練習なく突入した未来──電子国家エストニア、コロナ禍で生まれつつある“ニューノーマル”:tsumug edge(2/4 ページ)
「電子国家」として世界の注目を集めている北欧のエストニア。その実態について、エストニアに移住した筆者が見た電子国家のリアルをお届けする。
Zoomクラス初日、ハプニングに焦る
いよいよZoom初日だ。園児は自宅からログインする。レリカは誰もいない幼稚園からログインする。僕も仕事があったが、不安だったので幼稚園からリモートワークをすることにした。幼稚園はWi-Fi環境が貧弱なため、モバイル回線から行うことにした。
家で何度も練習した「URLを送る」のをクラス開始10時の5分前にしたいとのことで、そのさらに5分前から秒針を見ながらディスプレイ前で一緒に待機していた。「これがミュートボタン、ビデオのオン/オフ、スクリーンシェアでこのチェックボックスを……」とつぶやくレリカ。
園児は最大15人だが、初めてのZoomクラスで、さらに任意だったので、どれくらい参加するのかは分からない。2〜3人くらいかもしれない。むしろそうだったら気が楽でいいなと思っていた。
そして10時になった。クラス開始だ。入室ボタンを押すとこんな画面が出た。
"Zoom is too busy. Please retry later"
「どういうこと!?」
僕でも見たことがない。こんなヒントのないエラーは初めてだ。どのデバイスでログインしてもダメだった。回線を変えてもダメだった。Zoom側の問題だ。なんでよりによってこんな時に。
「やばい。親から絶対質問メールが来る。どうしよう……」
その瞬間、スマホがとめどなくなり始めた。「大丈夫」と言ってみたが打つ手がない。とにかくレリカにメールに集中してもらって再起動してみて、それでもダメならサポートセンターに連絡するしかない。しかし、そうなったらどれだけ待たせることになるんだ? リスケすべきだろうか。というか、今時の幼稚園の先生はこんなことも1人でやらないといけないのか。
いろんな考えが頭を巡った。再起動してもダメだった。リスケするしかないかと考えていたが、次の瞬間なぜかZoomがつながった。
ギャラリービューで一面に顔が広がる。一体何人いるんだ?
1、2、3、……15? 園児は15人のはずでは。レリカに聞くと
「園長も入ってる……」
と不安そうに答えた。こうして、初めてのZoomクラスが始まった。
ミュートボタンを操る子供たち
「まずは、ミュート……ミュートボタンは左下……」
いや、それはお前がミュートになっちゃうよ! 園児をミュートにしないと……と心で唱えつつ「あ、違うManage Participantsだ」とレリカは自分で気が付き、話し始めた。
クラスのルールと一緒で、園児には手を上げてもらう。それ以外の時はミュート。「分かったら手を挙げて!」というと何人かの子供が「はーい!」とアンミュートして答えた。そしてミュートに戻った。最近の子供って、こういうのに慣れるのは早いんだなあと感じた。
みんなが会えなくなってしばらく経っていたためか、話の途中にお互いアンミュートしながら会話をしていたので、レリカはそれを制止した。これは幼稚園でも一緒の光景だ。
そして、いよいよHello Songだ。週末から、僕の頭をずっと離れなかった歌だ。
音楽が流れ始めると、子供たちは自然と踊り始めた。僕としては音のズレや声のズレが気になっていたが、子供は関係ないようだった。音楽さえクリアに聞こえていれば、他のことは比較的どうでもいいようだ。僕が事前に不安に感じていたことは、ほとんどが杞憂だった。
そして帰り際にレリカが言った。「Bluetoothのイヤフォン? ってどうやって使うの?」
ITアレルギーが薄れているうちにポケモンGOの教育的効果について語ろうか、と思ったが、今はコロナで外出できないのでやめた。
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