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接触確認アプリから「通知」が届いて分かったこと 実効性には課題も石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

「COVID-19にさらされた可能性があります」――筆者のスマートフォンにこの通知が届いた。その後、自宅を所管する東京都港区の保健所に相談の上、9月1日にPCR検査を受けた。ここでは、その実録とともに、接触確認アプリの意義や課題を考察していきたい。

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PCR検査はスムーズに受けられる? 保健所に確認

 保健所への電話は、3コールぐらいですぐにつながった。その上で、これまでの流れを相談してみた。説明については、アプリに表示された内容を、より詳しくした印象だ。まずは症状がないことや、接触日などを回答していった。iOSでは、通知があってもアプリ上で接触情報が表示されないバグがあるとのことだが、今回通知を受けたのがAndroidだったため、ここはスムーズだった。

 こちらの状況を把握した保健所からの回答は、次の通り。

 まず、今回のケースは「いわゆる濃厚接触に該当しない」と言われた。筆者には症状がなく、接触記録から既に9日たっているため、そのまま過ごしても問題はないそうだ。保健所いわく、接触確認アプリはBluetoothの電波で接触を記録しているため、電波の状況によっては最大で5mほど離れていても通知が来てしまうケースがあるという。あくまで距離と時間しか取っていないため、アプリの記録だけでは、厳密な意味での濃厚接触かどうかを判断できないというわけだ。

 当日の行動で心当たりがあるかどうかもたずねられたが、その日は外出しての取材もなく、自宅と事務所を往復しただけ。帰宅前に買い物はしたが、家族以外で他人と15分以上接触した可能性があるのは、そのときかランチだけということになる。厳密に1mを測距できていない以上、電車の中も確率は高そうだが、筆者の場合、ランチのお店に場所は絞り込めていた。

 実は接触確認アプリを、Xperia 1 IIだけでなく、iPhone 11にもインストールしていたからだ。ランチに出るときは身軽な方がよく、持ち運ぶのはどちらか1台になる。当日も、iPhone 11は事務所に置いたままにしておいた。iPhone側への通知はApple Watch Series 4で確認できるからだ。それ以外の場面では、トイレなどを除くと、2台同時に持ち歩いていた。

COCOA
iPhoneにも接触確認アプリをインストールしていた

 試しにiPhone 11側の接触確認アプリをチェックしたところ、記録は残っていなかった。上記のバグがあるため、通知を消してしまった可能性も考え、念のため、OS側に残った接触記録を書き出し、キーの一致がないかどうかをPCのテキストエディタで検索してみたが、アプリと結果は同じ。これらを踏まえると、陽性者との接触記録がついた場所は、ランチを取ったお店の確率が高いといえる。

 ただし、その店が客でぎゅうぎゅう詰めだったかというとそうでもなく、筆者は左右が空いたカウンターに座っており、かつ店員以外との会話もしていない。いわゆる「三密」ではなく、新型コロナウイルスに感染した可能性は低そうだ。保健所への電話でも、そのことは(かなり端折って)伝えておいた。

COCOA
iPhoneには、陽性者との接触は記録されていなかった。これで、場所を絞り込むことができた

 その上で、アプリから通知があったため、行政検査として、無料でPCR検査を受けることができる旨も伝えられた。同時に、陽性と判明した場合、無症状でもホテルなどに隔離されることや、その際に仕事に影響が出ないかどうかもたずねられたが、しばし思案した後に、家庭環境を説明。念のため、PCR検査を受けることを決意した。その後は、保健所が検査日の空きを確認。8月28日が金曜日だったため、土日を挟んでしまい、少し時間がかかってしまったが、営業日では翌々日となる9月1日にPCR検査を受けることにした。

 なお、PCR検査は綿棒を鼻に突っ込んで検体を取る検査ではなく、唾液検査とのこと。過去にインフルエンザの検査で痛い思いをして、文字通り涙目になっていた筆者は、綿棒だったら検査をするかどうか、かなり迷ってしまった可能性がある。唾液検査が広がっていて本当によかった……。

 アプリからの通知があったにもかかわらず、検査が受けられないと不安になる。こうした声の広がりを受け、厚生労働省は8月21日に、通知を受けた希望者全員が無料で検査を受けられるよう、各自治体に要請を出している。筆者のケースは、保健所がこの要請に従ったものとみられる。検査予約までがあまりにスムーズだったため、拍子抜けしてしまったが、ネットには真逆の声も上っている。自治体や保健所によって、対応には温度差があるのかもしれないことは付け加えておきたい。

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