5Gは「企業のDXを実現する手段」、ソラコムとも連携 KDDIの法人戦略を聞く:5Gビジネスの神髄に迫る(2/2 ページ)
携帯大手3社の中でも、5Gが低調なスタートを切ったことに最も危機感を募らせているのがKDDIだ。一方で、コロナ禍が企業のDXを加速させていることから、キャリアにとっては大きなビジネス機会となることも確か。現在は5Gの高速大容量通信を生かし、AI技術を活用した画像解析の活用が多いという。
5Gを主語で話す人を信じてはいけない
現時点で5Gを活用した取り組みを進めているのは、あくまで自社のサービスに最新技術を取り入れてより磨きをかけたいという、明確な意志を持つ企業が多いというが、一方で実際に5Gの商用設備を活用した具体的な事例も出てきており、アイデアを検証するPoC(概念実証)の段階を超え、業務にどの程度活用できるかという実践段階へと、5Gのフェーズが変わってきていることは確かなようだ。
とはいえ、KDDIの高橋氏はかねて「5Gを主語で話す人を信じてはいけない」と話しており、KDDIでは法人ビジネスにおいても、あくまで顧客のDXをどのような形で推進できるかを重視して検討を進めている。「5Gはそれを実現するための手段でしかない」と野口氏は話しており、5Gありきで検討を進めるわけではない。
5Gビジネスの開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」での取り組みも、他社のパートナープログラムとは取り組み方が異なっているとのこと。KDDI DIGITAL GATEでは他社のように、パートナーに5G環境を提供して自由にプロダクト開発を進めてプロダクトの数を増やすことを重視するのではなく、アジャイル開発でプロトタイプを作成、1つ1つのプロダクト開発にじっくり取り組むことを重視しているのだそうだ。
ソラコムの5Gとはどうすみ分けを図るのか
それゆえKDDIは大企業向けの大きなプロダクトに取り組むことが多いそうだが、より小さな規模のプロダクトを、KDDIの回線を使って開発する取り組みはどのようにしてカバーしているのか。野口氏によると、そちらはグループ会社のソラコムが押さえる形になるようだ。
ソラコムは2020年7月14日、KDDIの5Gネットワークを活用したMVNO事業を2020年度中に開始することを発表している。野口氏はソラコムの事業に関して「とてもオープンで裾野が広く、すぐ試せるという異なるアプローチを取っている」と話し、5GビジネスにおいてもKDDIとすみ分けができていると説明。一方で、ソラコムでの取り組みからより大きなプロダクトに発展させたいとなったときは、KDDIと連携して対応できることが強みになるとも話している。
取材を終えて:変化するニーズに対応した5Gの有効活用を見いだせるか
コロナ禍でもDXの推進が必要と考える企業は多く、KDDIもNSA環境下の現状にありながら、大規模なプロジェクトを中心とした5Gの活用が積極的に進められているようだ。一方で、テレワーク需要の高まりで前提とする環境が大きく変化するなど、コロナ禍によって企業ニーズに幾つかの変化が出てきているのも確かだろう。
野口氏が話しているように、5Gは万能薬ではなく、企業のDXを実現するための素材の1つにすぎない。エリアの拡大やMECの整備などはもちろんだが、変化するニーズに対して5Gを活用できる方法を見いだすことも求められている。
関連記事
- 端末販売で大打撃を受けたKDDI 低価格5GスマホとiPhoneが突破口に?
KDDIの通信事業は、コロナ禍の中でも需要が増していることもあり、業績自体は堅調だった。一方で端末販売は大打撃を受けた。電気通信事業法の改正も影響を及ぼした。特に第1四半期は5Gの立ち上げ直後で、インフラの移行計画にも影響を与えかねない。 - KDDI高橋社長「5Gを主語で話す人を信じてはダメ」 auは“体験の創造”を重視
KDDIが8月28日、5G時代を見据えた戦略「au UNLIMITED WORLD」を発表。5G時代を見据えた料金プランやサービスを提供していく。同社は5Gの特徴というよりも5Gならではの体験の創造に重きを置く。 - 三井不動産とKDDI、5Gを活用したオフィスビル構築で提携
三井不動産とKDDIは、5Gを活用したオフィスビルのデジタルトランスフォーメーション (DX) を目指す基本合意書の締結を発表。2021年4月を目途に、日本橋室町三井タワーなど三井のオフィスへ5Gのネットワーク環境を構築する。 - 新型コロナウイルスが国内の5Gに与えた影響、2020年後半の5Gはどうなる?
今なお感染拡大が続いている新型コロナウイルスは、国内でようやくサービスを開始した5Gにも暗い影を落とすこととなった。インフラよりも端末の販売に大きな影響を及ぼした。「低価格スマホ」と「iPhone」が5G普及のカギを握っているといえる。 - ソフトバンクが「プライベート5G」を打ち出す狙い、ローカル5Gに対する優位性は?
自社が免許を保有する周波数帯を活用して自営型の5Gネットワークを構築・運用する「プライベート5G」を打ち出したソフトバンク。これはパブリックの5Gとローカル5Gの中間と位置付ける運用形態となる。海外では自営の4Gネットワークを構築・運用する「プライベートLTE」が既に活用されていることから、同様の取り組みとしてプライベート5Gを推進するに至った。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.