「Xperia 1 II」を2週間使って感じた“反転攻勢”の仕上がり ただし内蔵アプリに不満も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
初の5G対応Xperiaとして発売される「Xperia 1 II」が、ドコモとauから出そろった。通信方式だけでなく、カメラも大きく進化。デザインもXperia 1より洗練され、“Xperiaの反転攻勢”を支える1台に仕上がっている。2週間ほどメインの端末として使い込んで分かったことをまとめたい。
内蔵ソフトウェアはオリジナリティーに欠けるところも
3.5mmのイヤフォンジャックも復活し、手持ちの有線イヤフォンを接続して使えるなど、音楽を楽しむ端末としても評価できる。音質もクリアで音にも厚みがある。AIを使って楽曲をハイレゾ相当にアップコンバートする「DSEE Ultimate」を新たに搭載していることも、音質のよさに貢献しているとみていいだろう。振動でサウンドの迫力を上げる「ダイナミックバイブレーション」も、引き続き搭載している。
ソニーモバイルはXperia 1以降、「好きを極めたい人々」にターゲットを絞り、刺さる人に深く刺さるスマートフォンを開発する方針を明確化した。ただ、Xperia 1のときは、まだ粗削りな部分が多く、売りであるカメラについても、強い“ソニー色”までは出せていなかった。一方のXperia 1 IIは、ディスプレイやカメラ、音楽再生機能が強化されたことで、その方向性がより分かりやすくなった印象を受ける。トレンドに乗った端末ではないかもしれないが、それがいい意味での個性になっている。
ただし、トレンドをやみくもに追わない方針が、少しだけ悪い方向に出てしまっている部分もある。内蔵アプリの少なさはその1つ。例えば、せっかくソニーモバイル独自のAIを活用した風の音を除去する機能が載っているにもかかわらず、ボイスレコーダーアプリが搭載されていない。ビジネスツールとして、最近ではどのスマートフォンにも当たり前のようにプリインストールされているため、いくら探してもボイスレコーダーが見つからないことに驚いてしまった。Google Playで探せばいい話だが、端末との相性もあって検証が手間になるため、標準で搭載されているに越したことはない。
また、Xperia 1 IIでは、ソニーモバイル独自の「アルバム」アプリも搭載されていない。写真を美しく表示してくれるXperiaのアルバムアプリは、使い勝手もよかっただけに、少々残念だ。確かに機能的にはGoogleフォトで管理すればいいし、重複しているところもあるのは事実だが、カメラにこだわっている端末であれば、写真を上手に見せるソニーモバイルならではの工夫も欲しかった。
カレンダーも同様で、Googleの標準アプリは、UIがこなれていない印象を受ける。21:9のディスプレイを存分に生かしたカレンダーアプリがあれば……と感じたところだ。文字入力アプリの「POBox Plus」も2019年10月以降の端末では廃止されており、Xperia 1 IIには搭載されていない。
アプリではないが、セキュリティ機能として、顔認証にも非対応。側面に搭載された電源キーと一体になった指紋センサーは使い勝手がいい半面、本体を持ち上げただけで画面点灯からロック解除までができる他のスマートフォンと比べると、まどろっこしさを感じる。
最後は少々辛口になってしまったが、ソニーモバイルが狙ったコンセプトは、Xperia 1 IIで完成に近づいたようにも感じている。ともすれば、トレンドに流され、どの端末も同じような機能や仕様になって選びづらくなっている中、Xperia 1 IIは同社のこだわりがしっかり伝わってくる。ハイエンドモデルのため、価格は10万円を超えてしまうが、その価値は十分あるスマートフォンだと評価できる。この機種を起点に、同社の反転攻勢にも期待したい。
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