状況が同じように続くとなると、来年度(2021年6月予定)の1万局がかなり難しくなる。何千、何百の減になるのかは調整を図っていくが、いずれにせよ、影響は出てくる」という。2021年度の1万局達成は、当初、総務省に提出していた計画を前倒しで実現しようとしていた目標だが、新型コロナウイルスの感染拡大によって基地局設置のペースが上げづらくなってしまった。
設備投資の減少は、短期的にはコスト削減につながる一方で、エリアの拡大に遅れが生じれば、5Gへの移行計画が狂うことにもなりかねない。ドコモにとって、予断を許さない状況が続いているといえそうだ。
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