接触確認アプリから「通知」が届いて分かったこと 実効性には課題も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
「COVID-19にさらされた可能性があります」――筆者のスマートフォンにこの通知が届いた。その後、自宅を所管する東京都港区の保健所に相談の上、9月1日にPCR検査を受けた。ここでは、その実録とともに、接触確認アプリの意義や課題を考察していきたい。
結果は無事に「陰性」、接触確認アプリの意義と今後の課題
検査日当日までは、念のため自宅にこもり、外出も食料の買い出しなどの最小限に控えた。いわゆる濃厚接触に該当しないとはいえ、陽性の可能性もゼロではない。自分から広めてしまう確率をなるべく抑えるよう、検査結果が出るまでは仕事も自宅でしていた。保健所に来るときに、公共交通機関は使わないように言われていたため、それに準拠した格好だ。
保健所までは徒歩で片道約30分。筆者は自家用車を持っていないため、ギリギリ歩ける範囲に保健所があったのはラッキーだった(かなり疲れたが)。指示通り、徒歩で保健所に向かうと、入り口に職員がいた。名前を告げると、駐輪場のような場所に仮設で作られた検査場に案内され、唾液を採取する容器を渡された。容器には短いストローが刺さっていて、くわえていると、自然に唾液が落ちる仕組み。検体の採取自体は、ものの5分で終わった。
翌日結果が出るまでの間は、引き続き自宅作業を継続。夕方の電話で、無事に陰性が確認できた。濃厚接触はしていない……と頭では分かっていたものの、結果が出るまでの1日半は、やはりどこかソワソワしてしまった。仕事に手がつかないというほどではないが、万が一の可能性があることは頭を離れなかった。陰性を告げられたときには、心の底からホッとしたことを覚えている。
スムーズに検査を受けられ、このプロセスをスピーディーに回していければ、感染を抑止できるのではと感じた。検査を受けられることは、インセンティブにもなるため、筆者のような事例が広がれば、アプリのインストール数は増えていくだろう。7月末に、接触確認アプリの導入を主導した平将明内閣府副大臣を取材した際には、「ITツールの中で最も有効なものの1つ」と語っていたが、徐々にそれが機能し始めていることを実感できた。
一方で、アプリ自体にはまだまだ課題もあると感じた。上記のようにバグが解消されていないため、修正は急務といえそうだ。接触日と通知のタイムラグも、気になった。再三になるが、筆者に通知が届いたのは、接触から9日目。ウイルスにさらされてから発症まで、平均で5日前後の潜伏期間があるというが、仮に感染していたとしたら、9日目では手遅れになってしまう。
筆者のケースで言えば、陽性登録をした陽性者が8月19日にウイルスに感染し、5日目に発症して翌日に検査を受けたとすると、その時点で既に8月24日になっている。結果が8月25日に出て、陽性登録までにさらに1日かかったとすると8月26日になる。1日、2日のズレは簡単に出てしまいそうな仕組みのため、筆者の端末に通知が届いたのが8月28日なのは納得できる。ただ、あまりにタイムラグが大きいと、本来、検査の必要がない人に、無用の心配を与えてしまうことにもなりかねない。
接触確認アプリは、AppleとGoogleのAPIに基づき、過去14日以内の接触をチェックしているが、この期間が長すぎるのも一因ではないか。14日という日数は、潜伏期間を考慮しているとみられるが、その最長を想定している。安全側に倒した考え方ともいえるが、アプリに登録する陽性者がさらに増えたときに、本当に希望者全員にPCR検査を受けられる体制があるのか。接触日から何日目以内ならといった形で、ある程度制限をつけた方がいいような気もした。
現時点での登録者数は600人に届いていないため、杞憂(きゆう)ではあるものの、膨大な人数になったときの体制には不安も残る。こうした点も踏まえ、総合的な方針をきちんと伝えていくのが、政府にとっての課題といえそうだ。
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