動揺か実装か、コロナに直面した電子国家エストニアと市民のメンタリティー:tsumug edge(2/3 ページ)
「電子国家」として世界の注目を集めている北欧のエストニア。その実態について、エストニアに移住した筆者が見た電子国家のリアルをお届けする。
ソーシャルディスタンス特化の経路案内マップ「SPACED」
Google マップに勝てる地図はない、と思っていたが、昨今の状況では最短経路=最適経路とは言えない。ソーシャルディスタンスを保ちながら最短にたどり着ける地図がこのプロジェクト「SPACED」の特徴だ。
エストニアは、全体的に危機感が薄いと言われている。「2×2(2人以下で2m以上空けて歩こう)」を奨励しているものの、イタリアやスペインのように警察に逮捕されることはないからか、平気で正面から避けることなく歩いてきたり、背後にべったりくっついて歩いてきたりする。
妻のレリカはこういうことには敏感で、買い物から帰ってきたら買ってきた商品を全て(小麦粉なども含めて)洗剤で洗う。そんな彼女からすると、いかに人が歩いていない経路で最短でたどり着けるか、というのは是非とも欲しい情報だ。
セッティング不要カメラ「FamCam」
WFH(Work From Home)が一般化し、家族のふれあいもオンラインになりつつある中で、問題となっているのは「カメラがつながらない」「音が聞こえない」などのテクニカルトラブルだ。
想像してみてほしい。おばあちゃんに「Bluetoothでカメラをつないで」と電話で指示するときの困難さを。わずらわしくなくシンプルに使える、その1点を目指しているのがこの「FamCam」だ。TVにUSB接続するだけでセッティングは完了する。筆者も昔からWebカメラのセッティングには苦い思い出が多いため、とても魅力的な売り文句だと感じる。
検査・追跡・隔離能力を向上させるプロジェクト
病床数の管理はどこの国も喫緊の課題だが、効率的に管理するためには病床の状況の過去データと予測のデータ(そしてもちろん精度が問われる)が必要だ。コロナ禍では、都市部の病院のキャパシティーがパンクする傾向にあるが、1日に搬送できる患者の数も限られているため、パンクする前に計画的に近隣の病院に搬送する必要がある。これを地域で全体最適化しようというのが「Road to Life」だ。
オンライン処方「Open Prescription」
病院のキャパシティーを圧迫しないために、という文脈も目立った。その中でもこのオンライン処方は、システムの悪用(処方箋の不正発行など)さえ対処できれば有効だと思える。
エストニアは、とにかく医療キャパシティーが小さい。筆者も風邪をひいたとき医者に電話したら、3週間後に来いと言われたくらいだ。
そんな中で、医者はいないが処方箋は発行できる「シンラボ」(医療診断施設)という施設がある。今、コロナの検査を受けるというとみんなここに行く。そのさらに手前に患者とのタッチポイントを置いて、リスクの低い処方に関してはオンラインで完結させるのは有効だと思える。
エストニアスタートアップ界のドリームチーム
エストニアのスタートアップは、Skypeを始祖に持つ1つの大きなコミュニティーだ。大統領も、よくこういうところに顔を出す。そのキュレーションを中心的に行っているのは、コワーキングスペース「Lift99」のコミュニティーから派生したアクセラレータープログラム「Salto」だ。
CEOはエストニアを代表するスタートアップの1つ、Pipedriveの共同創業者でもあるRagnar氏。筆者がLift99にいたときには、いつも窓際に座って犬と遊んでいた。当初、筆者はそれがRagnar氏だと知らなかったので「毎日いるなあ、暇なのかな」と思ってしまった(失礼)くらい、フランクな人だった。
今回のSalto主催の「Growth Camp」で集まったメンツもすごかった。「エストニアってどういう企業があるんですか?」と聞かれれば、このページを送るだけで十分だと思えるようなメンツである(日本からは孫泰三氏も参画している)。
このプログラムの結果も興味深いので、機会があれば深堀りをしたいと思う。
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