チャットや読書も可能 世界初の“点字タブレット”に期待:山根康宏の海外モバイル探訪記
視覚障害の方々は録音図書や点字印刷による書籍を利用されていますが、その数は書店に並んでいる書籍ほど多くはありません。誰もが手軽にどこでも点字を利用できれば、視覚障害者の方々も情報収集やコミュニケーションがより円滑に行えるようになります。そこで韓国のPCTが開発しているのが、ピンを使って点字を上下に動かして表示できる“点字タブレット”です。
スマートフォンはどんどん便利になり、今や読書や漫画を読むのも紙の書籍ではなくスマートフォンの電子書籍サービスを使う人が増えています。しかし健常者以外の方々にはそれらのサービスをフルに活用しにくいのも事実です。
例えば視覚障害の方々は録音図書や点字印刷による書籍を利用されていますが、その数は書店に並んでいる書籍ほど多くはありません。また点字書籍は普通の書籍より厚みが増してしまいますから複数を持ち歩くのは大変です。そして録音図書も読み飛ばしがしにくいものです。
誰もが手軽にどこでも点字を利用できれば、視覚障害者の方々も情報収集やコミュニケーションがより円滑に行えるようになります。そこで韓国のPCTが開発しているのが、ピンを使って点字を上下に動かして表示できる“点字タブレット”です。
「Tactile Pro」は「世界初の点字タブレット」をうたっています。タブレットといっても普通のディスプレイはなく、上下に動くピンがずらりと並んでいます。このピンの上下で点字を表示できるだけではなく、図やイラストもその形をピンで表し大体のイメージを指先で読み取れるといいます。ピンの間隔は3mm、ピンの高さは0.3mmとのこと。
Tactile Proには1万の点字書籍が内蔵されています。これほどの数の書籍は健常者なら電子書籍サービスや電子書籍ファイルをスマートフォンやタブレットに保存して利用できますが、視覚障害者の方々はなかなか持ち歩けません。しかしピンの上下で点字を表せるTactile Proならば、利用できる文字数の制限がなくなります。
またPCとBluetoothでの接続も可能で、テキストファイルをTactile Proに転送、点字に変換して表示もできます。写真や図を送ればその輪郭などがTactile Proの点字画面に表示されるわけです。
Tactile Proには点字入力用キーボードも備え、ボタンを押すことで点字を作成し、もう1台のTactile Proに送信できます。つまりTactile Pro同士で点字チャットもできるのです。他にもインターネットブラウジングやゲームなどができるとのこと。さらに点字の翻訳機能も備え、韓国語で入力した点字を英語の音声で出力、といったことも可能になるそうです。
視覚障害者の方々にとって情報収集は耳か指先に頼ることがほとんどです。しかし点字はリアルタイム性や大量の情報を持ち運ぶことにはあまり適していません。Tactile Proはその点字をいつでもどこでも持ち運べるようにした点が優れています。現在はまだ開発中であり、データ通信方法など詳細スペックは不明ですが、ぜひ早い時期に市場にリリースしてほしいものです。Tactile Proがあれば遠く離れた相手の方とも、点字を介してリアルタイムにチャットすることも夢ではなくなるのです。
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